実用本位のトゥルーワイヤレス
これもドンキだからと言って低音爆盛りマイルドヤンキー仕様なんてこともない。ローエンドやハイエンドのレスポンスについては、はなから文句を言うようなものでもない価格だが、そこも穏やかな減衰があるのみで不満はない。6mm口径のマイクロドライバーなりの、ごく当たり前な落としどころだろうと思う。
ただフィッティングは少しシビアだ。装着角や、イヤーチップを押し込む深さによって、音のバランスは大きく変わる。低音が来ないとか、中高域が耳障りだとか感じたら、せっかくイヤーチップもいっぱい付いているので、面倒くさがらずにいろいろ試した方がいい。
動画再生時の音声遅延が少ないのも偉い。皆無とは言えないが、極小。テレビドラマでもミュージックビデオでも、画面と音がズレてイライラするようなことはない。値段が高くても音ズレがひどく動画に向かない製品はいくらでもある。
惜しいのは音切れだ。室内ならほとんどなにも起きないが、屋外を歩いている際など電波状況がコロコロ変わる場面では、右チャンネルの寸断が結構な頻度で起こる。どんなに高い機種でも、状況次第でプチプチ音が途切れてしまうのがトゥルーワイヤレス。これは避けようのないものとして諦めなければならないが、この部分はほかにもっとマシな製品もある。惜しい。
とはいえ、総じて機能や性能に限れば、1万円台前半の店頭販売品と同等ではないかと思う。激安価格にも関わらず、あちこち気が利いているので、多少の難があっても買って損した気にならない。個人的には落として行方不明になっても泣かなくてすむ程度に安いのがいいと思っている。気兼ねなく存分に使い倒せるトゥルーワイヤレスイヤフォンとして推したい。
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