まだまだ現役の戦闘力!
フェアレディZ NISMO
快適で速い、これは技術として正しいのだけれど、いっぽうで退屈さを感じるのも事実だ。スポーツカーには、血が通った部分が欲しくなるもの。それを満たしてくれるのがフェアレディZ NISMOだ。
現行のフェアレディZが登場して10年近い年月が経つ。もっともフェアレディZは1969年に誕生したので、50周年を迎える来年は新型が出るのでは? と噂は聞こえているが……。
今回試乗したフェアレディZ NISMOは2014年7月にマイナーチェンジしたモデル。ノーマルに比べてボディーサイズは全長が70mm、全幅が25mm拡大し、よりグラマラスになっている。
エンジンは3.7リットルの自然吸気V6ユニットVQ37HR。335馬力という心臓は、GT-RのVR38DETTの格下と扱われることもある。しかし、等長排気システムで武装しているせいか、そのエキゾーストノートは甲高く、吹け上がりは笑ってしまうほどにリニアで心地よい。ターボエンジン全盛時代にこの大排気量NAエンジンを搭載するというだけでフェアレディZ NISMOを買う価値は十分にある。
フェアレディZの素晴らしいところは、室内の演出だ。正直言えば、今風ではない。特にセンターコンソールのあたりはボタンがいっぱいだ。一方で、GT-R NISMOに比べてメーター類は見やすく、車内も本革が多用されて高級感がある。後部座席はないものの、大容量ラゲッジスペースはGT-Rよりも使いやすいだろう。なによりハンドル中央にあるZの文字が、男心をくすぐる。
乗り味はGT-R NISMOよりも硬派だ。ずっしり重く、硬い。さらにドライバーが何とかしなければならないことが多く、ちょっと忙しい。バンプがあれば盛大に跳ねるし、脚が硬いなぁと思わせる。しかし「楽しい」と思わせる何かが、このフェアレディZ NISMOにはある。それはフロントのグリップ感が強く、ハンドルを通して手に伝わってくる確かさであったり、甲高いエキゾーストだったりといった五感の部分だ。スポーツカーを運転している、という気分になるのは断然フェアレディZ NISMOだ。こんなに楽しい乗り物が日本にまだあったことがうれしくなる。筆者としてはGT-R NISMOの購入資金1800万円あったら、629万3160円でこの車を買い、残りをタイヤとガソリンで使い切りたいほどだ。
乗って快適、走って楽しい
NISMOのコンプリートカー
もちろんめっぽう速い車であることは間違いないのだけれど、単なる速い車では終わらせていないところがNISMOコンプリートカーの凄さ。ドライバーが心地よく、楽しいと思わせるツボをNISMOが心得ている。レース屋が作った速い車というだけではなく、車好きが作った楽しい車なのだ。
あまりよい言い方ではないがNISMOコンプリートカーは「女受け」はしないだろう。一般道でも持て余すスペックは恐ろしさを感じる。だが、それでいいと思う。この硬派な乗り物が長く続くことを祈ると共に、方向は変えずに続いてほしい。赤いラインにNISMOの文字、速さの象徴なのだ。
この連載の記事
-
第483回
自動車
【ミニバン売れ筋対決】ホンダ「フリード」とトヨタ「シエンタ」の良いところと微妙なところ -
第482回
自動車
これがBMWの未来! フラッグシップEVの「iX」は乗り心地良すぎで動くファーストクラス -
第481回
自動車
アルファ・ロメオのハイブリッドSUV「トナーレ」はキビキビ走って良い意味で「らしく」ない -
第480回
自動車
独特なデザインが目立つルノーのクーペSUV「アルカナ E-TECH エンジニアード」はアイドルも納得の走り -
第479回
自動車
レクサスのエントリーSUV「LBX」は細部の徹底作り込みで高級ブランドの世界観を体現した -
第478回
自動車
レクサスの高級オープン「LC500 コンバーチブル」は快適さのその先を教えてくれる -
第477回
自動車
BMWの都市型SUV「X4」は直6エンジンならではのパワフルな走りがキモチイイ! -
第476回
自動車
最新のマツダ「ロードスター」は乗った誰もが乗り換えを検討するレベルのデキの良さ -
第475回
自動車
EV=無個性ではない! BMWのEV「iX3」は剛性ボディーが魅力のミドルサイズSUV -
第474回
自動車
ルノーのコンパクトカー「ルーテシア E-TECH エンジニアード」は軽量でパワフルでスポーティー! -
第473回
自動車
ホンダの大人気ミニバン「FREED」に乗ってわかった5つの良くなったポイント - この連載の一覧へ