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六次産業化が地産地消と食育を変える!

徳島のTHE NARUTO BASEで地元の小学生たちが地産地消体験

2019年09月06日 11時00分更新

文● 西端律子(畿央大学教育学部教授) 編集● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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 夏休みもそろそろ終わる8月下旬、徳島県板野郡の上板町立高志小学校5年生31人、教職員4人が、「地産地消体験ツアー」として、徳島県鳴門市のレストラン「THE NARUTO BASE」を訪れ、加工場の見学と本格的な洋食ランチを楽しんだ。

 同校では以前から「総合的な学習の時間」(小学校3年生~中学校・高等学校等で展開)などで食育を行ってきたが、今年度は特に、文部科学省が展開する学校給食事業の一環として「地産地消」「食品ロスの削減」などのテーマに取り組んでいる。筆者は、大学で「総合的な学習の時間の指導法」を担当する専門家として、また、レストラン側の教育連携担当者として、このツアーに同行した。

ランチをいただく高志小学校5年生の児童たち

捨てられるはずだったにんじんが食育メニューに?

 この日のメインディッシュは、地元で栽培されている「なると金時」を食べて育った「阿波の金時豚」のポークソテー、もしくは鳴門海峡で育った鯛のポワレ。どちらも徳島の食材を使った料理であり、いわゆる「地産地消」メニューである。デザートのジェラートも徳島県産のイチゴが使われていた。

メインディッシュだった「阿波の金時豚」のポークソテー

 しかし、子どもたちにとっての「メインデイッシュ」はむしろ、付け合わせのにんじんとブロッコリーだった。サラダやスープに使われていたこれらの野菜は1学期に、生産農家が収穫した後の畑で子どもたちが“集めたもの”である。本来であれば規格外として捨てられてしまう野菜が、4か月後、素敵なランチに生まれ変わり、子どもたちの前に再び登場したのだ。

収穫した後の畑で野菜を集める子どもたち

 「にんじん、あまいー!」
 「にんじん、(嫌いで)食べたことなかったけど、今日は食べれた!」
 「捨てられたかもしれない野菜もこう(ちいさく)なれば、おんなじ味だねー」
……と口々に話しつつ、大人が食べる量をほとんど全員残さずに食べていた。ジャズの流れる個室で、慣れないフォークとナイフを使い、ちょっと大人な気分のランチをいただきながら、地元の食べ物への愛着と食品ロスへの取り組みを子どもたちなりに理解したようである。

子どもたちの表情を見れば、そのおいしさは語らずとも……

子どもたちは地産地消体験ツアーでなにを学んだのか?

 THE NARUTO BASEは、規格外の野菜や肉を加工し、レストランで地元の方に提供するだけでなく、徳島県外の店舗にも流通させるための基地(ベース)でもある。子どもたちが収穫した野菜も、今日のために加工され、子どもたちを待っていたのだ。

すりつぶし、加工された規格外のにんじん

 THE NARUTO BASEの代表である大関興治氏は、東京のIT企業の経営者でもある。生産者との連絡、連携農場やレストランのIoT化、加工品の流通、キッチンカーの運用など多くの場面でITを活用し、鳴門市の六次化産業を推進している。

 加工場の見学では、支配人の新谷宜大氏から一次産業(農林水産業)×二次産業(加工・製造業)×三次産業(小売・運輸・サービス業)で六次産業化になる仕組みを聞き、実際に加工された食材を見せていただいた。子どもたちは熱心にメモを取り、「調味料は地元のものを使っているのですか?」など積極的な質問も飛び出した。

加工場を見学しながら、実際に加工されたイチゴを見る子どもたち。熱心にメモも取っている

 小学校5年生の社会科では、産業について、そして特に「情報化した社会の様子と国民生活とのかかわり」を学ぶ。今回の地産地消体験ツアーにおいて、農業、畜産業など一次産業に関わっている家庭の多い地域の子どもたちが、食には生産者と消費者だけではなく、加工・流通・サービスなどさまざまな人たちが関わっていること、また、地元の食材が形を変え、多くの人々に食べられていることを学んだ。

 子どもたちが社会の一員となる十年後には、IT化はさらに加速し、産業の構造は変わり、人々の関係性はより複雑に、そしてより多様になっていることだろう。その中でも、今日という日が、子どもたちにとって徳島のものを食べ、育ってきたことを大事にしていくための「第一歩」になったことを祈りつつ、お腹いっぱい、笑顔もいっぱいで少し重くなったバスを見送った。

上板町のバスで帰る子どもたち

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