「まとめて発表」という挑戦
ブラザーの大容量インクジェットプリンターの特徴は、「カートリッジ」方式を採用している点にある。
ブラザー販売の三島社長は「ファーストタンクの最大の特徴は、大容量インクカートリッジ方式であること」とコメント。「多くのユーザーが慣れ親しんでいるインクカートリッジ方式と同じ使い方ができるとして、高い満足度がある」とし、初めて大容量インクジェットプリンターを使用する人にとって最適な構造であることを強調する。
エプソンやキヤノンでは、ボトル方式を採用しており、それを「大容量インクタンク」などと表現している。ブラザーでは、カートリッジ方式までを含めて「タンク」というカテゴリーを形成することで、大容量インクジェットプリンター市場全体を拡大させていく考えだ。
ファーストタンクの名称も、それを視野に入れたもので、「大容量=ボトル」のイメージを、「大容量=タンク」として定着させることができるかどうかも、マーケティング上の重要な課題のひとつになる。
もうひとつ、ブラザーでは新たな挑戦をしている。
家庭市場をターゲットとした主力のA4インクジェットプリンターと、SOHOなどのビジネス向けとするA3インクジェットプリンターの発表を同じ時期にしたという点だ。
これまでは、A4インクジェットプリンターは年賀状需要を前提に、年末商戦向けに新製品を投入。A3インクジェットプリンターは、3月の年度末需要に向けて新製品を投入してきた。競合他社も同じスタイルだ。
「印刷可能なサイズが異なる2つの製品は、これまでは違うターゲットに向けて、違うタイミングでリリースをしてきた。だが、今年は市場環境が変化するなかで、同じタイミングで、統一したコンセプトとメッセージを発信する形で、新製品を投入することにした」とする。
A4インクジェットプリンターが「大容量」となったことで、家庭はもちろん、SOHOやSMBでも利用されることを想定。そうした背景から、一本化した形で製品を発表してみせたともいえる。
「新製品は、大型複合機に変わる候補として十分使える製品に仕上がっている。エンドユーザー向け発信を強化して、Eコマースや家電量販店でのシェア拡大に加えて、ビジネスルートでの販売を強化する。プリントボリュームの多いユーザーに満足してもらえるように、製品、サービスを届け、大容量タンク時代に向けて、ブラザーの存在感を高めたい」とする。
この連載の記事
-
第606回
ビジネス
テプラは販売減、でもチャンスはピンチの中にこそある、キングジム新社長 -
第605回
ビジネス
10周年を迎えたVAIO、この数年に直面した「負のスパイラル」とは? -
第604回
ビジネス
秋葉原の専門店からBTO業界の雄に、サードウェーブこの先の伸びしろは? -
第603回
ビジネス
日本マイクロソフトが掲げた3大目標、そして隠されたもう一つの目標とは? -
第602回
ビジネス
ボッシュに全株式売却後の日立「白くまくん」 -
第601回
ビジネス
シャープらしい経営とは何か、そしてそれは成果につながるものなのか -
第600回
ビジネス
個人主義/利益偏重の時代だから問う「正直者の人生」、日立創業者・小平浪平氏のことば -
第599回
ビジネス
リコーと東芝テックによる合弁会社“エトリア”始動、複合機市場の将来は? -
第598回
ビジネス
GPT-4超え性能を実現した国内スタートアップELYZA、投資額の多寡ではなくチャレンジする姿勢こそ大事 -
第597回
ビジネス
危機感のなさを嘆くパナソニック楠見グループCEO、典型的な大企業病なのか? -
第596回
ビジネス
孫正義が“超AI”に言及、NVIDIAやOpen AIは逃した魚、しかし「準備運動は整った」 - この連載の一覧へ