旧来のメインフレームビジネスに注力
起死回生に失敗し時代に取り残される
この困難な時期に、Opel氏に代わってCEOになったのはJohn Fellows Akers氏である。
John Fellows Akers氏。1974年に39歳の若さでData Processing Divisionのトップに選ばれ、1982年には上級副社長、1983年に社長となっている
画像の出典は、IBM
Akers氏はまず立て直しのために、ピークで40万5000人(*2)もの従業員のうち3万2000人を解雇。10の製造施設を閉鎖するとともに、マーケティングとカスタマーサポートに再び注力することで業績を立て直そうとする。
(*2) 40万7000人から4万7000人を解雇、という数字もある。
ただ先の表にあるように、ここからの売上の伸びは1980年代前半とまったく異なるものになっており、利益率も10%を切ることになった。
さらに1991年には赤字を計上することで、IBMそのものの改革が必要なのではないか、と金融アナリストなどから批判を受けることになる。1992年はさらに赤字額が広がったことで、結局Akers氏は1993年に辞任を余儀なくされる。
ビジネスの様相が変わった以上は、新しいビジネスへの対応に注力してゆく必要があるわけだが、Akers氏のやったことは旧来のメインフレームのビジネスに注力という話であり、根本的なところでミスマッチがある以上、いくら努力してもうまく行かないのは当然である。
実はこの文脈で考えると、IBMがSSIに資金を出したというのは納得できる。SSIは1987年に設立されたが、CRIのCRAY Y-MPに対抗する性能を得ることで、CRIのマーケットを自社のメインフレームで獲得しよう、という目論見だったわけだ。
それ以前にIBM自身の決算が赤字という状況では、SSIの出資が続くわけもないという話は、連載279回で説明した通り。なんというか、起死回生の博打を打ったけど外れて、賭場からおっぽり出された感じである。

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