プロセッサーの性能により
ソフトウェアの価格が変わる
さて、1988年にはこのプロセッサーモジュールを利用したAS/400 B10~B60が出荷され、翌1989年にはハイエンドのB70が出荷開始される。
ちなみにProcessor GroupではP10とP20に属する。Processor GroupというのはIBMの用語で、どのグループに属するかでソフトウェアライセンスの価格が変わるというもの。今で言えば、Core向けとXeon向けでOSやアプリケーションのライセンス料が変わる感じに近い。
ではProcessor Groupはなにで決まるかというと基本的には性能であるが、この性能が毎年どんどん上がっていく状況であり、そういう意味では古い世代で上位のProcessor Groupのシステムを使うよりも、新しい世代で下位のProcessor Groupのシステムを使った方が下手をすると性能が上、ということもちょくちょくあったようだ。
ただこれにより、煩雑なアップグレードが見込めたという側面もあるから、IBMとしては別に問題はなかったのかもしれない。
プロセッサーの性能そのものはCPW(Commercial Processing Workload)なる数字が明らかになっている。これはTPC-Cというオンライントランザクションベンチマークを簡単化したようなIBM独自の指標であるが、少しラインナップで拾うと下表のような関係になっている。
プロセッサーのラインナップと性能 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
モデル | 年度 | プロセッサーモデル | CPW | |||
B10~B70 | 1988~1989 | P10/P20 | 2.9~20 | |||
C04~C25 | 1990 | P10 | 3.1~6.1 | |||
D02~D80 | 1991 | P10/P20/P30 | 3.8~56.6 | |||
E02~E95 | 1992 | P10/P20/P30/P40 | 4.5~116.6 | |||
F02~F97 | 1993 | P05/P10/P20/P30/P40 | 5.5~177.4 | |||
P01~P03 | 1993~1995 | P05 | 7.3~16.8 | |||
10S~140 | 1993~1995 | P05/P10/P20 | 17.1~65.6 | |||
200~236 | 1994 | P05/P10 | 7.3~17.1 | |||
300~310 | 1994 | P10/P20/P30/P40 | 11.6~177.4 | |||
400~436 | 1995 | P05/P10 | 13.8~91.0 | |||
500~53S | 1995 | P10/P20/P30/P40 | 18.7~650 | |||
150 | 1996 | P05 | 10.9~35.0 | |||
S10~S40 | 1997 | P05/P10/P20/P30/P40/P50 | 45.4~4550 | |||
SB1~SB3 | 1997~2000 | P30/P40 | 1794~16500 | |||
600~650 | 1997 | P05/P10/P20/P30/P40/P50 | 22.7~4550 | |||
170 | 1998 | P05/P10/P20 | 30~1090 | |||
720~740 | 1999 | P10/P20/P30/P40/P50 | 240~4550 | |||
250/270 | 2000 | P05/P10/P20 | 50~2350 | |||
820 | 2000~2001 | P05/P10/P20/P30/P40 | 100~3700 | |||
830~840 | 2000~2002 | P20/P30/P40/P50 | 1850~20200 | |||
870~890 | 2002 | P40/P50/P60 | 7700~37400 | |||
800~825 | 2003 | P05/P10/P20/P30 | 300~6600 | |||
520~595 | 2004~2006 | P05/P10/P20/P30/P40/P50/P60 | 500~216000 | |||
515~570 | 2007 | P05/P10/P40 | 3800~58500 | |||
MMA (9406) | 2007 | P30 | 5500~76900 | |||
M15~M50 | 2008 | P05/P10/P29 | 4300~18000 | |||
MMA | 2008 | P30 | 8150~76900 | |||
JS12/JS22 | 2008 | P05/P10 | 7100/13800 | |||
570 (9117) | 2008 | P30 | 104800 | |||
595 (9119) | 2008 | P60 | 294700 |
1993年にP05のモデルが追加されるまではP10が一番ローエンドのプロセッサーモデルであるが、1988年ではCPWが最低で2.9だったのが1992年に4.5、1994年には11.6まで引きあがっている。
6年で性能が4倍なので、毎年40%以上の性能改善がなされていたことになる。これが可能になったのは、ハイエンド製品と同じくAS/400もCMOSで製造されていたからだ。
1980年代末~1990年代にかけては、ほぼ毎年のようにプロセスが微細化され、動作周波数の向上とロジック密度の向上、そして消費電力の低減が実現されていった。
これはハイエンドの方も同じで、1989年にはCPWで20だったハイエンド品は、1992年には116.6、1993年には177.4で、やはり年率43%ほどの割合で性能が改善している。
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