●まずは上級者向けに普及進むか
カメラメーカーがフルサイズミラーレスを合言葉にさまざまな展開を見せる一方、レンズ交換型カメラは不調が続いている。カメラ映像機器工業会によればデジカメ全体の出荷台数は前年比で減少続き。一眼レフカメラの出荷台数も落ち続け、昨年ミラーレス一眼カメラに逆転された。唯一出荷台数を伸ばしているのがミラーレス一眼ということで、各社ミラーレス頼みとなっている。
背景にあるのは当然スマホだ。AIや複数レンズなどスマホのカメラ機能が進化して気軽にきれいな写真が撮れるようになった今、新しいお客さんを取り込むのはむずかしい。新しくカメラを買うには理由がいる。そこでスマホより大きなセンサーならではの解像感、望遠や近接などスマホが弱みとする画角を売りにして、ミラーレスで「スマホからのステップアップ」をねらっているのが現状だ。ミラーレスは一眼レフと比べて、小型・軽量で持ち歩きやすいのもとっつきやすい。実際に「スマホよりもいい写真を撮りたい」と考えてミラーレスを購入する人も多いという。
一方で、主要各社が展開するフルサイズミラーレスはまだ安いとは言いづらい。カジュアルさを売りにするキヤノンのEOS RPも直販価格は16万500円。ライバルのスマホが高級モデルでも10万円程度、しかもほとんどが割賦で購入していると考えると価格的にはまだ遠い。もちろん今までのフルサイズミラーレスと比べるとかなり手軽になったとはいえ、まだAPS-Cやマイクロフォーサーズの普及帯製品、あるいは型落ちがステップアップ層の中心になりそうだ。どちらかというと今までの一眼レフユーザーがミラーレスに移行するという部分が大きそうだ。
実際、会場の外にある撮影スポットで写真を撮っていた19歳の女性に話を聞いたところ「10万円を切らないと厳しい」と話していた。普段コスプレをしていて自分でも写真を撮りたいと思うようになり、2013年発売のニコン「D5300」をレンズやSDカードなどをセットにして8万円で買ったという。
35歳の記者自身も実売23万円程度のマイクロフォーサーズカメラ、オリンパス「OM-D E-M1 Mark II」さえなかなか手が出ない懐具合。先日も「新型発売で安くなってないかな」と店をのぞいてきたばかりだ。20万円以下でフルサイズが手に入るキヤノンのEOS RPも魅力的だが、レンズや周辺機器などを足し算していくと二の足を踏んでしまう。「来年型落ちで買おうかな」という選択肢も検討しているところだ。
とはいえ、パナソニックのLUMIX Sシリーズなどの注目製品が気にならないかといわれればウソになる。高級帯が売れれば普及帯もやがて技術的な恩恵にあずかれるはず。ぜひともフルサイズミラーレスには爆発的に売れてもらい、市場全体に右肩上がりで伸びてもらい、カメラ全体を豊かにしてほしいものだ。