とはいえ、個人情報を垂れ流してまで得すべきか
ポイントカードの利用方法そのものについても考える必要があると思いました。ポイントが付与されていると言うことは、なんらかの対価になり得る情報が蓄積され活用されうる可能性があるということです。
テクノロジーを用いたサービスは、もちろんエンドユーザーの体験やメリットをアピールしながら普及を進めることがほとんどである一方で、本当に最大のメリットをだれが享受しているのか、自分はそのサービスの「顧客なのか」という点を考える必要もあります。
共通ポイントのビジネスモデルは、マーケティング活用などそのデータベースにあると思いますが、それでも顧客の利便性を最大限に追求したPONTAと、そこが不十分なdポイントやTポイントでは筆者は異なる印象を抱いてしまいます。
その取り扱いに対しては、どんな情報が蓄積されているのか、どのような運用を行なっているかという実際のところと、消費者側が抱くイメージの問題があります。まさにその部分で当局への協力に関連する報道でネガティブな面が際立ってしまったのがTポイントでしょう。
たとえ蓄積されているデータが匿名化されていたとしても、他の公開されている情報とのマッチングが図られれば、どの人の情報なのかを特定することができてしまいます。
その「他の公開されている情報」とは、たとえばFacebookやTwitter、Instagramのように、人や人格、場所、写真、友人関係などの具体的な情報を、ユーザー自ら掲載・公開している状況のことです。米国や欧州では、Facebookの情報流用によるプライバシー問題だけで大きな報道がなされ、財布の紐ならぬ個人情報の紐がキュッと締まりました。
日本は良くも悪くも、プライバシーに対して楽観的すぎるように映ります。あるいは、この問題への理解がなんらかの原因で止まってしまっている可能性も疑うべきかもしれません。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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