PaaS領域やクラウドプラットフォームにおける自律機能拡張
一方オラクルでは2017年10月に、米ラスベガスで開催したOracle Open World 2017において、自律機能を搭載したOracle Autonomous Databaseを発表。2018年3月から、Oracle Autonomous Data Warehouse Cloudの提供を開始している。
世界初の自律型データベースとなる「Oracle Autonomous Database」は、EXADATAの技術とOracle Database 18cの機能を基盤に、AIを組み合わせることで、自動稼働(Self-Driving)、自動保護(Self-Securing)、自動修復(Self-Repairing)の3つの機能を提供。「クルマの自動運転のように、利用者はなにもせずに、ミッションクリティカルなエンタープライズワークロードを走らせ、高いパフォーマンスを維持し、最大で8割のコスト削減が可能になる。そして、セキュリティーにおいても最高の環境を実現できる」(米オラクル データベース開発担当エグゼクティブバイスプレジデントのアンディ・メンデルソン氏)とする。
たとえばセキュリティーでは、情報システムに対する脅威の85%は1年前に提供されていたパッチを当てれば回避できるというデータを示しながら、「すでに出ているパッチを当てない企業が多いのは、パッチを当てるためにアーキテクチャーを書き直したり、アプリケーションをオフラインにするなど、多くの手間がかかっていたことが要因である。Oracle Autonomous Data Warehouse Cloudでは、自動的にパッチを当てることができ、アプリケーションもオフラインにする必要がない」とする。
自律化は、安定した稼働環境を実現する点でも、重要な役割を果たすというわけだ。
オラクルでは、PaaS領域において、自律機能を拡張させることを発表した。具体的には、Oracle Autonomous Analytics CloudおよびOracle Autonomous Integration Cloud、Oracle Autonomous Visual Builder Cloudに自律機能を拡張する。
「アプリケーション開発やインテグレーション、分析サービスにおいて、高度な人工知能(AI)と機械学習アルゴリズムを使用した自律的な機能を提供。Cloud Platform全体で自律的な機能を拡張できる」(Oracle Cloud Platform担当エグゼクティブバイスプレジントのアミット・ザベリー氏)としている。
オラクルは2018年2月に、クラウドプラットフォーム全体に自律機能を拡張させる計画を明らかにしており、今回の発表はそれに則ったもの。コスト削減やリスク低減のほか、イノベーションの促進、予測可能な洞察を得るための重要なタスクを自動化できる。
2018年後半には、モバイルおよびチャットボット、データ統合、ブロックチェーン、セキュリティーと管理、およびOLTPを含む追加のデータベース・ワークロードに焦点を当て、より自律的なサービスをリリースする予定だ。
不要になるOracle DBA
だが、こうした自律化の進展は、ひとつの課題を突きつけることになった。
それは、Oracle DBAが不要になるという点だ。
ハードCEOは「Oracle Autonomous Databaseに搭載されたAIによって、データベースの更新、最適化、パッチの適用、チューニングを自動的に行なうことができる。数10万人のOracle DBAの作業を解放し、付加価値の高い仕事に従事できるようになる」とする。
全世界で2万人にのぼるオラクルデータベースの専門家を抱えるアクセンチュアのパット・サリバンマーケティングディレクターは「データベースの専門家のこれからのキャリアを考えていく必要がある」と語り、「DBAは今後、データそのものにどんな価値があるのか、ということにフォーカスした仕事をしなくてはならない。つまり、データの管理が自動化されれば、データの専門家として、本来持つノウハウを活用しなくてはならない」と指摘する。
米オラクルのメンデルソンエグゼクティブバイスプレジデントは、「世界初の自律型データベースであるOracle Autonomous Databaseは、オラクルにとっても、業界にとっても、顧客にとっても、重要なマイルストーンである」と指摘するが、これまでオラクルのデータベースの運用を支えてきたDBAにとっても、役割の転換を促すことになりそうだ。
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