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松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析 第7回

2018年第3四半期決算を読む:

アップル時価総額1兆ドル突破の理由と懸念

2018年08月07日 09時00分更新

文● 松村太郎 @taromatsumura

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懸念材料はトランプ政権

 アップルは今回の決算の電話会議の中で「継続的なドル高」が逆風になっていると指摘しました。アップルの決算は米ドルで計算され、米国外の売上高は6割に上ります。

 たとえば日本で10万円のiPhoneが売れた場合、1ドル100円なら1000ドルと計算できますが、1ドル110円の場合、909ドルになってしまいます。一方、1ドル90円の場合、1111ドルの計算になります。

 アップルは製品の刷新時などに為替を反映した価格調整をするため、ドル高になれば1000ドルのiPhoneを12万円にしなければならなず、ドル安になれば逆に9万円に値下げができます。つまりドル高の場合、米国外の価格はより高く設定され、ドル安なら安くなる。ドル安の方が米国外での売上を高められるわけです。

 この点は、たびたび「ドルが高すぎる」と発言もしくはツイートして、為替に冷や水を浴びせている米国のドナルド・トランプ大統領と同意見かもしれません。しかし決定的に違うのが米中貿易戦争です。

 ティム・クックCEOは電話会議で「関税は消費者にとっての税金だ」と指摘し、リスクを高め予期せぬ事態を引き起こすとして、冷静さを取り戻すよう促しています。同時に、交渉がまとまることに対しては楽観視する考えも示しました。

 米国でデザインし、アジアを中心とした国々からパーツを集め、中国で組み立てて、世界中で売りさばく。アップルのサプライチェーンに米国と中国は欠かせない存在。今後の動き次第で、ウォール街のアナリストが言うとおり、アップルの株価はここから「フリーフォール状態」になることも考えられるのです。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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