紙資料に電話ベースのコミュニケーション。学校やPTAには超アナログな世界が残っている。その世界をkintoneで変えることができないか――。挑戦したのは、kintoneのカスタマイズを得意とするジョイゾーの代表取締役社長を務める四宮靖隆さん。PTA副会長就任を機にkintoneを使ったPTA改革に着手した。果たしてその成果は。
PTA活動を効率化して門戸を広げたいという想いと、抵抗勢力
学校と生徒と保護者をつなぐPTA。PTA活動には自治体、地域の団体なども協力しているので、複数の組織の連携が肝要なはずだ。しかし実態は超アナログな世界。学校は紙資料ベースの業務から抜けられずにいるし、個人情報保護対策が足かせになっているケースもある。
四宮さんがPTA副会長を務める学校では、学校が生徒の情報を渡してくれず、関係者との迅速で正確な情報共有が難しかったという。もちろん、生徒の情報を収集する際にPTAでも使うことを盛り込んでおけば法的な問題はないはず。だが多くの学校ではそうした情報活用の知識を持つ職員がおらず、情報提供先のセキュリティも見極められないため、生徒や保護者の情報を連携することさえ高いハードルがあるのだ。
また、PTAの活動形態にも課題がある。専業主婦の活動がベースになっているので、活動の多くは平日の日中。共働き世帯はそんな時間に学校に行くだけで大きな負担となり、活動に参加すること自体が難しい。「とにかく超アナログな世界です。私が加入したとき、イベント運営のノウハウはベテランPTA役員が持っていて、属人化していました。先生や役員さんが持っているのはスマートフォンではなくガラケーでしたし、各種データはExcelで管理されていました」(四宮さん)。
情報共有やコミュニケーションはITを応用して効果を出しやすい分野だ。四宮さんもIT導入を提案したが、強い抵抗に遭ったという。PTAの活動は「昨年同様」が続いており、運用を変えたくない。紙資料の共有でこれまでに困っていない。IT導入の予算もなかった。
詳しいノウハウを持つベテランの卒業がIT化のきっかけに
方向転換のきっかけは、ベテランPTA役員の退会だった。卒業に合わせて、それまで中核を担っていた役員の多くがいなくなってしまったのだ。ノウハウが属人化していたので、残された役員は活動のあらゆる場面でつまずくことになった。「このイベント、去年はどんな風に準備していたんだろう」「誰に連絡すればわかるんだろう」――そんなことが相次いだ。四宮さんはこのタイミングを逃さなかった。
「ベテランPTA役員さんがいなくなって、過去の活動内容に関する情報が蓄積されることの大切さを実感しているタイミングでIT化を提案しました。最初はコストがかからないCybozu Liveを導入しようと思ったのですが、終了がアナウンスされたのでkintoneを導入することにしました」(四宮さん)。
コスト面では無償で使えるCybozu Liveに分があったが、機能面ではkintoneに優位性があった。プロセス管理、コミュニケーション、データベースといったチーム運営に必要な機能がひとつのアプリケーションに揃っている。さらに、Cybozu Live終了を補うかのようにスタートしたチーム応援ライセンスも、kintone導入の後押しとなった。チーム応援ライセンスでは、Cybozuのクラウド製品がNPO法人や非営利の任意団体に年間9900円で提供される。ユーザー数の上限は300なので、かなり自由に使える。しかもkintoneはライトコースではなくAPI連携などの機能も使えるスタンダードコースだ。
「役員名簿やイベント管理のほか、イベントで誰が何を担当するのかをデータベースとして管理しています。広報活動の一環として広報誌を発行していますが、これは冊子ごとにスレッドを立てて管理。スペースやスレッドを使ってコミュニケーションを取りながら、イベント準備や冊子作成の記録を残しています」(四宮さん)。
とはいえ、全員がkintoneを使いこなせる訳ではない。そこでコミュニケーションではkintoneとLINEを併用しているという。ツールの特性からLINEはリアルタイムコミュニケーション、kintoneはストックコミュニケーションと使い分けができており、どちらかに無理に寄せるよりうまく運用できていると四宮さんは語る。