この記事は
「夏休みの自由研究として水耕栽培を始めてみた」
「夏の自由研究「水耕栽培」でセンサーを導入して室温や水温を計測」
「猛暑の影響が北海道にも 水温高くて水耕栽培が困難に」
「夏休みの自由研究『水耕栽培』でチンゲンサイを植えてみた」
の続きです。あわせてご覧ください。
いずれ地球は人類の住めない星となり、宇宙への脱出を迫られる時が来る。ならば今後の大幅な気候変動にも耐えうる野菜の栽培技術を獲得し、可能な限り地球上での延命を図るのが、今を生きる人類の使命ではないか?
と、かくも崇高かつ壮大なテーマを掲げなければならないほど、この夏はハードだった。そもそも夏は水耕栽培を始めるのに適した季節ではなかったのだ。そんな中SANEIの水耕栽培キット「ie・na」を買って始めた夏の自由研究も、そろそろ佳境。
どうにかタネをまき、翌日にはもう殻を割る個体が! 実にめでたい。そこで、この個体を「チンゲン1号」とし、成長を30日間追いかけることにした。芽が出たのは10~15cm程度のミニチンゲンサイで、うまく育てば30日で収穫できるらしく、そこで観察を切り上げる計画だ。うまく育てば。
実は由緒正しい正統派の製品だった
さて、うっかり書くのを忘れていたが、タネまきの前にキット付属の液体肥料をタンクに注入した。水耕栽培なのだから、ここが一番重要。成分表によるとこの液体肥料は、窒素、カリウム、マグネシウム、マンガン、ほう素などで成り立っているようだ。植物が土から吸い上げる成分を、これで網羅しているのだろう。500倍に希釈する2液式で、減ったら継ぎ足す必要もあるため、専用のじょうごも買ってきた。
ところで、釈の際に「おやっ?」と思ったことがふたつ。ひとつは液体肥料のパッケージに「協和株式会社」の名前があったこと。協和は、植物の根に酸素を供給する水耕栽培法「ハイポニカ農法」を提唱した、故・野澤重雄さんが、1970年代に起業した会社。大規模水耕栽培の源流のような会社だ。
協和は、家庭用にも「ホームハイポニカ」という水耕栽培キット、そして「ハイポニカ液体肥料」という2液式肥料を売っている。そういえばie・naのパーツにも「ハイポニカ」の文字があって、調べてみたら同じパーツが協和のホームハイポニカにも使われていた。
確認のため、協和のハイポニカ液体肥料を買ってみると、生産業者保証票としてA剤に「生第83282」、B剤に「生第83283」とあった。これは肥料の生産者が農水省から交付される番号で、成分とともに製品への表示が義務付けられているもの。この番号と成分表示、使い方もie・naの付属品と同じ。これはもうパッケージデザインが違うだけで、中身は同じものと考えていい。
ちなみに2液式の肥料、原液で混合してはならない。リン酸とカルシウムが結合して、植物が吸い上げられなくなるから。というので試しにやってみた。もちろん爆発するようなことはなかったが、確かに白い沈殿物が皿の底に固まっていた。