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最新パーツ性能チェック 第239回

「Ryzen Master」の新機能「Dynamic Localモード」をねちっこく考察

2920Xと2970WXの価格はお得か?Ryzen Threadripper全モデル検証

2018年11月08日 14時30分更新

文● 加藤勝明 編集●ASCII編集部

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WXの弱点を克服する「Dynamic Localモード」が実装される

 2970WXと2920Xは先行モデルの廉価版であるため、新規要素はまったくない。だが今回の発売と同時にリリースされたAMD純正チューニングツール「Ryzen Master」のバージョン1.5に、「Dynamic Localモード」という注目すべき機能が実装されたのでこれを紹介しておきたい。

 この機能は、2990WX及び2970WX環境でRyzen Master最新版をインストールすると自動的に有効になる。ご存知の通り、4基のダイを運用する「WX」付きモデルでは、メモリーやPCI-Eコントローラーと直接つながっている“IOダイ”と、それらをまったく持たない“コンピュートダイ”が存在する。後者の演算性能はIOダイと一緒だが、メモリーにアクセスする処理ではダイ間を接続する“Infinity Fabric”がボトルネックになってしまい、「IOダイより遅くなる」という現象が発生することが知られている。

2970WXのように4ダイを擁する「WX」付きThreadripperの場合、外界と直接接触を持たないコンピュートダイが2基ある。Infinity Fabric経由でメモリーアクセスする場合、メモリー帯域よりInfinity Fabric(1リンク)のほうが狭いため、性能が上がらなくなる。

2920Xのような「X」付きThreadripperでは、2基のダイがそれぞれメモリーへアクセスできる。遠いほうのメモリーへアクセスする際は時間的なロスがあるものの、Infinity Fabricが2リンクあってメモリー帯域とほぼ同等(DDR4-3200時)になるため、WX付きのような問題は起きない。

 これを解決するには、OS側がダイの特性を考えて処理を割り振る、つまりメモリーアクセスの多い処理をIOダイに割り振れるようにする必要がある。WX付きモデルはLinuxで運用するのがベスト、というのはこれが理由だ。

 今回Ryzen Masterに搭載されたDynamic Localモードは、「メモリーアクセスの多い処理をIOダイに優先的に割り振る」という機能をWindows 10で実現する。Ryzen Masterを導入するとデフォルトで有効化されるので、2970WXで組む人はもちろん2990WXユーザーにとっても必携のツールとなった。Dynamic LocalモードはOS上のサービスとして起動するため、有効⇔無効の切替時にOSの再起動を伴わないというのも長所である。

AMD公認チューニングツールである「Ryzen Master」。現在AMD公式で配布されているバージョン1.5以降のものにはDynamic Localモードが実装される。全体のインターフェースは以前のものと変わらない。

「Dynamic Localモード」を切り替えるスイッチ。「X」付きThreadripperではこのスイッチは表示されない。

Ryzen Master 1.5以降をインストールすると、OS側に「AMD Dynamic Local Mode Service」というサービスが組み込まれる。これがプロセスの割当てを制御する技術的核心部分なのだ。

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