米国R Softwareとパートナー契約、アジアで70万人の開発者利用を目指す「Rakuten RapidAPI」
楽天、世界最大級の開発者向けAPIマーケットプレイス提供開始
2018年07月13日 07時00分更新
楽天は2018年7月11日、米国R Softwareとの独占的な戦略パートナー契約に基づき、共同でAPIマーケットプレイス「Rakuten RapidAPI」を提供開始した。すでに8000以上のAPIラインアップを持つ同サービスをアジア地域で事業展開し、「2022年までに70万人以上」のアプリ開発者が利用するAPIハブを目指す。
発表会には楽天とR Software、楽天コミュニケーションズの代表者のほか、ゲストとして日本マイクロソフトや日本IBMの事業責任者らも出席し、日本国内およびアジアにおけるAPIエコノミーの活性化に対する期待を述べた。
「APIプロバイダー」「アプリ開発者」のそれぞれが抱える課題を解消する
Rakuten RapidAPIは、R Softwareが提供するRapidAPIをベースに、日本およびアジア向けにローカライズしたAPIマーケットプレイス。R Softwareが技術面で開発や運用を担い、楽天コミュニケーションズが日本/アジアへの事業展開を推進する。楽天はマーケットプレイス事業における知見を提供するとしている。
R Softwareでは2016年から「RapidAPI」(rapidapi.com)を提供してきた。同社 創設者兼CEOのイド・ジノ氏によると、最初は「人気のあるAPIのオープンソースコレクション」としてスタートした同サイトだが、アプリ開発者とAPIプロバイダーの双方から人気を集めて「世界最大のAPIハブになった」(ジノ氏)。現在の利用開発者数はおよそ60万人、また数千のAPIパートナー(APIプロバイダー)が8000以上のAPIを提供している。
RapidAPIを利用する開発者の地域割合を見ると、南北アメリカが36%、アジアが28%、中東欧が17%、EUが15%となっている。今回のRakuten RapidAPIは、楽天とのパートナーシップの下、アジア地域におけるさらなる利用拡大を図る取り組みとなる。
一方、楽天グループではこれまで「楽天市場」や「楽天トラベル」といった同社WebサービスのAPIを、社外のアプリ開発者向けに公開してきた。楽天 副社長執行役員で楽天コミュニケーションズ 会長兼社長の平井康文氏は、「楽天では現在およそ450のAPIを提供しており、月間コール数(2018年6月)は166億回に達する」と説明する。このコール数は前年同月比で47%もの増加であり、日本国内におけるAPIエコノミーの盛り上がりが感じられる。
平井氏は、楽天としてAPIを提供してきたことでAPIプロバイダーとアプリ開発者の双方に課題が存在することに気づき、そこに新たなビジネス機会があるのではないかと考えたと語る。APIプロバイダーは「開発者へのリーチ」「課金/請求手続き」「パフォーマンス管理」の課題解決を、また開発者は「必要な機能を持つAPIの検索」「複数APIの統合利用/管理」「API利用コストの一元管理」の課題解決を求めており、それを実現しうるのが大規模なAPIマーケットプレイスだった。
Rakuten RapidAPIでは、今年2018年から日本市場での、また来年2019年から英語圏アジア地域での展開をスタートし、まずは2022年に70万人以上の新規利用開発者を獲得することを目標としている。将来的にはさらに対象国/地域を拡大していく予定。
また平井氏は、APIプロバイダーの拡大についても強い意欲を示した。まずは楽天自身が提供する約450のAPI群をRakuten RapidAPIで提供するほか、日本発のAPIプロバイダーがグローバル展開する際のプラットフォームとしての活用にも期待しているという。さらに、米国などと比べて取り組みが大きく立ち後れている行政(国や自治体)のAPI活用についても、民間におけるAPIエコノミーの発展と同様に重要視していると説明した。
発表会には日本マイクロソフト執行役員 CTOの榊原彰氏、日本IBM執行役員 ワトソン&クラウドプラットフォーム事業部長の吉崎敏文氏もゲスト出席し、それぞれ同サービスに対する期待を述べた。両社のAIサービス系APIも同サービスを通じて提供されている。
アプリ開発者が必要なAPIを簡単に検索、利用できるサービス
Rakuten RapidAPIではAPIプロバイダー向け、アプリ開発者向けのそれぞれに多数の機能が提供される。なお、画面インタフェースは日本語にローカライズ(日本語/英語の表示切替が可能)されているほか、APIの利用料金でも日本円換算額が表示される。
APIプロバイダーは、多数の開発者が集まるマーケットプレイスでAPIを簡単に公開できる。料金設定が柔軟にでき(無料、従量課金型、フリーミアム、有料など)、ユーザー認証/キー管理、ドキュメント管理、サポートポータル、請求管理などの機能が提供される。
APIプロバイダー向けのダッシュボードでは、APIコール数や利用ユーザー数、月別売上、顧客層分析といった内容が可視化される。
一方で開発者は、8000を超えるAPIラインアップから、自身のニーズに合ったAPIを簡単に検索、購入できる。個々のAPIページには機能概要やドキュメント、料金のほか、テストツールも統合されており、その場でAPIの挙動を確認できる。また単一のSDK(RapidAPI Connect)をインストールすればすべてのAPIが利用可能になる。
開発者向けダッシュボードでは、利用している複数のAPIに関するステータス(コール数やエラー数、レイテンシなど)や利用状況(利用料金など)を一元管理できる。また、多数のAPI利用料金を一括管理できる画面も用意している。API利用料金は同サービスから月1回まとめて請求され、請求書払いにも対応する。