このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

初の幕張メッセ開催となったAWS Summit Tokyo 2019基調講演

AWSJ長崎社長が語る「教育」「クラウドジャーニー」「機械学習」

2019年06月13日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

エンジニアが元気になる 率先して新しい技術に触れるようになる

 続いて長崎氏は、クラウドジャーニーの課題について説明した。一言でクラウドジャーニーといっても顧客体験の強化やUIの連続的な改善が必要なサービス系システムと、システムの安定性やデータの完全性を求められる基幹系システムは大きく異なる。後者は既存のリフト&シフトの手法になるが、エンタープライズにおいては大きく2つの課題がある。「データベース」と「Windows」だ。

 「商用データベースは今のデジタル時代においてはボトルネックになっている」と長崎氏は指摘する。データのオーダーがギガバイトからテラバイト、ペタバイト単位へと移行し、継続的な改善を進めるクラウドネイティブな開発が主流になるなか、既存のデータベースは性能、拡張性、コスト効果、遅延、同時接続数などあらゆる点で需要を満たせなくなっているという。

 こうした中、AWSはデータベースサービスを拡充してきた。現在、AWSはRDBMSのAmazon RDSやAmazon Aurora、インメモリ型のAmazon ElastiCache、キーバリュー型のAmazon DynamoDB、ドキュメント型のAmazon DocumentDB、グラフ型のAmazon Neptune、時系列DBのAmazon Timestream、台帳型のAmazon QLDBなど幅広いデータベースサービスを有する。また、DWHに関してもAmazon Redshiftが用意されており、2年間で200以上の新機能追加やパフォーマンス向上を実現している。「1つのデータベースでお客様のニーズを満たすことは現実的ではない。デジタル化に向けて、お客様の要件に適した最適なデータベースを選んでいく時代に加速していく」と長崎氏は語り、「データベースフリーダム」の方向性をアピールした。

幅広いデータベースの選択肢

 こうしたデータベース移行の文脈で登壇したのは、ニフティの前島一就氏だ。約30年に渡ってインターネット事業を展開してきたニフティだが、2017年に国産クラウドの始祖として知られるニフティクラウドの事業を富士通クラウドテクノロジーズに移管し、ノジマ傘下でISPとWebサービス事業を手がけている。しかし、レガシーシステムが重荷となっており、運用や開発に負担がかかっていたという。

 こうしたレガシーシステムのくびきを逃れるため、ニフティはネットワークとサーバーのコストを圧縮し、データセンターからクラウドへの移行を進めることにした。また、クラウドを使えるエンジニアを増やし、メンテナンスや機能追加に苦労するレガシーシステムからの脱却を図ったという。ここでパートナーとして選んだのがAWSだ。

ニフティ 取締役(兼) 執行役員(兼) CIO(兼)ITシステム統括部長 前島一就氏

 もっとも懸念だったデータベースのマイグレーション(移行)だが、これに関しては豊富なサービスと手厚いサポートで懸念が払拭されたという。また莫大なライセンスが必要だった従来型データベースからAWSの従量型データベースに移行したことで、コスト面でも大きなメリットがあった。特に強調されていたのは、サポートとトレーニング、技術情報の豊富さ。ハンズオンや社内勉強会も実施し、エンジニアのモチベーションも高めた。「エンジニアが元気になる。自ら率先して新しい技術に触れるようになりました」と語る前島氏。現在はWebサービスのみならず、基幹システムのAWSマイグレーションも進めており、今後はAWSベースの新サービス開発やVDI導入によるオフィス業務の刷新も前のめりに行なっていくという。

 もう1つの課題であるWindowsに関しても言及された。長崎氏は、クラウドで用いられているWindowsの割合がAWSでは57.7%におよぶという調査会社IDCの調査を披露。EC2上でWindows Serverを動かしているエンタープライズ顧客数の成長率が493%にのぼる。この背景には、10年におよぶWindows環境に向けた機能強化があるという。長崎氏は「われわれにとってもWindowsは非常に重要なOS」と語り、3月に日本でも利用可能になったネイティブWindowsファイルサービス「Amazon FSx for Windows File Server」をアピールした。

ホワイトカラーをAIで救うシナモンのSage Maker導入

 3つ目のトピックはAWSのミッションである「全ての開発者に機械学習を」だ。この数年、AWSは機械学習のサービスを拡充しており、さまざまなフレームワークやインフラ、チップ、機械学習の基盤サービス、画像認識や言語解析、予測レコメンドなどの各種AIサービス、そして学習用のマテリアル、ハンズオンなどを展開しているという。特に開発・学習・推論といった開発フローを網羅した機械学習の基盤サービスである「Amazon SageMaker」はすでに1万社のユーザーを持つという。

 SageMakerのユーザー企業として登壇したのはシナモンCEOの平野未来氏だ。「ホワイトカラーをクリエイティブに!」を掲げるシナモンは200人のメンバーのうち100人がAIのリサーチャーという企業で、ユーザー企業の業務のAI化を推進している。事業開発は日米で行なっているが、AIラボをベトナムと台湾に構えており、優秀な理数系の人材をAIリサーチャーとして抱えているという。

シナモンCEO 平野未来氏

 同社は企業データの8割に達するメールや画像、音声などの非構造化データを意味のある構造化データに変換する「Cinamon AI Platform」を展開している。文字認識と音声認識されたデータに対して、さまざまなアルゴリズムの自然言語理解の処理を行なう。たとえば保険会社であれば紙の資料、弁護士事務所であれば顧客との音声のやりとりなどをデータ化し、意味のある情報に変えていくことで大きなコスト削減や業務の短縮化を実現する。現在、シナモンでは50社を超えるユーザーを抱えているが、そのほとんどが第一生命やJCB、昭和電工、東京海上日動、関西電力などの大企業だという。

 シナモンは顧客からのフィードバックを元に、AIデリバリ、AIラボが連携して継続的にAIモデルを改善しているが、①AIリサーチャーごとに開発環境が異なる、②GPUインスタンスを人力で管理している、③顧客データの国外への持ち出しが難しい、といった課題があった。これを解決したのがAmazon SageMakerだ。SageMakerの導入によって、開発環境を統一でき、GPUインスタンスを学習時に立ち上げることが可能になった。また、デリバリ環境を統一することで、モデル開発も高速化したという。

 新たなチャレンジとして、AWSを用いたユーザー企業とシナモンのVPCをVPC Peeringでセキュアにつなぎ、Sage Makerの環境を共用する取り組みを行なっている。これにより、顧客のデータを動かすことなく、リサーチャーの開発したモデルを迅速に提供できるようになるという。最後、平野氏は「最先端のエンタープライズフレームワークを提供することで、日本のエンタープライズにイノベーションを起こします。人工知能によってホワイトカラーがクリエイティブになる世界を実現します」と語り、登壇を終えた。

VPC Peeringで顧客とつなぎ、SageMaker環境を共用する

 再び壇上に戻った長崎氏は、今年のAWS Summitの目玉イベントでもある「AWS Deep Racerリーグ」についてアピール。1/18の自動運転カーで機械学習を学べるDeepRacerについて説明するとともに、AWS re:Invent招待ツアーをかけたリーグへの参加を呼びかけた。DeepRacerリーグやスポンサー展示、数多くのセッションが行なわれるAWS Summit Tokyoは14日まで開催されている。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

ピックアップ