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声に出していいたい、激光XII号と2000兆ワットレーザー! レーザー核融合の現場を見る

2018年07月21日 12時00分更新

文● 林 佑樹(@necamax

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レーザー核融合実験をする
チャンバーⅠはどうなっているのか?

 では、チャンバーIを見てみよう。HIPERは1方向からだったが、こちらは12方向からとなり、実験チャンバーエリア内のラインは、さらにダイナミックなものとなっているが、基本的な仕様はチャンバーIIと同様なので、入射方向が多い分、ラインが複雑といった認識でいいだろう。

チャンバーⅠの実験エリア。チャンバーⅡの実験エリアと比較するとダイナミック。写真中央あたりにチャンバーⅠがあるというのは、ラインの接続先からもわかるハズだ

ペレットを上から下ろす部分はチャンバーIIと同じ

斜め下からもラインが接続されている

中性子が発生するため、シールドもアリ。また内部には後述するMANDALAもある

チャンバーIに向かう途中にあった看板。「集光照射(I)室」が旧名のようだが、文字通りなのでこちらのほうがイメージしやすいような

 チャンバーIは取材時、ちょうど作業中であり大学院生たちが機器の取り外しを行なっていた。チャンバーIIと比べると保温目的のシートが巻かれており、外観はややわかりにくい状況だったが、チャンバーIIと同じなので、イメージはしやすいはずだ。

 核融合が起きると中性子が生じ、それを測定することで核融合反応の様子がわかる。今回、撮影することはできなかったがMANDALA(Multiple Arrayed Neutron Detector at Large Area)がそれを担っており、960ユニットでもって中性子のスペクトルを得る仕様だ。

 ちなみに、中性子がシンチレータを通ると光に変換され、さらにその光を電気信号に変換することで情報を得られる仕組みとなる。

チャンバーI

チャンバーIIにあった脚はすべて保温シートで覆われていた

あちこちに観測窓がある

ふと足下を見たら、量販店でおなじみのメーター付き電源タップが

「6」「7」の文字が見える。これは入射するレーザーの識別用と思われる

 チャンバーⅠ内で核融合反応が起きると、強烈な輝度の緑色の光が生じる。実験エリア内が思いっきり緑になるほどで、以前、レーザーがペレットに当たる瞬間をコンパクトデジタルカメラで撮影したところ、イメージセンサーが焼けてしまったそうだ。そのためパンフレット用の写真は、弱いレーザー光を反射させて撮影したとのこと。

チャンバーI内部

ペレットのサイズは約500ミクロン。人間の髪の毛が1本あたり100ミクロンほどなので、実サイズはイメージしやすいハズ。最初は320mmのレーザーが、ここに集束されるわけだ。プラスチック製で球体のなかに試料が混入されるほか、現状ではコーンも使用している。1個あたり2時間かかり、すべて手作業。バリ取りもレーザーを活用だそうだ

激光XII号のレーザーで球体側から試料を圧縮し、コーンからLFEXからのレーザーで加熱といった流れになる。コーンが必要なのはプラズマ内をレーザーが進めないため、進路確保のためだ

ちなみに電源部は、激光XII号は本数が多いためか、コンデンサが多い

LFEX用電源は意外にもコンパクト。システム的に見ても、コンパクトでハイパワーの実現はLFEXのいいところだ

 レーザー科学研究所のレポートをお送りしてきた。レーザーの発見からまだ1世紀も経過しておらず、また身近でもあるレーザーを高出力すると、レーザー核融合以外にも活用幅があり、半導体に関わる実験はASCII読者の場合は水と同じくらい密接であるため、より身近だ。

 2018年6月18日に発生した大阪府北部地震では、アライメントがズレるという被害を受けているが、人的な被害はなく、研究再開に向けて再調整を進めている。

 2018年の一般公開はすでに終了しているが、2019年以降の5月の一般公開に足を運んでみてほしい。また院生向けの公開は8月9日に行なっているとのことで、レーザーの世界に行きたい人はチェックしてみよう。

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