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松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析 第1回

アップルがiPhoneデザインを模倣されても黙っているワケ 新連載「アップル時評」の読み方

2018年06月29日 10時00分更新

文● 松村太郎 @taromatsumura

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デザインの承認プロセスとオリジナリティの強化

 アップルのやり方や答えがすべて正しいわけではない、と筆者は考えています。たとえばiPhone Xの全画面スマホのノッチ。顔認証のためのセンサー群を入れるため、画面の切り欠きを作りました。もちろんiPhone Xのデザインアイコンになりましたが、全画面というコンセプトに対する「妥協」でしかありません。

 しかし、一度アップルがそうしたデザインを示せば、善し悪しにかかわらず、1つの「提案」として認識されます。そして中国のAndroidスマートフォンメーカーが、デザインをコピーすることをはばからず、ノッチ付きのスマートフォンを大量にリリースします。こうして、もともと妥協だったアップルのデザインは承認され、様式へと昇華されるのです。

 アップルは世界中で、サムスンを知的財産の侵害で訴え、GalaxyシリーズがiPhoneのデザインをマネしたと認めさせ、賠償金を5億ドル以上取りました。しかし、ノッチ付きのAndroidスマートフォンをまとめて訴えないのは不自然ではないでしょうか?

 中国メーカーが取るに足らない相手だから?あるいは中国当局の機嫌を損ねたくないから? それともサムスンがやり過ぎたと考えているから? あるいは、前述のように妥協を正当化してくれたから? 皆さんはどう考えるでしょうか。

 こうした物珍しいデザインの提案と承認プロセスは、オールインワンで新しいコンピュータの姿を見せたiMacでもありました。

 当時のコンピュータはクリーム色やグレーが当たり前でしたが、iMacは半透明のボディとビビッドなカラーで登場しました。すると、同じような半透明のコンピュータが増加しましたね。

 またMacBook Airが登場すれば、それまでプラスティックでゴテゴテと穴ぼこだらけだった分厚いノートパソコンが一変し、メタルボディの薄型ノートPCが増えました。ちょうど電気スタンドのようなアームがあるiMac G4だけは、突飛すぎてフォロワーが現れなかったようですが……。

 サムスンに対してはマネして収益を上げたととがめ裁判に発展しましたが、登場当初賛否両論だったデザインは、フォロワーが現れることで、正当化されるのです。しかしマネしようにもできない部分もあります。価格と質感のバランスで、アップルを上回る製品を作ることは難しいでしょう。なにしろ、iPhoneは年間2億台販売するスケールがありますし、Macだってアルミニウムボディ以外の製品がなくなりました。徹底的に製造における素材レベルからの調達コストの低減と効率化を、長期スパンで実現しているからです。

 あるいは、同じノッチを用意したとしても、すべてのAndroidスマートフォンが3D顔認証を実現していたわけでもありません。技術的な側面で必要なノッチであって、単なるデザインアイコンではないのです。

 こうしたせめぎ合いが、デザイン以外へ広がるアップルの製品の特徴として上げられるデザインについて触れてきましたが、スマートフォンによる生活変革が進行するにつれて、こうしたプロセスが、デザインだけでなく、あらゆる領域で起き始めるでしょう。

 技術、メディアだけでなく、食、居住、買い物、交通、健康、教育、金融、プライバシー、セキュリティ、安全保障、貿易問題、表現活動、多様性、銃規制、環境と気候変動、人道的な倫理の問題……。 ビジネスだけでなく、人々のライフスタイル、そして人間としての生き方に至るまで、アップルの提案範囲は広がり、フォロワーが現れ、承認されていく。

 これが筆者による、現在の米国でのアップルのポジションを表す分析です。

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