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松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析 第3回

アップルストアの閉店・改装が世界中で相次いでいるワケ

2018年07月10日 09時00分更新

文● 松村太郎 @taromatsumura

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■Apple Storeの歴史と、米国での位置づけ

 Apple Storeは世界で500店舗以上が存在しますが、その半数以上は米国内にあります。日本は全国に展開する家電量販店にアップル製品の販売・サポートコーナーを設けることで、販売網の充実ができましたが、米国は基本的に自前の販売店で展開してきました。

 2001年5月、Apple Storeはバージニア州タイソンズコーナー、そしてカリフォルニア州グレンデールの2店舗から出発しました。1997年にCEOに復帰したスティーブ・ジョブズ氏は、販売のテコ入れとして、Macを扱う電気製品チェーンと連携をしていましたが、独自の小売店を整備することでよりよい顧客体験の提供を目指すようになります。

 1999年、ジョブズ氏は小売店創設チームを構築。サンフランシスコ発の世界的カジュアルブランドとなったGAP元CEOのミラード・ドレクラー氏、米国における大規模小売店ターゲット副社長ロン・ジョンソン氏らを招き、クパティーノ本社近くの倉庫内に秘密裏に模擬店を作ってテストしてきたそうです。

 現在の米国の小売店の現状からすれば、Apple Storeは大成功だったと言うべきでしょう。米国の小売店の床面積あたりの売上高は、小さな店で高額商品を扱う宝飾店を上回る成果を挙げています。

 Apple Storeはどんな電器店よりもiPhoneやMacのアクセサリの品ぞろえが良く、オンラインストア史上主義となった米国においても、小売店としての魅力を放ち続けています。筆者の住んでいる街バークレーにも、一番おしゃれなショッピング街に路面店のApple Storeがあります。

 そここからクルマで15分走ったあたり、ピクサーがスタジオを構える海沿いの街エメリービルにもApple Storeがもともとありましたが、こちらは新しいスタイルで新装オープンしました。

 都市圏の中では15~30分程度で店舗にアクセスできるよう整備されており、日本とは異なる身近なお店となっているのです。

 最近でも、おもちゃ専門チェーン・トイザらスの倒産にみられるように、米国の小売業の崩壊はアマゾンをはじめとするオンラインショッピングの影響だと考えられています。

 しかし、現場は異なる視点を持っていました。

 米国の靴を専門とする小売チェーン・フットロッカーは、オンラインマーケティングの一大イベント「Adobe SUMMIT 2018」のセッションで、「アップル、ナイキなどの人気のあるブランドが軒並み直営の小売店を展開したことが、オンラインショッピング以上に最も脅威だった」と結論づけています。ブランドが顧客と直接つながることに、専門の小売店は勝てないといいます。

 そのパワーを早期に見抜き、実践してきた姿がApple Storeそのものなのです。

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