HPE Synergy/SimpliVityとAnsibleをパッケージ、ハンズオンやワークショップなど定着支援策も
HPEとレッドハットが日本企業のIT自動化支援「あんしんAnsibleパック」
2018年10月11日 07時00分更新
レッドハットと日本ヒューレット・パッカード(HPE)は2018年10月10日、両社が共同開発したIT運用の自動化ソリューション「あんしんAnsibleパック」をHPEから販売開始したことを発表した。
同ソリューションでは、HPEのコンポーザブルインフラ製品「HPE Synergy」およびハイパーコンバージドインフラ製品「HPE SimpliVity」に「Red Hat Ansible Tower」をセットアップ済みで提供するほか、Ansibleユーザートレーニングやサンプルスクリプト(Ansble Playbook)提供など、顧客企業における“ITの自動化”“Infrastructure as Code”の推進/定着を支援するサービスもパッケージしている。
ユーザーへのIT自動化浸透と定着目指しトレーニングや実機研修も標準バンドル
レッドハットとHPEでは今年6月、HPE Synergy/SimpliVityに「Red Hat OpenShift Container Platform」を組み合わせたリファレンスアーキテクチャ、構築サービス、教育サービスを提供する大規模コンテナ環境の導入支援ソリューション「コンテナ Shiftパック」を発表、提供開始している。今回のあんしんAnsibleパックは、これに続く両社提携/日本発ソリューションの“第2弾”となる。
あんしんAnsibleパックでは、HPE Synergy/SimpliVityにRed Hat Ansible Towerをセットアップ済みの状態で顧客に提供する。これにより、OSやハイパーバイザ、ソフトウェアの自動構成管理だけでなく、API経由で連携するSynergy/SimpliVityのハードウェアリソース(サーバー/ストレージ/ネットワーク)構成も自動化する。さらに、Synergy/SimpliVityのファームウェアアップデート作業も自動化可能。
Ansibleディストリビューションの中でもRed Hat製品を採用した理由について、HPE テクノロジーエバンジェリストの小川大地氏は、「GUIによる操作」「カタログを通じたPlaybookの社内共有」「強化された権限管理やアクセス制御」「レッドハットによる商用サポート」など、エンタープライズでの組織横断的な利用を前提として「誰でも使える」製品であったため、と説明する。
さらに今回のパッケージには、顧客企業のユーザーがAnsibleを使いこなせるようになるために、Ansibleの製品トレーニングや実機ハンズオン研修、ドキュメントやサンプルPlaybookの提供も標準サービスとしてバンドルされている。より習熟の進んだユーザーに対しては、自社のIT運用において自動化するべき業務を洗い出すための「ディスカバリーワークショップ」も提供する。オプションとして、自動化実装のコンサルティングや導入済み自動化ツールからの移行などを支援する「自動化コンサルティング」も用意している。
「今回はAnsibleを『安心して』使ってもらうために、事前セットアップ、トレーニング、サンプルPlaybookという3つをバンドルした」(小川氏)
HPEの社内検証によると、Ansibleによる自動化で、Synergyを使った新規システム向けのサービス配備にかかる期間が数週間から1日以下へ、またVDI環境における月次メンテナンス作業(従業員の配置転換に伴うユーザーデスクトップの再構築作業など)が1時間以上から5分以下に、それぞれ短縮できる導入効果が見込めるという。
あんしんAnsibleパックの価格(税抜、キャンペーン適用時)は、Synergyが676万5000円(コンピュートモジュール×3ノード)から、またSimpliVityが653万3000円(SimpliVity 380×2ノード)から、となっている。オンプレミス製品を従量課金(月額払い)モデルで導入できる「HPE GreenLakeフレックスキャパシティ」も適用可能。
システムの複雑化と管理者不足、ITの抱える課題を解決するために自動化/自律化を
同日の発表会にはHPEとレッドハットの各担当者が出席し、同ソリューションを提供する背景や特徴などを説明した。また早期導入顧客であるSIベンダーのピーエスシー(PSC)もゲスト登壇し、導入効果や感想を語った。
HPE 執行役員の五十嵐毅氏は、データセンター/クラウド/エッジで構成される“ハイブリッドIT”化が企業において加速する中で、「IT管理者の不足」「管理者のスキル不足」「運用管理の複雑化」といった企業ITの課題がより深刻化していることを指摘。そうした課題を解決するためにはIT運用の自動化、さらにはAI適用による“自律化”をもっと企業に浸透させていかなければならないと説明した。
またHPEの小川氏は、日本におけるIT自動化は「まだ黎明期」であり、Ansibleも詳しい担当者だけが一部システムに適用する「知る人ぞ知る」存在にとどまっていること、その適用範囲も「ソフトウェアレイヤーのみ」に限られていることを指摘。今回のパッケージソリューション提供によって、「ハードウェアレイヤーも含むフルスタックでの構成自動化」という適用範囲の拡大、「より多くのユーザーが使える」組織横断での利用拡大の両方を実現できると説明した。
レッドハット シニアソリューションセールスマネージャーの池田俊彦氏は、グローバルでは同社Ansible製品の売上が指数関数的に伸びており、「特に金融、公共、通信など、デジタルトランスフォーメーション(DX)に敏感な顧客ほど導入している」と説明。日本においても前年度比2倍以上の売上増加(2018年度上期)となっており、その背景にはIT管理者の「働き方改革」や、DXを実現するための既存システムの運用効率化といった狙いがあると述べた。
先行導入顧客としてゲスト登壇したピーエスシー 取締役の福島孝之氏は、自社の基幹システムや各部門に散在するデータの統合などを目的としてSynergyの導入を進めており、その中でITインフラの統合管理や監視プロセス自動化のために「HPE OpenView」と併せてAnsibleを採用していると紹介した。「作業工数の50%削減」を目標に掲げており、今後は自社導入で得られた効果に基づいて、顧客システム構築における提案、さらに顧客システム監視への適用などを進める方針だと説明した。