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日本IBMが「IBM Think Japan 2018」開催、多彩なスピーカーが登壇した“Developer Day”も

「IBM Cloud」東京にAZ、開発者向け新サイトなどIBM新発表まとめ

2018年06月13日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 日本IBMは2018年6月11日、12日の2日間、東京・品川でプライベートイベント「IBM Think Japan 2018」を開催した。その開催に合わせて、「IBM Cloud」世界6リージョンにおけるAvailability Zone(AZ)新設、最新テクノロジーをビジネス活用するための開発者向けポータル「IBM Code Patterns」開設、オンプレミスデータ基盤「IBM Cloud Private for Data」の国内発売などが発表された。

「IBM Think Japan 2018」1日目はデベロッパー向け、2日目はビジネスリーダー向けのイベントとなった

東京を含む世界6リージョンでAZ新設へ、Kubernetesマルチゾーンクラスタも構成

 IBM Cloudにおいては、東京を含むユーザー需要の多い6都市(リージョン)においてAZを新設することが発表された。

 具体的には、独立した電源/冷却/ネットワークを持つ3つのデータセンター(DC)で1リージョンを構成し、DC障害の発生時などにはすぐに別のDCで運用を継続する仕組みを用意することで可用性を強化する。これまでのIBM Cloudは1リージョン=1DC構成だったため、複数DCを使って高可用性を担保するためには、たとえば東京リージョンと海外リージョン(香港やシンガポール、シドニーなど)を併用する必要があった。

 記者説明会に出席したIBMクラウド事業本部長の三澤智光氏は、東京リージョンにおける提供開始時期について、具体的な時期の明言は避けつつも「顧客からのリクエストは非常に強く、『年内のできるだけ早い時期』に提供開始したい」と語った。

2日目基調講演に登壇した日本IBM 取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長の三澤智光氏「VMware on IBM Cloud」を採用し既存システムのクラウド移行を進める富士フイルムもゲスト登壇した

 また三澤氏の説明によると、AZ化にあたって新アーキテクチャを採用するため、従来のIBM Cloud DCがそのままAZに組み込まれるのではなく、従来のDCと新しいAZ DCとが併存する形になるという。さらに、AZ化されたIBM Cloudを利用するかどうかは顧客が選択する方式だと、三澤氏は説明した。なお現時点ではAZ利用時の価格は(非利用時との価格差があるかどうかも含め)発表されていない。

 Amazon Web Services(AWS)やグーグルなど、他のクラウドベンダーが提供するAZとの違いや優位性については「追々明らかにしていきたい」とし、詳細な説明はしなかったが、高速/大容量なDC間ネットワーク接続によって、Kubernetesのマルチゾーンクラスタが構成可能になる見込みだ。

 「Kubernetesのマルチゾーンクラスタを構成するためには、高速なDC間ネットワークと、キャリアグレードの高度なネットワークアイソレーション(ネットワーク分離)が必要である。IBM Cloudは、そのマルチゾーンクラスタをおそらく最初に提供するクラウドベンダーになるだろう」(三澤氏)

 そのほかIBM Cloud関連では、オンプレミスにデータ収集/整備/分析基盤を構築できるIBM Cloud Private for Data(ICP for Data)の国内提供開始も発表された。提供を開始したのは最上位版のEnterprise Editionで、参考価格(税込)は1仮想プロセッサあたり344万円。今後、評価目的で利用できる無償版(Community Edition)も提供予定。

 ICP for Dataは、コンテナ/Kubernetesベースのプライベートクラウド(CaaS/PaaS)基盤であるICPに、データサイエンティスト向けのアプリケーションコンテナ群(Db2、Db2 Warehouse、Data ScienceExperience、InformationAnalyzer、InformationGovernance Catalogueなど)を追加したもの。これにより、高度なデータ分析や機械学習/ディープラーニングなどで課題となる「データの準備作業」の工数削減を支援する。

開発者の目的、文脈に沿ったサンプルコードを提供する「Code Patterns」

 今回、Think Japanの1日目は「Developer Day」と題され、デベロッパー/エンジニア向けの基調講演やブレークアウトセッションが数多く催された。昨年までのイベント(IBM Watson Summit)はあくまでビジネスリーダー/テクノロジーリーダーを対象としており、日本IBMとして直接「デベロッパー」をターゲットとした初めての大規模イベントとなった。

