昨年末に発売された、DUNU-TOPSOUNDSの新作「Falcon-C 隼(以下、隼)」。カジュアルユースのイヤフォンがBluetoothへ移行する中、ワイヤードでイヤーモニター型、かつ価格も2万円台半ばとなれば、ついマニア専門の製品というイメージを持ってしまいがち。
ところが、これが近来にない見どころの多いイヤフォンだった。もちろんハイコストパフォーマンスでならした、あのDUNUブランドの新作として納得の性能。加えて、それはいくつかの新しいフィーチャーと共に、このカテゴリーのイヤフォンに新しい基準を作ったようにも感じた。
ドライバ一発! 広帯域型
隼の見どころは、まずハウジングに収まっているのが、9mm口径のダイナミック型、ただ一発のみということ。こんな値段なのにシングルのダイナミック型なのだ、しかも小ぶりの。
この価格帯では、バランスドアーマチュアのマルチドライバーか、それにダイナミック型を組み合わせたハイブリッド構成が主流である。
このドライバーは、カーボンナノチューブを振動板に使ったワイドレンジ型で、日本オーディオ協会のHi-Resマークが付いている。が、しかし、それも逆に不安材料でしかない。
振動板の素材を変えたり、ボイスコイルの構成を変えてみたり、様々なメーカーが様々な手法で、ダイナミック型の広帯域化を図ってきた。中には成果を認められるものもあったが、それでもどこかにピークと、フラットさに課題が残るものばかりだった。
マルチドライバーに負けない理由
ところが隼をつないで聴いてびっくり。ダイナミック型一発で、マルチドライバーに優るとも劣らない、いや、ひょっとしたら優っているかもしれないとすら思えた。
驚きは、ダイナミック型ならではの低域の厚みと同時に、高い解像感を保ったまま中高域がバランスを保っていること。従来の広帯域型ダイナミック型のような、高域成分の歪みや偏りのようなものは感じられない。
そのうえ、シングルドライバーのイメージどおりに、音像のピントはシャープ。ここがマルチドライバーに優っているかもしれないポイントで、結果としてのステレオの音場感は、このイヤホンーのウリでもあるだろう。取り立てて音のキャラクターに特徴が感じられないのも、いいイヤフォンの証だ。つまり何でも聴ける。
こうした特性を9mm口径のドライバーで達成できたこと、おかげでコンパクトなハウジングが成立したこと。隼の良さは、この2点に尽きる。
マルチドライバーは、収めなければならないものの数が増えるので、当然ハウジングも大きくなる。しかもイヤーモニター型の場合、たいていは樹脂成形だから、ぽってりした形状になりがちだ。
その点、隼は、単純なドライバー構成の利というべきか、リキッドメタルを使って、強くコンパクトにまとめている。無理のない形のため、耳掛け型ながら着脱性が良く、耳から外側へ向けての突起も小さいので、装着安定性も高い。まったくドライバーが一発で済んでしまうと、いいことしかない。