Type-3を改良した廉価版
IBM-PC/XTを出荷
Type-1に続き、1985年中旬にはType-2が登場する。表面的には違いがないが、マザーボードがBaby ATサイズまで小型化されている。またメモリーチップが128Kbit品から256Kbit品に切り替わった。さらに1986年4月には、8MHzの80286を搭載したType-3も登場した。
画像の出典は、IBM 5170 - Motherboard Revisions
以上のようにハードウェアは80286に変わり、プロテクトモードと16MBのメモリー空間が利用可能になったとはいえ、ソフトウェアの方は依然としてMS-DOSベースなので、けっきょくは高速な8086/8088として80286を利用することになった。もっとも性能向上のニーズは当然高かったので、80286に交換することで高速化されたIBM-PC/ATの評判は悪くなかった。
このIBM-PC/ATの派生型、としてもいいと思うのだが、Type-3のマザーボードをさらに再設計、というよりもう一段すっきりさせたのが1986年9月に発売されたIBM-PC/XT model 286(IBM 5162)である。
画像の出典は、Supervinx Online Museum
こちらはXTという名前ではありつつもCPUは80286の6MHzであり、ATバススロットも5本搭載している。マザーボードそのものは完全にIBM-PC/XTのものと同一サイズに抑えられ、IBM-PC/XTを思わせる筐体(微妙に違うらしい)に収めて出荷されたが、実質的にはIBM-PC/ATのバリューモデルという扱いである。
おもしろいのは、IBM-PC/ATはType1~3まで150ns程度のDRAMを利用していた関係で、メモリーアクセスには1ウエイトが入っていた(つまりアクセスに2サイクルかかる)が、IBM-PC/XT model 286ではアクセスが75ns程度のSIMMを利用可能になっており、この結果0ウエイト(つまりアクセスが1サイクル)となった。
要するに、メモリーアクセスを多用するアプリケーションでは、IBM-PC/XT 286の方が高速に動作したらしい。
このIBM-PC/XT model 286は20MB HDDを内蔵して、4000ドルほどで発売されていたそうで、価格的にもまさしくエントリー向けであるのだが、残念ながらあまり芳しい売れ行きではなかった。なんというか、これもIBM-PC/ATとして売り出した方がよかったのではないか? という気がしなくもない。

この連載の記事
-
第852回
PC
Google最新TPU「Ironwood」は前世代比4.7倍の性能向上かつ160Wの低消費電力で圧倒的省エネを実現 -
第851回
PC
Instinct MI400/MI500登場でAI/HPC向けGPUはどう変わる? CoWoS-L採用の詳細も判明 AMD GPUロードマップ -
第850回
デジタル
Zen 6+Zen 6c、そしてZen 7へ! EPYCは256コアへ向かう AMD CPUロードマップ -
第849回
PC
d-MatrixのAIプロセッサーCorsairはNVIDIA GB200に匹敵する性能を600Wの消費電力で実現 -
第848回
PC
消えたTofinoの残響 Intel IPU E2200がつなぐイーサネットの未来 -
第847回
PC
国産プロセッサーのPEZY-SC4sが消費電力わずか212Wで高効率99.2%を記録! 次世代省電力チップの決定版に王手 -
第846回
PC
Eコア288基の次世代Xeon「Clearwater Forest」に見る効率設計の極意 インテル CPUロードマップ -
第845回
PC
最大256MB共有キャッシュ対応で大規模処理も快適! Cuzcoが実現する高性能・拡張自在なRISC-Vプロセッサーの秘密 -
第844回
PC
耐量子暗号対応でセキュリティ強化! IBMのPower11が叶えた高信頼性と高速AI推論 -
第843回
PC
NVIDIAとインテルの協業発表によりGB10のCPUをx86に置き換えた新世代AIチップが登場する? -
第842回
PC
双方向8Tbps伝送の次世代光インターコネクト! AyarLabsのTeraPHYがもたらす革新的光通信の詳細 - この連載の一覧へ











