2月10日、フジヤエービック主催の「ポータブルオーディオ研究会(ポタ研) 2018冬」が東京・中野サンプラザで開催された。「ヘッドフォン祭」を主催する同社だが、ポタ研はその間の時期(夏と冬)に開催され、ヘッドフォン祭よりは小規模でマニア色の強いイベントとなっている。
商戦期と外れるためか、メーカーの出展自体は控えめ。とはいえ事前の予想を上回る、新製品・参考展示が揃った印象だ。話題性では、1月のCESで米国発表されたばかりの「AKG N5005」が国内初公開。試聴のための列が絶えなかった。
一方時代の推移というか、少しずつ増えてきているのが、クラウドファンディング関連の製品展示だ。オーディオ製品も出資を募って製品化するケースが増えているが、ネット上では肝心の音を知る機会がほぼない。リアルな製品を見てもらうには絶好の機会になるはずだ。今回のポタ研では、final(S'NEXT)が昨年からMakuakeで展開中の“Makeプロジェクト”に対する関心度が非常に高かった。
現在は「Make1」(3BA)、 「Make2」(1BA+1ダイナミック)、「Make3」(ダイナミック)という3種類のイヤモニの出資を受け付けている。「自分だけのイヤフォンを作る」をコンセプトに、複数の音質調整フィルターの組み合わせで細かな音質調整ができる点が特徴。Make1では77通り、Make2/Make3では847通りの音が選べるという。会場では3種類の試聴ができ、聞き比べた人の感想をアンケートを通じて集めていた。その情報に基づいた改善も加えていくという。
ヘッドフォン関連のイベントは、体験の場であり、意見交換の場であり、アイデアが形になる場でもある。ポータブルオーディオのイベントは、もともと作り手と使い手の距離の近さを感じるものであるが、メーカー側も試行錯誤しながら、時代に合わせて変化している印象だ。そんな雰囲気も感じつつ、新製品・参考展示やイベントの楽しさを紹介していこう。
AKGへの期待はやはり大きい
冒頭でも紹介したが、今回一番の注目製品と言えば、「AKG N5005」だろう。国内で実機が展示されるのは初めてで、米国発表時の価格は999ドル(約10万9000円)。AKGのフラグシップイヤフォンで、国内発売もこの春を予定している。
直径9.2㎜のダイナミック型ドライバーにBAドライバー4基を組み合わせたハイブリッド型。MMCX端子を持ち、リケーブルが可能。3.5㎜、2.5㎜バランス、Bluetooth送受信用のリケーブル3種が付属する。国内販売する際には、高音質ケーブルを別途添付する予定があるそうだ。またフィルター交換で物理的に音質を変えられる機構も持つ。フィルターは合計4種で、標準のチューニングのほか、低域・高域・中域の量感を増やしたチューニングが選べる。