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前田知洋の“マジックとスペックのある人生” 第63回

10倍美味しくパンが焼ける!?バルミューダのトースター

2018年03月13日 17時00分更新

文● 前田知洋

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 ここ数ヶ月、電気ケトルの調子よくありません。すでに10年間、毎日使っているし、友人からの新居祝いのプレゼントで愛着があるのになぁ…。

 ハンダゴテを片手に奮闘しましたが、もう寿命のようです。

 というわけで、量販店に行ってきましたが、電気ケトルは種類が豊富なのが悩みどころ。ハンドルを持った感じだとか、サイズとか、すごい悩んでコレにしました。バルミューダのケトル。

バルミューダの電気ケトル。ハンドルの先のランプがレトロ

 「そういえばバルミューダって、トースターが話題になっていたような…」と、トースターもチラリとチェック。

 安価なものだと2000円クラスからあるトースターですが、なんとバルミューダのトースターの値段は2万円5千円弱。「そ、そんなに美味しく焼けるのかぁ…」と内心は動揺しつつも、外見は平静を装うのがマジシャンの日常です。

 最近、外食もめんどくさくて、自宅に引きこもりがちな筆者はトースターをアップグレードすることにしました。

 それでも、廉価トースターとの価格差は10倍以上。はたして、それだけ美味しくトーストが焼けるのでしょうか…。

いままではビルトインオーブンで焼いていた

 数年前、エシレバターを使った美味しいパン屋さんを近所にみつけてから、ごはん党からパン党になりつつあります。

 しかし、キッチンに余計なモノを置きたくないので、トーストはガスレンジの下にあるビルトインオーブンで焼いていました(物欲が多いので自制しています)。

 もちろん、ビルトインオーブンでも焼けるのですが、鳥の丸焼きができそうなオーブンで食パンを1~2枚焼くのは、ちょっと熱効率が悪いかも…、なんて罪の意識をいつも感じていました。

トーストを焼くには大きな自宅のビルトインオーブン

水を投入するタイプ

 新しいバルミューダのトースターはパンを焼く前に、専用カップで5ccほど水を注入するのが特徴です。

 トースター内の温度が上がると、水蒸気があがり覗き窓が曇ります。しばらくすると曇りがなくなり、ヒーターが明るくなったり暗くなったりを繰り返します。

 メーカーの説明によると、トースター内の温度を測りながら加熱調整をしているそうで、室温のパンでも冷凍のパンでもこんがりとキツネ色に焼きあがります。

 選択ダイヤルには「チーズトーストモード」や「フランスパンモード」「クロワッサンモード」などもあり、ほぼ全てにトライしましたが、どれも見事に美味しく焼けます。

それぞれの調理モード。どれも美味しく焼ける

 タイマーがいままでのトースターのようにゼンマイ式ではなく、ホイール式でクルクルと軽く回り、設定時間にあわせてLEDの光が伸びていく。加熱時はメトロノームのようなリズム音を刻む。そんな使い勝手や遊び心も楽しいです。

ダイヤルはホイール式。設定時間にあわせてLEDが明滅する

 筆者の主観ですが、美味しさは3倍、焼く楽しさ2倍、スタイリッシュな外見プラスアルファ。ビルトインオーブンに比べ、トーストを焼く時間も短縮したのでかなり満足。

バルミューダのトースターにみるイノベーション

 一見、水を使うことのみが、このトースターの特徴に思えるかもしれません。しかし、このトースターの特徴は内部を温度管理するデジタルなアルゴリズムにあると筆者は推測しています。

 トースターがパンを焼き上がるのを眺めていると、最後の数秒でヒーターの温度が上がり白い食パンの表面がマジックのようにキツネ色に変わります。こうした絶妙なヒーター調整はいままでのトースターでは苦手なプロセスでした。

 電気(電熱線)で加熱するというアナログをデジタルプログラムで調整するという組み合わせに成功してます。

 前回のコラムでも触れましたが、こうしたアナログとデジタルのマリアージュ(組み合わせ)は新しいテクノロジーマーケットでの成功の鍵のひとつになっています。

一歩先ではなく、半歩先を行く

 世間を見回すと「すごい技術だけど、なかなか普及しない」なんてことがよくあります。ビジネス視点なら「マーケッティングが…」とか「パブリック・リレーションが…」と語れるのかもしれません。

 しかし、筆者はそんなケースを「一歩先に行きすぎたかも」と分析することがあります。「一歩先ではなく半歩先を行く*」なんて名言があるように、先端すぎる技術が人々に受け入れられるには時間がかかります。
(*この言葉を筆者が初めて聞いたのはユーミンのライブ中のトークだったような気が…。記憶があいまいで、かつミーハーで恐縮です)

 たとえば自動車なら、「自動運転」が一歩先で「自動ブレーキ」や「自動で縦列駐車」が半歩先。そうした半歩先の機能を備えた自動車がすでにマーケットに投入されはじめているのはご存知の通りです。

 普及することで人々の気持ちが少し豊かになったり、少し快適で幸せになる。そんな目標が人々にゆるやかに受け入れられるイノベーションのポイントなのかもしれません。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。

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