“Developer Day”基調講演は「世界はITでできている。イノベーションはエンジニアがリードする。」がテーマ。米IBMフェローのグラディ・ブーチ(Grady Booch)氏、LUMINOUS PRODUCTIONSの長谷川勇氏、ピクシーダストテクノロジーズ/筑波大学の落合陽一氏、ソラコムの玉川憲氏、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの大前広樹氏、スクウェア・エニックスの三宅陽一郎氏など、多彩なスピーカーが登壇した

 同日には、デベロッパー向けの情報ポータルサイトであるIBM Code Patterns(コードパターン)の日本語版公開が発表された。スタート時点では日本語化されたコンテンツ(アイデアやコード)が70種類公開されており、今後さらに拡充していく方針。

「IBM Code Patterns(コードパターン)」。目的や業種に応じてシステム構成やソースコードが入手できる

 コードパターンは、具体的な開発テーマに基づくアーキテクチャ、サンプルコード、ドキュメント類をまとめて提供するデベロッパー向けポータルサイトである。基調講演に登壇した日本IBM 代表取締役社長執行役員のエリー・キーナン(Elly Keinan)氏は、ここで提供するのはブロックチェーンやAI、コンテナなど新しいテクノロジーの活用というだけでなく、「本格的なビジネスアプリケーション」構築のための情報であると強調した。

 また米IBM Chief Developer Advocateのウィリー・テハダ(Willie Tejada)氏は、IBMではデベロッパーに対し「Code(コード)」「Content(コンテンツ)」「Community(コミュニティ)」という3つの柱を提供していきたいと考えているが、その提供においては「Context(文脈)」も重要になってきていると述べる。モバイル、クラウド、AIなど、現在のアプリケーション開発は複数のテクノロジーが複雑に絡み合うものとなっており、さらにビジネス活用を考えるうえでは業種ドメインごとの専門的なニーズや要件も関係することになるからだ。

 これらを整理しまとめ、わかりやすく提供するのがこのコードパターンの狙いだと、テハダ氏は説明する。サイト上のコンテンツはテクノロジー分野軸だけでなく業界軸でも検索が可能であり、業界ドメインの専門的ノウハウも組み込まれている。「アプリケーションの開発にあたって、最も高パフォーマンスで低コスト、堅牢なセキュリティにするためのベストプラクティスを参照できる」(テハダ氏)。

米IBM Chief Developer Advocateのウィリー・テハダ(Willie Tejada)氏日本IBM デジタル・ビジネス・グループ デベロッパー・アドボカシー事業部長の大西彰氏

 また日本IBM デベロッパー・アドボカシー事業部長の大西彰氏は、コードパターンには、デベロッパーが目的を持ってアプリケーションを開発する際にドキュメントやサンプルコードを参照して問題解決する時間を短縮できるメリットがあると説明した。

 「たとえば『Voice Recognition(AI音声認識技術)を使ったアプリケーションを作る』といった形で目的が明確になっていて、従来のような単機能のサンプルコードではなく、エンドトゥエンドでそれを実現するためのコンテンツが提供される。どういう構成(アーキテクチャ)でそのアプリケーションが動くのかという情報、さらに、モバイルとクラウドで構成されるならばその両方のサンプルコードがGitHubリポジトリにある。サンプルコードはオープンソースライセンス(Apache2.0 License)で公開されており、開発者が好きなように改変して、そのまま問題解決に利用できる」(大西氏)

 なおDeveloper Dayの基調講演では、世界の自然災害に対する課題解決支援を図るプロジェクト「Call for Code」への参加も呼びかけられた。テハダ氏によると、このプロジェクトは3年間をかけて実行していくもので、IBMのほかLinux Foundation、国連人権高等弁務官事務所(ONCHR)、米国赤十字社などが協力している。

 同プロジェクトでは現在、デベロッパー個人/チームに「自然災害に対する地域社会や人々の備えを強化するのに役立つ新しいアプリケーションの開発」を求めており、今年8月末までアイデアの応募を受け付け、最優秀チームには賞金授与のほか、全世界で実際に利用されるアプリケーションとして展開していくための技術的なサポートが受けられる。

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