Kubernetes on ベアメタル、Watson×iOSアプリ開発者向けなどの新発表、「IBM THINK 2018」レポート
「ビジネスのためのAIとクラウド」WatsonとIBM Cloudの新発表まとめ
2018年04月03日 07時00分更新
マネージドKubernetes環境をベアメタルで提供、IBM Cloud Container Service
Watsonに続いて、IBM Cloudにおける新発表を見ていこう。
この数年間、IBM Cloudが目指してきたのが「ワンアーキテクチャ」の実現だ。これは、パブリッククラウド/プライベートクラウド/オンプレミスの環境を同一アーキテクチャに統一することで、アプリケーション/データをどの環境に移しても同じように実行できるハイブリッド環境を実現するというものだ。
ここで重要な役割を果たすのが、サーバー仮想化やコンテナの技術である。IBMでは2016年からヴイエムウェアとの戦略提携に基づく「VMware on IBM Cloud」を展開しており、今年には「VMware Hybrid Cloud Extension(VMware HCX) on IBM Cloud」も発表している。
従来型アプリケーション向けの施策と言えるVMwareへの対応に加えて、クラウドネイティブアプリケーション向けのコンテナ対応も進めている。昨年からパブリッククラウドでフルマネージド型のコンテナサービス「IBM Cloud Container Services」を提供しているほか、プライベートクラウド向けにもIBM Cloud Privateがある。
そして今回はCloud Container Servicesにおいて、ベアメタルノード上でKubernetes環境を提供する“Kubernetes on ベアメタル”が追加された。東京データセンターを含む世界19拠点で提供され、機械学習アプリケーションなど大量のCPU/メモリリソースを必要とするワークロードでも、コンテナ環境のもたらす可搬性やアイソレーション(分離)性などのメリットが得られることになる。
また、メインフレームの「IBM Z」や大規模Linuxサーバーの「IBM LinuxONE」においても、Docker EE(商用版Docker)コンテナのサポートを発表している。
1リージョンを3DCで冗長化する「マルチゾーンリージョン」も発表
IBM Cloudデータセンターに設置したIBM Zメインフレームを用いて、IBM Cloud上のデータに高度なセキュリティを適用する「IBM Cloud Hyper Protectファミリー」も発表された。具体的には、IBM Zの暗号ハードウェア(HSM)を利用したセキュアな鍵操作や乱数生成をサポートする、FIPS 140-2 Level4適合の「Hyper Protect Crypto Services」、MongoDB-EEなどのクラウドネイティブなDBに対し、セキュアなプライベートデータストアを提供する「Hyper Protect DBaaS」、IBM Z/LinuxONEでホストしたコンテナ環境を提供する「Hyper Protect Containers」、そしてiOSアプリ開発者がHyper Protectサービスを用いたセキュアなアプリを開発できるようにする「Hyper Protect Developer Starter Kits」がラインアップされている。
加えて、ディープラーニングなどの用途向けに前述したPower Systems AC922サーバーをホストし提供する「POWER9 on IBM Cloud」、ディープラーニングフレームワークのソフトウェアパッケージ「PowerAI on IBM Cloud」も発表した。また、大規模インメモリワークロード向けに、最大24TBのメモリ空間をサポートする「SAP HANA on Power Systems on IBM Cloud」も提供される。
最後にもうひとつ、東京リージョンを含むIBM Cloudの一部リージョンが「マルチゾーンリージョン(MZR)」化されることも発表されている。これは各リージョンを、2ミリ秒以下のレイテンシでネットワーク接続した3つのデータセンターで構成するというもので、冗長性を高める施策となる。今回は、ダラス、ワシントンDC、ロンドン、フランクフルト、シドニー、東京の6リージョンがMZR化される計画だ。
なお日本IBM 執行役員 ワトソン&クラウドプラットフォーム事業部長 吉崎敏文氏は、「MZRはAWSが提供するAZ(アベイラビリティゾーン)のようなものか」という記者からの質問に対し、「それ以上のこともあるが、今は言えない」と答えた。詳細についてはサービス開始時の発表を待ちたい。