2年後の2020年4月から、小学校で「プログラミング教育」が必修化される。これを見据えて文科省は今春、関係業界を巻き込んだプログラミング教育推進の取り組みを加速させるため、省内の体制を一新する。
元・日本MS文教本部長が入省、プログラミング教育を推進
文科省は、プログラミング教育推進を担う組織として、2017年3月に総務省および経済産業省と共に「未来の学びコンソーシアム」を設立した。2017年12月には、文科省内に「未来の学びコンソーシアム」プロジェクト推進本部、「未来の学びコンソーシアム」プロジェクト推進チームを設置している。
2018年3月8日、文科省はこの未来の学びコンソーシアム、および省内の同プロジェクト推進本部/推進チームの体制を一新することを明らかにした。
同プロジェクト推進本部の本部長には、文科省大臣官房審議官、本部長代行には文科省生涯学習政策局生涯学習総括官が就任するが、本部長代理に着任したのは、日本マイクロソフトでコマーシャルWindows本部長や文教本部本部長、エンタープライズビジネス事業改革担当兼文教戦略担当など業務執行役員を歴任した中川哲氏である。
中川氏は以前から先端科学技術研究センター 客員研究員として、文科省の情報ワーキンググループ委員や有識者会議など小学校のプログラミング教育に携わっていた。その関係から、日本マイクロソフトを退職後、文科省に入省し、プログラミング教育戦略マネージャーに着任したという。中川氏はプログラミング教育支援や、民間企業・団体などプログラミング教材開発の促進、学校における外部人材活用促進など、プログラミング教育の普及に関する業務を担当する。
「未来の学びコンソーシアム」をリニューアル
新体制の「未来の学びコンソーシアム」は、従来の幹事会を廃止し、事務局内にプロジェクト推進本部およびプロジェクト推進チームを包括する。その役割について中川氏は、「(プログラミング教育が始まると)小学校の先生が教えることになるが、教員自身は教育学部で(プログラミングを)学んでいない。そこを円滑に行うための組織」とコンソーシアムの役割を説明した。多くの教員は2020年度の小学校プログラミング教育の全面実施を把握しているものの、現時点で具体的な授業手順など事例は存在しない。文科省はコンソーシアムを通じて、事例や教材の情報を発信しつつ、官民のネットワークを強化する。
小学校のプログラミング教育については、教育課程内のプログラミング教育範囲として、「A. 学習指導要領で例示されている単元等で実施するもの」「B. 学習指導要領に例示されていないが、学習指導要領に示される各教育等の内容を指導する中で実施するもの」「C. 各学校の裁量により実施するもの」「D. クラブ活動など特定の児童を対象として実施するもの」と、教育課程外のプログラミング教育範囲として「E. 学校を会場として実施するもの」「F. 学校以外を会場として実施するもの」の6つに分類される。「学習指導要領に例示された単元に限定せず、多様な教科・学年・単元などにおいて実施されることが望ましい」(中川氏)。この分類に沿ったポータルサイトのリニューアルを2018年7月以降に実施する。
文教向けPCが出そろう2018年春
IT業界側も、小学校プログラミング教育の開始に向けた準備が進んでいる。レノボ・ジャパンは2017年10月にWindows 10 S搭載の「Lenovo N24」をリリースし、さらに2018年3月13日には、Chrome OSを搭載した「Lenovo 300e」「Lenovo 500e」を発表した。いずれも文教市場に特化した機種で、パートナー経由で2018年5月からの販売を予定している。今、日本市場にChromebookを投入する理由として同社は、「文科省や総務省の指針やクラウド環境の整備状況、市場を鑑みた上で『体制が整った』と判断した」(レノボ・ジャパン 教育市場開発担当 渡辺守氏)と語っている。
2019年度は教育委員会や小学校で、プログラミング教育のための機材、教育研修の調達が本格化する。レノボ・ジャパンが発売時期を2018年5月に定めたのは「国公立学校の機材調達は4~5月に仕様策定し、夏頃に導入するケースが多いため」(渡辺氏)だという。2020年度まであと2年。官民の取り組みに注目が集まる。