今回のことば
「パナソニックの寄贈によって、無電化の村に電気が提供されるようになった。この村の子供たちのためにもパワーサプライステーションを大切に使い、長く維持させる責任が私たちにはある」(ミャンマー イワラジ管区カレン民族のガッシモミャンミャトゥ民族大臣)
無電化村に電気を届ける「無電化ソリューション」
パナソニックが、ミャンマーの無電化村であるベービンセンナ村に「無電化ソリューション」を寄贈した。
無電化ソリューションは、最大2.88kWの発電容量を持つパナソニックのHIT太陽光電池パネル12枚と、最大蓄電容量17.2kWとなる24台の蓄電システムで構成する「パワーサプライステーション」や、出力15Wの太陽電池パネルと容量3100mAhの37Whニッケル水素電池。5Wの直管形LEDランプおよび1.5Wの電球形LEDランプで構成する「エネループソーラーストレージ」を組み合わせて提供するものだ。
パナソニックが2018年3月に創業100周年を迎えたことを機に展開しているプロジェクトのひとつで、すでにインドネシアに寄贈。今回のミャンマーに続いて、年度内にはケニアにも寄贈する予定だ。
パナソニック CSR・社会文化部の福田里香部長は「電気がないために教育や医療が遅れたり、安全が確保できないといった社会的課題の解決にもつながる。ミャンマーのベービンセンナ村への無電化ソリューションの提供によって、子供たちの教育環境を向上させたり、生活の質を高めたりすることができる」と語る。
ベービンセンナ村は、エーヤワディ地方マウビン県パンタノ群にあり、ミャンマー最大の都市であるヤンゴンからはクルマで4時間をかけて移動。さらに、そこから船に乗り換えて1時間。全長約2000km以上に及ぶエーヤワディ川を上流に向かい、支流となるシュエーラウン川に入って到着する無電化村。片道5時間もの行程になる。
ここに住むのはカレン族と呼ばれる民族で、少なくとも今後5年間は政府による電気の供給が行われない地域だという。
パナソニックの福田部長は、約1年前から調査や話し合いを進めてきたことを示しながら「ベービンセンナ村には村落委員会が存在したり、村の中心となるベービンセンナ ブランチ高校を分校から本校に昇格させるための活動をしたり、さらには日本のNPOとも連携を取るなど、しっかりとしたコミュニティーが形成されているのが特徴。コミュニティー活動を通じて、持続的な活動が行えるベースを持っていることは重要な判断要素になった」とする。
電気を活用することで村を発展させたいという意欲の強さも感じたという。
パワーサプライステーションは、ベービンセンナ ブランチ高校に設置。600人の生徒が使う教室や、受験のために集中的に勉強をしている10年生(日本の高校1年生)が住む寮の照明などに利用する。
寮に住む生徒は従来のディーゼル発電に比べて、照明が明るいこと、夜9時まで勉強ができるようになったこと、さらにディーゼル発電の騒々しい音が無くなり、集中して勉強ができるようになったことなどをメリットにあげた。
一方、エネループソーラーストレージは寄贈された100台のうち、90台を一般家庭に貸与。一家庭あたり3ヵ月ずつ利用し、それを繰り返すことで、1年後には村の約400戸の全家庭でほぼ一回ずつ利用できるようになるという。
最初のグループとして、すでに6月からエネループソーラーストレージを使用している元教員の男性は「午後10時過ぎまで家族で団らんするときに明るくできる。また、仏壇も明るくできいつでもお参りできる」と語る。
実はエネループソーラーストレージは、ミャンマーの人々の声を反映して開発された経緯がある。今回の寄贈プログラム以外に、すでに1万5000台以上のエネループソーラーストレージがミャンマーに寄贈されている。
2本のLEDランプのうち、直管形LEDランプは人が集まるところで利用することを想定。電球形LEDランプは、仏教徒が9割を占めるミャンマーの人たちから、仏壇で利用したいという要望にあわせて用意したという。ひとつの電源から、2つの用途に利用するというのは、パナソニックの創業者である松下幸之助氏が創業期に大ヒットさせた「二股ソケット」と同じ発想だ。
男性は「できれば3ヵ月間を過ぎても使いたい」と、明かりのある生活を楽しんでいる。
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