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2020年の「ディープラーニング」を見つけるべき スタートアップと識者が語ったAIの現状

世界を驚かす「AIスタートアップ」は日本から生まれるか?

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 成長を続けるスタートアップ。その実践者の経験や事例などを紹介し、界隈の情報や、次のアクションへのヒントを与える場として「STARTUPS SUMMIT TOKYO」が6月22日、東京ミッドタウン日比谷 BaseQにて開催された。

 今回紹介するスペシャルディスカッション「スタートアップ×AI-世界を驚かす「AIスタートアップ」は日本から生まれるか?」では、これまでAIを活用してきた経験則や、今後の展望などについて、研究者、技術者、経営者の立場からの生の声を届けるトークが行なわれ、AIを活用するビジネス分野などが提案された。

 当ステージは、モデレーターを東洋経済新報社 常務取締役 デジタル事業本部長の田北浩章氏が務め、AIプラットフォームの先駆者であるABEJA 代表取締役社長の岡田陽介氏、将棋AI「Ponanza」開発者のHEROZ リードエンジニア 山本一成氏、AI研究の第一人者である国立情報学研究所・総合研究大学院大学 教授、東京工業大学 特定教授の山田誠二氏が登壇。それぞれの立場を踏まえた、さまざまな情報が提供された。

満席の会場で4時間以上充実したセミナーなどが開催された「STARTUPS SUMMIT TOKYO」

オープンイノベーションになっていない現状

 スペシャルディスカッションでは、まず日本のAIの現状について、登壇者がそれぞれの足跡をたどりながら解説した。

 「2012年に革命的なことが起きているのに、日本ではほとんどの人がついてこられなかった」と語る岡田氏は、誰でも論文を読める状態にあったのになぜ勉強しないのかが謎で、日本が遅れをとった原因はそこにあると指摘した上で、日本が注力していくべき領域について紹介した。

ABEJAの代表取締役社長を務める岡田陽介氏

将来に向けて注力すべき領域

 AIの進歩によって生まれる、イノベーションの余地が大きい領域を示した岡田氏は「これまでは技術的に超えられないビジネスの壁があり、簡単に跳ね返されていたが、ディープラーニングの登場によってそれが超えられるようになってきた。これからはその部分に注力していくことが重要」だと提言。

 その上で日本の現状について、「経営者が技術革新をキャッチアップできていないためにどんどん遅れていっている。利益が出るのに投資されておらず、人材獲得もできていない。まったくオープンイノベーションになっていない」と厳しく指摘した。

ディープラーニングでビジネスの壁を超えられると提言

日本の現状について厳しい指摘もなされた

人間がAIを受け入れる瞬間

 将棋AI「Ponanza」の開発者である山本氏は、10年開発しているという「Ponanza」の歴史をたどり、AIがどのように受け入れられてきたかを解説。

 5年ほど前、「Ponanza」がプロ棋士に勝ってしまったとき、会場が暗い雰囲気になり、泣いている人までいたと振り返った山本氏は「当時、AIが人間を上回ることはあってはならないことだった」と語った。しかし、「AIは指数的に成長していくものなので、レベルがどんどん上がり、翌年もやはりプロ棋士に勝利した。どんな雰囲気になるか心配していたが、意外に「負けちゃいました」というようなライトな感じだった。それ見て、AIを受け入れる人間の気持ちを見た気がした」とそのときの様子を振り返る。

HEROZ リードエンジニアの山本一成氏

AIがプロ棋士に初めて勝利した電王戦は、終わったあと、反省会のような雰囲気だったと語る

前年の様子がウソのようにライトな感じとなったその翌年の様子

 「我々の脳は限定されていて、コンピューターネットワークのように連携できないし、拡張もできず、大きくなることはない。ところがAIはあっという間に成長する」と語る山本氏はその成長を巨人のごとき身長にたとえ、「10年前、身長が1~2mくらいのAIに対して強くなったじゃないくらいに思っていたのが、去年は4mくらいになっていて名人に勝った。そしていまや8mにもなろうとしていて、戦うというレベルではなくなっている」と解説。ディープラーニングを取り入れてものすごく進化した「Ponanza」について、「その成長の具合に驚いている」と述べた。

AIを活用するのに向いている分野を考える

 人工知能学会の会長も務める山田氏は、現在の人工知能は期待の頂点にいると語り、期待軸と時間軸による現在のAIの状況を示した。そして「画像処理に強いディープラーニングは現在、画像だけでなく自然言語処理やキャプションの生成などに使おうとしているが、無理そうなやり方をしているという印象を持っている」と自身の見解を示した。

国立情報学研究所 教授、総合研究大学院大学 教授、東京工業大学 特定教授の山田誠二氏

期待軸と時間軸における、現在のAIの位置

 「AIは限られた範囲では人間を超えることができているが、少し広い世界にいくだけでズレが生じるという点を認識した上で使っていただきたい」という山田氏はその例として自動運転について語った。

 「AIが有効なのはクローズな世界といわれていますが、外界からさまざまな情報が出入りする世界は苦手。そこから考えると自動運転が難しいというのは直感的にわかる。うまくいっているのはハイウェーなど、起こることが予測できる世界だが、それでも事故が起きている。そのようにダイナミックなことを取り入れることが難しいAIだからこそ、人間としては、いかに狭く、スタティックな世界にAIを投入するかを考え、その成果をビジネスに結びつけるが大事」とAIの活用についての視点を提示した。

 そこで、モデレーターの田北氏からAIに向く分野を尋ねられた山田氏は「ブルーオーシャンと思われる分野はたくさん参入しているので、いまレッドオーシャンと思われているが、実はAIの導入の仕方によって効果が上がる分野で、かつ市場が大きいところどう見つけるかが大事」と回答。これに対して岡田氏は「ディープラーニングは大量のデータを集めないといけないので、データが大量に集められるフィールドでやらないと厳しい。小売りや製造などのAIの得意領域において、そういうかけ算をしながら事業領域をしぼるのがいいと思う」と補足した。

 さらに岡田氏は「ディープラーニングは大量のデータを集めて、そのデータを教師用データに変換、GPUに投入してモデルを作って出力し、その結果に対するフィードバックを回すというシンプルなことをしているだけ。この仕組みをどれだけ自動化できるかが重要で、そこにすごく価値がある」とその仕組みを簡単に説明した上で、「事業軸や技術的な軸で事業のセグメントを絞りつつ、どのような仕組みを作れば、勝手に賢くなるAIができるかを考えるのが大事だ」とAIの活用についてのヒントを提示した。

ディスカッションの様子。それぞれが違う立場からAIについて語り、幅広い情報が発信された

 最後に、AIを使用する際に押さえるべき点についてたずねられた登壇者のみなさん。山田氏は「ディープラーニングはAIの技術のごく一部でしかない。ディープラーニングの他にもたくさんの技術があるので、内容によっては他の技術のほうがいいこともある。本当に機械学習が必要なのかを考えて、広い視野でみてほしい」と述べ、山本氏は「なんでもかんでもAIに頼ると悲しい結果になることになる。経営者と現場のギャップもあるし、その点を理解した上で使うべき」と語った。

 岡田氏は「2012年のディープラーニングで今を探すのが重要で、2020年のディープラーニングを見つけていくのが経営的には大事。とにかく技術に触れて、結びつけていくことで社会がよくなっていく。2020年のディープラーニングがどのような姿なのかを想像しながら一緒に見つけていきましょう」と語り、「アメリカよりも早くそれを実装したい」と会場の方々に語りかけ、スペシャルディスカッションは終了した。

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