用途によって2種類に作り分けられた
POWER8
おもしろいのはここからだ。POWER8の世代でIBMはチップをスケールアップ(SMPのコア数を増やす方向)に向いたチップと、スケールアウト(クラウドなどサーバーの数そのものを増やす方向)に向いたチップの2種類に作り分ける。
画像の出典は、HotChips 26におけるAlex Mericas氏(Systems Performance, IBM Systems & Technology Group Development)の“Performance Characteristics of the POWER8 Processor”
また、POWER8はCAPI(Coherent Accelerator Processor Interface)と呼ばれる独自のアクセラレーター用のI/Fを搭載した。これは2016年にOpenCAPIに進化して仕様も公開されたが、当初はあくまでIBMの独自規格であり、そしてこのCAPIに対応したのがNVIDIAのNVLinkであった。
当初の目的は、それこそGPUと組み合わせてのHPCシステムの構築であり、その最初のものがオークリッジ国立研究所のSummitとロスアラモス国立研究所のSierraになる、という話は連載340回で説明した通りだ。
POWER8は他にも拡張命令がずいぶん強化されており、特に暗号化関連は大幅に性能を上げているのも特徴だ。
画像の出典は、HotChips 26におけるAlex Mericas氏(Systems Performance, IBM Systems & Technology Group Development)の“Performance Characteristics of the POWER8 Processor”
こうした強化の結果、POWER8はPOWER7と比較して、以下の性能になっている。またIvy BridgeベースのXeonと比較して1.8~2.7倍の性能(2ソケットベースのサーバー同士での比較)と報告されている。
- 1スレッド動作で2.3倍の性能と処理反応時間56%減
- 全スレッド動作で2.9倍の処理性能と反応時間31%減
このPOWER8ベースの製品は、まず2014年4月にスケールアウトモデルのIBM Power System S812L~S824Lが、翌2015年に今度はスケールアップモデルのIBM Power System E850~E880がリリースされた。2016年にはそのスケールアップモデルのクラウド対応版としてIBM Power System E850C~E880Cもリリースされた。
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