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AWXプロジェクトで開発した「Red Hat Ansible Tower 3.2」が登場

エンタープライズグレードで自動化ツールを提供、レッドハットがAnsibleの国内戦略を説明

2017年10月02日 10時30分更新

文● 大河原克行 編集 ● 羽野/TECH.ASCII.jp

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 レッドハットは9月29日、大規模IT環境の管理を自動化するAnsibleの日本における販売戦略について説明した。

 今回の説明会は、米Red Hatが9月7日(米国時間)に、サンフランシスコの「Ansible Fest」でAnsibleのポートフォリオ拡大を発表したことに伴い開催されたもの。Ansible Festでは、エンタープライズグレードのグローバルサポートを実現する「Red Hat Ansible Engine」と、6つの代表的なネットワーキング・プラットフォーム・モジュールを完全サポートする「Red Hat Ansible Engine Networking Add-on」、エンタープライズAnsibleオートメーション管理プラットフォームの最新版となる「Red Hat Ansible Tower 3.2」が発表された。

Ansibleの最新ポートフォリオ

 なお、「Red Hat Ansible Tower 3.2」は、Red Hatが支援する新たなオープンソースコミュニティプロジェクト「AWXプロジェクト」をベースとする最初のバージョンとなっている。

Red Hat Ansible TowerとAWXの比較

 Ansible Towerは、Red Hatが買収したAnsibleが、商用製品として提供していた管理ツールで、クラウド、仮想化、サーバー、アプリケーション、ネットワークなど幅広いレイヤーの構築作業と構成管理を自動化し、業務効率を向上させるのが特徴だ。

 全世界で最も普及しているオープンソースIT自動化プラットフォームのひとつで、3000近いユニークコントリビュータ、Ansibleオートメーションプロジェクトに対する3万2000以上のコミットなどの実績をベースに進化を遂げた。

 Red Hat Ansible製品担当ゼネラルマネージャーのジャスティン・ネマー氏は、「今では多くの人が自動化について語り、自動化がITオペレーションの一部になっている。だが、ネットワーク部門とサーバー部門がそれぞれに専門ツールを使うなど、異なるツールが林立する縦割りの自動化に留まっているのが現状だ。オートメーションがスケーラブルであるためにはシンプルではなくてはない。全員参加型の自動化を進めるべきである。Ansibleを自動化の共通言語として活用でき、展開、運用が、これまでにないスピードで実現できるようになる」と述べている。

Red Hat Ansible製品担当ゼネラルマネージャーのジャスティン・ネマー氏

「Red Hat Ansible Tower 3.2」では「拡張性、管理性、接続性」を強化

 エンタープライズAnsibleオートメーション管理プラットフォームの「Red Hat Ansible Tower 3.2」は、「拡張性、管理性、接続性という3つの観点から強化した」(ネマー氏)とし、自動化したシステムを、IT部門がより効果的に管理し、多層のデプロイメントに最適化。制御機能やセキュリティの強化や権限管理機能の追加のほか、ユーザーインターフェースやAPIの操作方法をシンプル化している。また、サードパーティーのエンタープライズツールやプロセスとの統合を容易化しているという。

 また、ユーザーがカスタムビューを作成し、パブリッククラウドやプライベートクラウド、ハイブリッドクラウドにおいて、属性に基づくマシン管理を行うことができる。そのほかにも、特定の組織およびインベントリー専用に容量を割り当てるTowerインスタンスグループ、遠隔地でのローカルジョブ実行容量に対応するTower遠隔ノード、各チームによるオートメーションとInfrastructures as Codeを実現可能にするSCMインベントリーのサポート、ユーザーによる独自のカスタム証明書タイプの定義やサードパーティー製の証明書との統合が可能になるブラガブル証明書などの機能を搭載。より柔軟な自動化を可能にしているとした。

