強烈なストッピングパワー
振り返しの早さに言葉を失う
全日本ラリー選手権でトヨタのワークスチームの監督を務める豊岡さんのドライブにより、2周回していただいた。計器類を見ると、アイドリングは2000回転以下あたりで推移しているのがわかる。当然ながら車内は結構うるさい。
そのままスルスルッと走り出すと、思ったより乗り心地がよい、というのが第一印象。コンフォートなセダンやSUVに乗っているのでは? と思えるほど。オンロードのレーシングカーの場合、荒れた路面だと脳天をかち割られるような衝撃を覚えるので、ここはオフロードの車なんだなと実感する。
レーシングカーというと、加速のスゴさに体がシートに張り付くというイメージを持たれると思う。もちろんそれはその通りなのだが、マニュアルに「急加速時のムチウチに気をつけてください」と書かれているという「NISSAN GT-R NISMO」より穏やか。幸いにもムチウチにならずに済みそうだ。
しかし、エンジンのピックアップの早さには驚くものがあり、あっという間に3速まで入っている。そこからコーナーが近づきブレーキングしてシフトダウン、一気に1速に落とすのだが、減速の凄さは今まで体験した同乗走行よりも印象的で4点式のシートベルトが胸に食い込み息がつまりそうなほど。そのままステアリングを切ってコーナーに侵入するのだが、車体のロール量が凄く、横方向のGや車高の高さと相まって「このままひっくり返るのでは?」という恐怖を覚え声も出ない。
切り返しの速さ、反応の素早さも特筆すべき点で、フロントに荷重がかかってクイッと曲がる様子は「なんだコレ?」の一言。ジムカーナに乗ったこともあるが、それともちょっと違う。というのも、豊岡さんのドライビングを見ていると、とてもゆったりとした、穏やかな操作なのだ。あまりの操作の早さに目が追いつかないのか、それとも本当にゆったりなのか……。
これが外で見ていても面白いもので、ヴィッツが猛発進をしたり、テールスライドしたり、素早く切り返しをする姿は失礼ながらユーモラスに思える。
今回、グラベル用のタイヤでデモ走行をしたのだが、高価なタイヤが、わずか4周で溝がすべてなくなっていた。それだけのパワーが、わずか1.6リットルのターボエンジンから生み出されていることに驚き。まさに世界最強のヴィッツだ。
日本でフルターマックラリーが
開催されるかもしれない!
そんなヤリスWRCをはじめとするWRカーによる日本でのラリーが実現するかもしれない。現在、2020年からWRC(世界ラリー選手権)の日本ラウンド「Rally Japan」の開催を目指した招致活動が行なわれているのだ。その準備の一貫として、2019年11月7〜10日、愛知県の豊田市、岡崎市、長久手市、新城市、設楽町で「Central Rally Aichi 2019」(仮)というテストイベントが実施される。
このイベントでは、2020年の開催で想定しているコースでの走行のほか、運営組織やスタッフの習熟、そして医療査察なども行なわれる。先日、永田町の方からSNSを通じて「WRC日本ラウンド開催決定」との報が流れたが誤りで、6月に予定されているWorld Motor Sport Council(WMSC)での承認が必要となる。
モータースポーツジャパン2019の会場で、WRC日本ラウンド招致委員会の事務局を担当する高橋浩司氏は「FIAのWRC委員会における組織構成やカレンダーなどの決定プロセスなどについて、我々が期待していた方向性に沿った形で進行しており、ラリー・ジャパンを2020年に開催できることを確信しています」と挨拶。
さらに、来日したWRCプロモーターのオリバー・シースラ代表も「WRCは世界各国で数億人が見ていますが、その視聴者数で日本は6位に位置していまして、関心の高さがうかがえます。あとはWMSC(世界モータースポーツ評議会)でのカレンダー承認を待つだけです」と、前向きであることを示した。
2010年以来となる日本でのWRC開催。しかも、今回は初となる全コース一般道を封鎖してのターマック(舗装路)のラリーを予定している。普段走っている一般道をWRカーが爆走する姿が見られる日を楽しみに待とう!
この連載の記事
-
第491回
自動車
ボルボの電動SUV「EX30」は価格と性能のバランス良し! 乗って実感したオススメポイント5つ -
第489回
自動車
サーキット向けのアルピーヌ「A110S」はフランスらしいデザインと上質さで街乗りも楽しい -
第489回
自動車
アストンマーティン「DB12」はラグジュアリーと最高性能を両立させて究めた1台 -
第487回
自動車
Hondaのセダン「アコード」はすべてが適度でちょうどいい! 5つの魅力を紐解く -
第486回
自動車
これぞ王道! これぞ本流! BMWの魅力を凝縮したSUV「X5」は最高の1台と断言する -
第485回
自動車
1000万円対決! ポルシェ「マカンT」とアウディ「SQ5」似て非なる2台をあらた唯と徹底比較 -
第484回
自動車
日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞のHonda「FREED」の魅力と買いのグレードはコレだ! -
第483回
自動車
【ミニバン売れ筋対決】ホンダ「フリード」とトヨタ「シエンタ」の良いところと微妙なところ -
第482回
自動車
これがBMWの未来! フラッグシップEVの「iX」は乗り心地良すぎで動くファーストクラス -
第481回
自動車
アルファ・ロメオのハイブリッドSUV「トナーレ」はキビキビ走って良い意味で「らしく」ない -
第480回
自動車
独特なデザインが目立つルノーのクーペSUV「アルカナ E-TECH エンジニアード」はアイドルも納得の走り - この連載の一覧へ