ライトユーザー層へのBI/データ分析の浸透を進める「統合BIプラットフォーム」目指す
“AI BI”でセルフBI支援強化、「IBM Cognos Analytics」最新版
2019年01月21日 07時00分更新
日本IBMは2019年1月18日、BIツール「IBM Cognos Analytics」最新版(V11.1)に関する記者説明会を開催した。顧客企業内においてより幅広いユーザーが利用できるBIツールを目指し、AI技術を取り入れたデータプレパレーションの自動化や自然言語による対話型操作、洞察(インサイト)発見の支援といった機能を強化している。
同社アナリティクス事業部の村角忠政氏は、元々「エンタープライズBI」領域で強みを持つCognos Analyticsが、AIによる自動化/支援技術で“使いやすさ”を強化することで「セルフサービスBI」領域のライトユーザー層も取り込んでいく方向性を説明した。
AIエンジンによる自動相関分析、分析/可視化手法の提案、洞察の示唆など
Cognos Analytics V11.1は、昨年11月にリリースされた最新バージョン。IBMでは同バージョンから、AIによるさまざまな自動化/提案/支援機能を取り入れていく方針としており、今後3カ月ごとにリリースされるアップデートでも順次そうした機能が強化されていく。
具体的には、データを取り込む際の加工/結合/モデリングといった処理(データプレパレーション)や、データ内容およびデータ間の相関関係の分析といった処理が、内蔵のAIで自動化されている。さらに、データ内容に適した分析手法/可視化手法の自動選択とユーザーへの提案、また対話形式(チャット形式)でガイドされるデータ検索や分析、可視化などの操作も行える。
「Cognos Analyticsにデータをアップロードすると、Cognos自身がそのデータの中身を読んで『どんなデータなのか』『どういうふうに集計分類すればよいか』といったことを全部自分で(AIエンジンに基づいて)判断してくれる。さらにデータの相関分析もAIで自動的に行い、分析や可視化の手法選定、そして最後にはデータから得られる洞察、たとえば『売上が落ちているのは何が原因と考えられるか』といったものもAIが示唆してくれる」(村角氏)
現時点ではまだ、対話形式の操作は英語(を含む4言語)のみの対応だが、今年中にはアップデートにより日本語にも対応する予定。またAIが示唆する洞察も、現時点では単一データ(グラフ)から読み取れる内容に限られるが、こちらも今後、複数のデータ間に隠れた相関などをユーザー示せるよう強化していく計画だという。
同社アナリティクス事業部 ダッシュボード・サイエンティストの木戸隆治氏は、新興ベンダーによるセルフサービスBIの登場によって「BIが簡単になった」「誰でも使えるようになった」という声を聞くようになったが、「われわれ(IBM)としては『本当にそうか?』とも思っている」と語る。Cognosの顧客企業の多くはレポート、ダッシュボード用途でのBIツール活用が主であり、レポート/ダッシュボードを参照するだけのライトユーザー層を多く抱えている。だがこれまでのセルフサービスBIツールも、そうしたライトユーザー層が自ら手を動かし、積極的にデータ分析をしていこうという気運を生むまでには至っていないという見方だ。
「世の中の8割、9割を占めるそうしたライトユーザー層に対し、セルフBI(セルフサービスBI)の良さを広めていきたい。そこで今回は、AIの力を使ってセルフBIを変えていく。結局はパワーユーザーしか使っていないという『セルフBIの壁』をぶち破っていきたい」(木戸氏)
また村角氏は、セルフサービスBIツール市場の各ベンダーがAIによる自動化/支援機能の開発意向を表明しているが、「一般ユーザー向け機能として実装できているのはIBMが初めてではないか」と語った。
なおCognos Analyticsでは、この最新版から新ライセンス「Premium Edition」を追加している。Premium Editionは、機能制限のないCognos Analytics環境を、1ユーザーあたり月額9700円(税抜)で提供するもの。従来からあるWorkgroup Editionはシングルテナント環境、最低25ユーザーからだが、Premium Editionはマルチテナント環境で、1ユーザーから利用できる。
エンタープライズBI/セルフサービスBIの統合プラットフォーム目指す
IBMでは、Cognos AnalyticsのセルフサービスBI領域への拡大を通じて、大手企業を中心とした既存顧客内でのユーザー数拡大を強く意識している。
セルフサービスBIは、レポート/ダッシュボード開発を目的としたエンタープライズBIの課題を解消するために登場したが、「実際の顧客企業の動きを見ると、まだすべての一般ユーザーが自由にデータを扱える状態にはなっておらず、部門単位で導入されているケースが多い」と村角氏は語る。セルフサービスBIツールには、個人情報や機密情報なども含まれるデータのガバナンスやセキュリティの問題、さらにデータ分析に対するユーザーリテラシーの問題があるからだ。
そこで、エンタープライズBIツールとしての長い歴史を持つCognosが、セルフサービスBIツールとしての機能も同時に強化し、両者を連携させることで、全社的に活用できる「統合BIプラットフォーム」の実現を目指していく。
「たとえば(リテラシーの高くない)ダッシュボードユーザーでも、KPIのグラフを見て『この原因は何だろう』と少し深く分析したくなることがある。旧来のエンタープライズBIツールならばここで終わってしまい、ドリルダウン(深掘り)してデータの要因分析などができなかった。Cognosではここもシームレスにつないでいきたい。ユーザーがセルフBIを意識しなくても、気がついたらセルフBIツールを使ってデータ分析しているような世界だ」(木戸氏)