2018年5月29日、構造計画研究所は同社が国内で販売代理店を務めるSendGridのイベント「Send with Confidence」を開催した米SendGridのエンジニアによる講演もあり、簡単そうでなかなか難しい「メールを確実に届ける」という処理について考え直すいい機会となった。
メールの役割は顧客とのコミュニケーションチャネルに変わった
冒頭、挨拶に立ったのは2013年から国内でのSendGridの事業をリードしてきた構造計画研究所の中井勘介氏。同氏は、まずはクラウド型メール配信サービスのSendGridがAirBnBやUber、ebayといったグローバル企業のほか、ChatWork、Wantedlyなど国内企業にも採用されていることを挙げ、「SendGridからのメールは毎日あなたにも届いているはず」とアピールする。
その上で、SlackやFacebook Messenger、LINE、チャットワークなどメッセージの時代でも、メールはいまだに重要なインフラとして拡大を続けていると説明。「2020年には世界中のメールトラフィックは1日で3200億通くらいにまで到達すると言われている。体感でしかないけど、メールは今でもすごく使われているツール」と中井氏は指摘する。
また、好きなサービスやブランドとコミュニケーションをするツールとしても、実はメールが一番人気が高いという調査もある。さらにサインアップした際も、品物を購入した際も、メールが送られてくる。「メールは一番多くの人にリーチできるデジタルメディア。コストも安価で、ROIも高い」と語る中井氏は、メールの役割が1対1のやりとりから顧客とのコミュニケーションチャネルに変わっただけと指摘する。
とはいえ、実はメールを確実に届けるのは難しくなっている。いわゆるスパムメールを防ぐため、安定した送信環境や、受信側のフィルターをきちんと通過できるよう設定や仕組みが必要になる。「正当なメールですら20%は受信箱に届かないという調査もある。悪意のあるメールを送受信しないよう、みなさんがんばっていますが、本来サービス事業者は価値を生み出すビジネスにフォーカスすべき」(中井氏)ということで、面倒なメール配信の作業はすべてSendGridに任せるべきだと主張する。
SendGridは高い到達性、月間400億通を配信できる拡張性、豊富なノウハウを抱えた専門性などが大きな強み。オンプレミスでメール送信していたeBayは、SendGridに移行。ユーザーの行動にあわせたメールを送信し、開封時に行動にあわせて最新のコンテンツをレンダリングしているという。「メール配信の頻度を下げたのに、CTRとメール経由のコンバージョンを大幅改善している事例」と中井氏は語る。また、構造計画研究所もSendGridの高い専門性を引き継いだサポートや日本円での決済を提供しており、日本で安心して使える環境を用意しているという。
メール配信のプロが語る確実に送るためのノウハウ
続いて登壇したのはメール配信のプロフェッショナルとも言える米SendGridのシニアEメールデリバリーコンサルタント セス・チャールズ氏。毎月400億通という配信量、全世界のユニークなアドレスの約半分にリーチしたというSendGridのデータをひもとき、メール配信のトレンドを披露した。
まずグローバルでの配信は、Gmailは5割を超え、その後Yahoo!、Microsoftが続く。日本では約58%がモバイルでメールをチェックしているため、モバイルのエキスペリエンスが重要だと指摘する。「特にiPhoneの利用率が高く、この6ヶ月でも数%上がっている。またGmailの利用率が非常に高い」とチャールズ氏は語る。
SendGridの日本でのメール到達率は99%を実現している。日本の主要なドメイン宛の送信実績に対し、チャールズ氏は「NTTドコモではバウンス率が2%と高い。北米で2%のバウンス率はレピュテーションに影響を与えるレベル。これはファイルサイズが大きい、シンタックスが正しくない、という理由が考えられる」と指摘する。一方で、ソフトバンクは99%の到達率だが、開封率がきわめて低いという傾向があるという。また、送信から受信までの時間は平均5分だが、送信先によっては30分かかることもあるという。
では、どうすればきちんと届くのか? これについてチャールズ氏は、「到達率を上げられるといった『魔法の杖』はない」と語る。とはいえ、いくつかのノウハウはあり、「深夜や未明の送信ボリュームを下げる」「User Unknownのハードバウンスの割合には注意する」「コネクションやスループットの限界に気をつける。正しいIPアドレスを用いる」「ファイルサイズをモバイル環境を意識する」「エンゲージに至ったタイミングを意識してグループ化する」などが重要だという。
また、モバイルでの利用環境に関して調べると、ユーザーは1日に85回くらいデバイスをチェックしているという。また、デバイスに応じたレスポンシブデザインが重要で、しかもプラットフォームに合わせて最適化させることが必要だという。その他、チャールズ氏は、「Gmailの受信メールに送信元ロゴが載っているのは効果的」「件名や送信タイミングは必ずパーソナライズする」「送信元ドメインはDMARCレコードときちんとマッチさせる」など開封率を上げたり、到達性を上げるための工夫を披露した。
イベントの後半は、SendGridでの配信やシステム運用の工夫や、国内ユーザー事例も披露され、メール配信に関するさまざまなノウハウがたっぷり吸収できる内容になっていた。