iOSとの融合を否定し、“当面は”安泰と思われるmacOS
AppleがWWDC 2018で披露した4つのOSの最後に発表され、時間が押していたせいか、スライドのめくりも超特急でプレゼンが進行していたのが、Mac向けの「macOS Mojave」です。
このOSの最大のメッセージ、というか印象に残っていたスライドは、「No」と大きく書かれた1枚でした。Apple首脳が常日頃から、それこそ口を酸っぱくして言ってきた「iOSとmacOSの融合はない」という方針を表すものです。
その代わりに、MacでiPad向けにデザインしたアプリを動作させることができるようにする仕組みを披露し、macOS Mojaveに不自然に追加された「株価」「ニュース」「ホーム」「ボイスメモ」の4つのアプリが、iPad向けアプリのコードで作られていることが明かされました。
この「融合はない」と繰り返すことの背景にはなにがあるんでしょうね。普通に考えればiPadとMacにそれぞれの役割を与え、市場を食い合わないよう牽制しているように見えます。実際のところ、iPadでできることは多くなっており、2016年に登場したiPad Pro 9.7インチ(現在は10.5インチに拡大)は、6億台とも言われる古いPCの代替市場を狙うと言われています。
しかしAppleが「プロ」と考える人々には、Macを使ってほしいと思っているようです。Final Cut ProやLogic Proといったクリエイティブ系のアプリはiPadに用意されていませんし、iPhoneアプリを開発するXcodeもMacがなければ使えません。
最近、AppleはBehind the Macという広告シリーズを公開し、テレビとYouTubeなどで流しています。Grimesさんのビデオでは、MacBook Proにビックリマンチョコのシールが貼られていて、日本ではそこも話題になりました。
その一方で、Appleは計画的に考えを変える名人でもあります。
たとえばiPhoneを披露した際、スティーブ・ジョブズ氏は「ペンはナンセンス」と言っていました。しかし現在、iPad向けにApple Pencilが用意されています。鉛筆ならOKと言うことでしょうか。また大型スマートフォンに否定的でしたが、2012年に画面を拡大し、2014年にはさらに拡大、2017年にはもうAndroidスマートフォンと変わらないサイズになりました。
といった具合で、Appleが何か考えをアピールする場合は、それが撤回されることの前兆、フラグになっていることが多いという経験則があります。まあ、iOSとmacOSの融合よりは、macOSがなくなる未来の方が可能性が高いかもしれないと個人的には思っていますが。
早速ダークモードに切り替えた
さて、当面は安泰というべきmacOSですが、その最新バージョンは伝えられているとおりに、山から砂漠へ移動し、Mojaveとなりました。順調にカリフォルニア旅行を続けているのですが、そんなAppleより、macOS Mojaveのパブリックプレビューの「ファーストルック」の依頼が来ましたので、いくつかの媒体に書くことになりました。
とりあえず、手元の2016年モデルのMacBook Pro(13インチ Touch Barモデル)にインストール。まだプレビュー版ではありますが、快調です。このマシンに新しいOSをインストールするのも、もう3年目です。新OSに乗り換えてもマシンが極端に遅くなったりすることはありません。
そこで早速、macOS Mojaveのウリであるダークモードを試してみました。画面表示がイチオシの機能に上がってくる点については複雑です。背後のテクノロジーや新しい使い方以上に見た目が新しい、と言われてしまうと、さほど新しいことがないようにも思えるからです。
ダークモードへの切り替えは簡単。システム環境設定の「一般」をクリックすれば、一番上で変更できます。そんなに頻繁に変更するものでもないのかもしれませんが、できればTouch Barに切り替えボタンを用意したり、通知センターに「Night Shift」や「おやすみモード」とともに、切り替えスイッチを用意してくれればよかったのに、と思いました。
念のため、Touch Barのカスタマイズの中身を見てみましたが、「Night Shift」と「おやすみモード」はボタンがあるのに、ダークモードへの切り替えボタンを追加することはできませんでした。まあMacなので、メニューバー常駐の切り替えアプリなどを追加できるとは思いますが。
ただ一貫性が今ひとつ
筆者はもともと、原稿を書く際にもダークモードを利用できるエディタを使ってきました。Ulyssesというアプリは、インターフェイス全体、原稿部分を別にダークモードに設定することができますが、早朝から原稿を書く習慣が増えてきたため、結局1日中ダークモードのUlyssesを全画面にして、暗い画面で仕事をしてきました。根暗な筆者にはぴったりです。
そうした中で、Mac全体もダークモードに切り替えられるようになり、普段使っていたメールや写真などのアプリもダークモードのまま続けられますし、予定によって将来を縛る存在であるカレンダーはカラフルなネオン街のようなワクワク感すら感じられます。
なにより、わざわざシステム環境設定に行かなければならないとはいえ、ダークモードと通常モードを切り替えることで、気分を一新して使うことができる点も気に入りました。
しかし、ダークモードを楽しんでいた筆者の目に、広大な真っ白い空間が出現したのです。それはSafariでした。
ウェブブラウザのSafariもインターフェイスはダークモードが用意されており、メニューバーやタブなどは暗くなります。ファビコンをサポートして、暗いタブに鮮やかなファビコンが浮かび上がるところまではよかった。しかしウェブサイトを開いた瞬間、現実世界に呼び戻されてしまうのです。
ウェブサイトはMacがダークモードであろうが、特別な設定をしない限り、誰にとっても同じようにページを表示します。そのため、いくらUIが暗くても、ページの背景は白なのです。ウェブサイトによっては、暗いテーマで利用できるものもあります。しかしすべてではありません。
ブラウザは普段のコンピュータ仕様に欠かせないソフトウェアであり、クラウドサービスが増えれば増えるほど、その時間は伸びてきました。MacでメールもカレンダーもGoogleという人も多いでしょう。
Googleは、Gmailのテーマカラーを変更でき、背景を黒くするダークテーマを設定できます。Twitterもナイトテーマを自前で用意しました。しかしFacebookはサードパーティのツールを利用しなければ、暗いモードを利用できません。
その点で、ダークモードの有効性は、現状半分程度と考えています。
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