まわりの空気が引き込まれて袋の中に
これもドライヤーの実験と同じように、空気の流れを利用しています。袋の入り口を広げて息を吹きかけると、大気中の空気が息の空気の流れとともに袋の中に吸い込まれ、すぐにふくらむのです。
1738年、スイスの数学者で物理学者のダニエル・ベルヌーイは「空気や水の流れがはやくなると、そのはやくなった部分は圧力が低くなる。はやく流れるほど圧力は下がる」と結論付けました。実際に、空気の流れが速くなればなるほど、移動する空気の周囲の気圧は低下します。
口から大きな袋に流れ込む空気の流れによって生じる低圧力の領域に、大気中の高圧力の空気が引き込まれます。これによって、大気中の空気は息を吹きかけるのと同時に、大きな袋の中に引き込まれていったのです。
消防士から霧吹きまで応用されている
消防士はこのベルヌーイの定理を使用して、建物の外に煙を素早く効率的に送り出しています。建物の開口部とファンの間に小さなスペースを空けて、建物内に大量の空気を送り込みます。
そのほか、水をシュッシュと吹きかける霧吹きにもベルヌーイの定理が応用されています。ポンプで空気を押し出し、空気の流れを速くすることによって、そこに水が引き付けられて水を吹きかけることができるのです。
本日ご紹介した実験はサイエンスショーでも子どもたちに人気で、毎回空気の流れをそれぞれ想像しながら、袋の持ち方を工夫したり自分自身の態勢を変えてみたりするなど、よくふくらむ方法の案を考えてくれます。
袋に空気を入れる方法は、今回ご紹介した息を吹きかける方法以外にもいろいろとあるので、自由研究などでそれぞれの違いの仮説と実験をまとめてみるのもおすすめです。
ぜひみなさんも実験をとおして、空気の流れのおもしろさにたくさん触れてみてください!
注意事項
・息を吹くときに酸欠にならないよう充分に気をつけてください。
・窒息する可能性がありますので、袋を体に巻き付けたり頭にかぶせたりしないように気を付けてください。
・小学生など低年齢の子どもが実験するときは、必ず保護者の指導のもとで実施してください。
五十嵐美樹
東京大学大学大学院にて科学コミュニケーションを専攻。学部時代に「ミス理系コンテスト」でグランプリを受賞し、全国各地で子どもたちに向けた科学実験教室やサイエンスショーを主催している。また、大手電機メーカーでのエンジニア就業経験を活かし、理系女子キャリアイベントの講師としても活動。これらの活動が認められ、2018年「日産財団リカジョ賞」準グランプリ受賞。A.L.I. Technologies技術アンバサダー。

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