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著者に聞く・レンタルなんもしない人:

話題の「レンタルなんもしない人」が生まれた理由

2019年04月19日 09時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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●お客さんが勝手に満足してくれた

──サービス設計は作りこみましたか。

 何も考えていません。プロ奢(おご)ラレヤーさんをマネしまくっています。

──プロ奢さんは名前のとおり、ごはんをおごられることのプロです。

 プロ奢さんとは人間性が違うので丸パクリするとストレスが生じてしまう。自分なりにするならどうするかなと思ったら、つねづね「なんもしたくないな」と思っていたので「なんもしない人」かなと。レンタルされたときに飲食代なんかは発生するので、それさえもらえれば、生きていけることになるんじゃないかと。

──「レンタルなんもしない人」を始めて、想定外だったことはありますか。

 初めは飲み会で置物扱いされるんじゃないかと思ったんですが、始めてみたら、切実で深刻な人の依頼が多かったですね。「オープンにしないでほしい」という個人的な依頼も多かったです。

──「そばにいてほしい」といった依頼ですか。

 そういうと価値を狭めてしまうことになります。心細いからそばにいてほしいというだけでなく、話し相手とか、壁打ち相手とか、一言では言えないですね。

──おっさんレンタルなどは有料で一定の価値を提供するサービスですが、レンタルなんもしない人はお客さんのほうが利用価値を見出しています。

 そこが他のレンタル系と全然違うところですね。ある大学の先生が「なんもしないロボット」の参考にしたいというので行ったことがあるんです。その先生が学会で説明する資料を書いてあったんですが、ロボットの設計でも、あらかじめ設計者が「このロボットは利用者のさびしい気持ちをやわらげる効果があります」と設計すると、利用者に商品のイメージを見透かされて「あざとい」という心理的リアクタンスを引き起こしてしまうそうなんですね。

──設計がしっかりしているとかえって利用しづらくなるということですか。

 ぼくの方はそういう設計がなく、何も考えず相手に丸投げしてるので。利用者は自分が満足したいように解釈して、必然的に満足してくれているような印象です。

──活動を続けながらサービス内容を調整したことはありますか。

 最初は自分でも「なんもしないサービス」を信じきれていないところがあったので、依頼者の荷物を持ったり、車道側を歩いたりしていたんですが、そのうち、それもやらなくていいかなと思うようになりました。求められていたのは基本的には「気をつかわなくていい」存在だったので、作業の見守りなんかは気をつかったほうがよかったりするんですけど、基本的には、自分が気をつかうと相手にも気をつかわせてしまうので、それはしないようにしようと。

──なるべく相手にストレスを与えないようにしていたんですね。

 「なんもしないこと」の純度を上げていったというところですね。たとえばプロ奢さんのマネをしてガムを噛んだりもしています。ガムを噛んでいるとあまりちゃんとしていない人だと思われて、気をつかわれないので。

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