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さくらの熱量チャレンジ 第32回

もらった巣箱で始めた養蜂にテクノロジーで挑んだらこうなった

ニホンミツバチの養蜂IoTにsakura.ioを活用してみた

2019年07月16日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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養蜂監視で必要な温度と巣箱の重量を採取するには?

大谷:いまさらっと温度と重量とおっしゃいましたけど、養蜂IoTにはどんなデータが必要なんですか?

上大田:行政が出している養蜂のガイドラインを見ればわかるのですが、ハチにとっては34℃が適温なんです。つまり、34℃に近い温度だったら、ガンガン蜜が溜まる可能性が高いというわけです。だから、ニホンミツバチは温度が低かったら、羽をこすり合わせて、34℃にまで上げます。

大谷:確かニホンミツバチって襲ってきたスズメバチを熱で蒸し殺すんですよね。熱殺蜂球でしたっけ。

上大田:でも、スズメバチ大群で来るんですよね(笑)。逆に巣内の温度が34℃より高かったら、羽を使って外気を入れて、巣箱を放熱します。

大谷:こうなると空調的にはなんだか、さくらの石狩データセンターみたいですね。

上大田:だから、巣箱の中と外気の温度は必要でした。

あとは巣箱の重量。とれすぎては困るし、持って運べるくらいの重さで収穫したいというのが、そもそものきっかけですから。

大谷:じゃあ、重量センサーも必要だったんですね。

上大田:はい。重量を計るために「ロードセル」というセンサーをベースに自作したのですが、よく考えてみると体重計と原理が同じなんですよね。実際に体重計を買ってきて、ばらしてみたら、自分が買ってきたロードセルと同じものが入っていたんです。ロードセルは1個1000円でしかも4つ必要になるのに、量産品の体重計は1200円。だったら、最初から体重計を買ってくればよかったなと(笑)。

巣箱の下に設置されたIoTデバイス

今はArduino UNO R3にシールドを載せて、温度や重量センサーを付けています。本業でメーカーも知っているので、ケースも汎用品です。

巣箱の重量が減ったのはなぜか? データと動画でわかった

大谷:sakura.ioのデータは遠隔から見ている感じですか?

上大田:sakura.ioに飛ばして、Outgoing Webhooksの機能でJSONを自分のサイトに飛ばして、温度や重量をグラフで見られるようにしています。

今は30℃なので、もう少し温度上げる必要があります。温度が34℃近くなると、ハチが活発に動き、蜜が沢山溜まります。適切な温度だと、だいたい1日で500gくらいずつ増えますね。

大谷:なるほど。では、蜜がとれるとともに、巣箱の重量が増えていって、適当なタイミングになったら、巣箱を回収しに行くんですね。

上大田:そうです。当然、蜜は溜まっていくものなので、重量は増える一方だと思っていたのですが、あるときグラフを見たら、減っていたんです。だから、父親に「減ってんねんけど」って相談したら、巣箱を調べた父親が「ハチが巣箱から蜜を持って出よるわ」って言うんです。

大谷:えっ?

上大田:ハチって、1匹の女王バチに対して、1~1.5万匹の働きバチで、1つの集団が構成されます。だから、女王バチが増えた段階で、もともと巣箱をくれた隣のおっちゃんのところに分蜂したんですよ。ハチにとってみれば蜜は食料ですから、飢えをしのぐために、自分たちが溜めた蜜を分蜂先に持って行ってしまうんです。だから、本当に重量が減っていたんです。

父親に巣箱の動画を撮ってもらったのですが、入っていくハチより、出て行くハチの方が明らかに多い。まずはその動画で「めっちゃ持っていってるやん」となり、ハチが分蜂先に行ったことはあとからわかったんです。

大谷:なるほど。裏を返せば、巣箱の重量が減ってしまった原因が、ハチによる蜜の持ち出しであることを動画とデータで実証できたわけですね。

上大田:ハチって分蜂するときに特定の周波数帯で通信するんです。その分蜂時の女王バチの鳴き声を周波数解析して検知する仕組みを特許として出願したんです。まあ、検知するためにはそこそこのCPUがないと難しいんですけどね。しかも、農業IoTの分野ってまだまだ特許出願が少ないのでブルーオーシャンです。今まで赤い海しか泳いだことなかったので、楽しいですよ(笑)。

大谷:確かに、知的好奇心をそそる分野ですね。

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