Red Hat Ansible Tower 3.2の機能強化点

100ノードでの1年間のサブスクリプション料金は130万円

 Red Hat Ansible Engineは、エンタープライズ対応のAnsibleオートメーションコンポーネントの組み合わせが可能になる。明確なSLAや定期的な製品、セキュリティ、メンテナンスへのサポートなど、Red Hatサブスクリプションならではのベネフィットを提供できるという。「エンタープライズレベルでの保証やサポートが受けられるようになるのが特徴であり、プロビジョニング、DevOps、アプリケーションのデプロイメント、構成管理などに活用できる」(ネマー氏)。

 最新版のパージョン2.4では、Python3のサポート、YAMLをベースとした構成といったモダナイゼーションのほか、クラウドやWindows環境への拡張に加え、Tower向けの新モジュール機能も利用できる。スタンダード版の100ノードが年間サプスクリプション料金は65万円。また、Red Hat Ansible Tower 3.2との組み合わせによる年間サプスクリプション料金は169万円となっている。

 Red Hat Ansible Engine Networking Add-onは、Red Hatによる開発、保守、テスト、サポートが提供されるネットワーク対応した製品で、Arista EOS、Cisco IOS、Cisco IOS XR、Cisco NX-OS、Juniper Junos、VyOSの6つの代表的なネットワーキングプラットフォームモジュールを、24時間365日での完全サポートを提供する。新規または既存のRed Hat Ansible Engineのアドオンとして販売する(価格は問い合わせ対応)。

Red Hat Ansible Engne

Red Hat Ansible Engine Networking Add-on

国内企業でも手作業をAnsibel Towerで自動化へ移行する検討が進んでいる

 日本での販売戦略について、レッドハット プロダクト・ソリューション本部ビジネスデベロップメントの中村誠マネージャーは、「これまではオープンソースしか選択肢がなかったが、今回のAnsible Towerにより、エンタープライズレベルのサポートが提供されるようになり、安心して利用できる環境が整った。組織横断的な自動化の導入が注目を集めるなかで、Ansibleの適用が進んでいくことになる。Ansible Towerに対するニーズが顕在化するだろう」と述べた。

レッドハット プロダクト・ソリューション本部ビジネスデベロップメントの中村誠マネージャー

 「これまでの課題であった多種多様なネットワークシステムの自動化ニーズに対応できるようになった。そして、AWXプロジェクトにより、コミュニティの活性化が見込まれ、サードパーティーソフトウェアや既存システムとの連携などの利用ケースが増えることも期待している」(中村氏)

 また、2017年3月からスタートした「ITオートメーションディスカバリーセッション」は、これまでに約20社に実施した。多くの企業が、手順書をベースにした手作業による業務をAnsible Towerを活用した自動化へと移行する検討を開始しており、「通信、金融、電力、インターネット関連企業などの様々な業界において、検討や適用が進んでいる。現時点では具体的な導入企業の名前は明らかにできないが、10月20日に開催するレッドハットフォーラム2017で、なにかしらを公表できるだろう」(中村氏)とした。

 さらに、パートナーエコシステムの強化においては、パートナー各社の運用サービスやDevOpsサービスなどのソリューションにAnsible Towerを組み込むといった展開が増えているほか、認定トレーニングの受講が加速していることを示し、「3年間で200人にまで認定者を拡大するとしたが、すでに数10人が受講しており、目標に向けて着実に受講者が増加している」(中村氏)と説明した。

Ansibleの日本でのビジネス状況

グローバルにビジネス展開する大規模企業がAnsibleを導入

 なお、説明会ではAnsibleの導入事例についても紹介。金融サービスのHSBCでは、全世界40カ国以上、4万人の従業員が、30カ所のデータセンターを活用して業務を進めており、同じ作業を複数の場所で行っていた重複作業を、Ansible Towerなどを活用することで削減。共通インフラストラクチャコンポーネントの再利用率の改善や、世界中の従業員のコミュニケーションの増大への対応、コンプライアンス向上などにつなげたという。

 また、東南アジアの9カ国で展開しているタクシー配車サービスのGrabは、Uberとの競合が激化する一方で、システムの信頼性の問題を抱えていたという。Ansibleの導入によって、13万人のドライバーを対象にした効率的な運用が可能になるプラットフォームを構築。99.999%の可用性を実現するとともに、課題となっていたヒューマンエラーも解決したという。

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