2019年1月には全機能が日本リージョンで利用可能に
Alibaba Cloudは“中国のクラウド”ではない、日本リージョンの全貌
2018年09月13日 13時00分更新
日本法準拠の東京リージョン、マルチAZ化の計画も
--まず、Alibaba Cloudの日本リージョンについて教えてください。
Alibaba Cloudは、2016年12月に東京のデータセンターでサービス提供を開始しました。東京リージョンは現在1つの可用性ゾーン(AZ)で構成されており、近々、マルチAZに拡張する予定があります。
東京リージョンは、アリババグループとソフトバンクの合弁会社SBクラウドが運営しています。アリババグループの黎明期に、ソフトバンクの孫正義会長が個人で多額の投資をして事業の拡大を支援したことがありました。その経緯から、日本でのAlibaba Cloud事業は、ソフトバンクとのジョイントベンチャーで展開することになりました。日本市場の顧客はベンダーに求めるサービス品質が高く、言語の壁もあるので、きめ細やかなサポートとローカライズができるように日本企業と組む必要があったのです。
SBクラウドが日本リージョンの運営主体となることで、日本円での支払いや、請求書払いといった日本の商習慣に合わせたサービス提供ができています。日本リージョンのお客様のデータは日本のデータセンター内で保管し、国外に出ることはありません。
Alibaba Cloudは“中国のクラウド”のイメージがあるためか、「中国にデータが送られるのではないか」「中国当局から要請に応じでデータを中国政府に開示しなくてはいけないのか」といったことを懸念する人がいます。これはまったくの誤解です。Alibaba Cloudのグローバル事業は、シンガポールに本社を置くAlibaba Cloud Internationalが行っており、さらに日本リージョンを運営するSBクラウドは日本企業です。日本リージョンは日本法に準拠し、裁判地は東京地方裁判所です。
--Alibaba Cloudの日本リージョンで利用可能なサービスはどのくらいありますか?
Alibaba Cloudは中国市場では200以上のサービスを提供しています。このうち約60のサービスが現在日本リージョンで利用可能になっています。ロードマップでは、2019年1月までにすべてのサービスが日本リージョンでリリースされる計画になっています。
Alibaba Cloudのサービスは、これまで、中国で開発・リリースされ、次に英語圏、その次に日本語にローカライズして日本リージョンに提供するというステップでした。そのため、新機能リリースから日本で利用可能になるまで半年ほどタイムラグが発生してしまっていたのですが、今後は「全世界同時リリース」を目指していく方針です。
以下の図がAlibaba Cloudの主要なサービスの一覧です。
IaaSとして、仮想サーバー(VM)の「ECS(Elastic Compute Service)」、GPUインスタンス「EGS(Elastic GPU Service)」、VMを自動スケールする機能「Auto Scaling」、オブジェクトストレージ「OSS(Object Storage Service)」、ブロックストレージ「Block Storage」、仮想ネットワークサービス「VPC(Virtual Private Cloud)」などがあります。
PaaSでは、Microsoft SQL ServerとMySQLをサポートする「ApsaraDB for RDS」やNoSQL DBサービス「Table Store」といったマネージドDBサービス、マネージドKubernetesの「Container Service」、サーバーレス(FaaS)基盤「Function Compute」、Hadoopベースの「MaxCompute」やMapReduce基盤の「E-MapReduce」といったビッグデータ処理基盤サービスなどがあります。
まだ日本では提供されていませんが、顔認識AI API「Face Recognition」、画像認識AI API「Image Recognition」といったAIサービス、Microsoft Power BIのようなデータ可視化ツール「DataV」というサービスも提供しています。
これらの中から、日本独自のサービスや特に日本市場でインパクトのあるサービスをいくつかピックアップして紹介します。
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