日本では1960年代に生理用ナプキンが生まれた
最後に日本のことにも触れておこう。看護学者の小野清美さんの『アンネナプキンの社会史』によると、日本で生理用ナプキンが普及し始めたのは高度経済成長の真っただ中。
1961年に、当時27歳の坂井泰子さんが創業したアンネという会社が「アンネナプキン」を発売したのがきっかけだ。キャッチコピーは「40年間お待たせしました」。アメリカでは40年前に広がった生理用ナプキンが、いよいよ日本にも登場するという意味である。
アメリカやヨーロッパ、日本では近代化や高度経済成長の象徴するように、サラリーマン、専業主婦、家電、自動車、郊外の「庭付き一軒家」などが一般化していった。日本やインドの状況を考えると、そこに生理用ナプキンも付け加えても良いかもしれない。
近年では「Female(女性)」と「Technology(技術)」をあわせた「Femtech(フェムテック)」という造語が生まれている。テクノロジーの力で、女性の身体や性などにまつわる課題を解決しようとする動きと言って語弊はないだろうか。
日本ではランジェリーブランド「feast」や、ワンピースブランド「ダブルチャカ」などを運営する、ハヤカワ五味さんが生理用品の開発に取り組んでいるようだ。ハヤカワさんは「生理は恥ずかしい」というカルチャーを変え、生理用品といえば「生理用ナプキンほぼ一択」というような状況を変えたいという。自身のTwitterやYouTubeチャンネルなどで述べている。続報が楽しみだ。
※ハヤカワさんは従来のブランドが販売していないような、ロリータ服やタイツを自作したところから服作りを始めている。feastも大企業が見捨てがちな、胸が小さい女性向けブラジャーを取り扱うブランドだ。今回も「標準」や「ふつう」から、こぼれ落ちるものにまなざしを向け続けているように思う。(「小さな胸、折れない心 美しい19歳 feast ハヤカワ五味代表」)
いつの時代もそうであるように、いま世界は変わろうとしている。『パッドマン 5億人の女性を救った男』は一見遠くの国の話に思えるかもしれないが、未来への希望を感じる良作だった。ぜひ、インド映画や生理用ナプキンに興味がない人でも手にとってほしい。
●DVD情報
・『パッドマン 5億人の女性を救った男』(原題:Pad Man)
・監督・脚本:R・バールキ
・出演:アクシャイ・クマール、ソーナム・カプール、ラーディカー・アープテー
・DVD:4月24日発売(価格:4104円)
・発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
・2018年/インド映画/2時間17分
・公式サイト
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