ECM(Editions of Contemporary Music)は、1969年、ドイツ(当時は西ドイツ)のミュンヘンにて、マンフレート・アイヒャーによって設立されたレコード会社です。
「静寂の次に美しい音(The Most Beautiful Sound Next To Silence)」を合言葉に、ジャズを主とした作品を次々にリリース。透明感のある音と洗練されたジャケット・デザインで人気を博します。1984年には現代音楽にスポットを当てる「ECM New Series」も開始、いわゆるクラシック音楽も手がけるようになりました。
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ECM catalog |
そんなECMの“全作品”が11月17日からストリーミング・サービス(Apple Music、Spotify、AWA、LINE MUSIC、KKBOX)で解禁されました。すごいことだと思います。聴きまくりたいのに自分の耳が2つしかないことを恨んでいます。
しかし、編集部で興奮している人たちがあまりいません。最近すっかり当たり前になったストリーミング・サービスに、こんなに充実したディスコグラフィーが加わったのに……。
悔しいので、「ASCII.jpの読者のみなさまにこの素晴らしさを伝えたい」という願望のもと、筆者がECMレーベルのオススメアルバムを25枚選びました。そんなに選ぶ必要があるのかと思われそうですが、正直に言うとこれでも足りないのです。「あれが入っていない!」「なぜこれを選ぶんだ!」というご指摘もあろうかとは思いますがご容赦ください。
アルバムはAmazonへのリンクで紹介します。気になったものがあったら、ぜひお使いのストリーミングサービスで検索してみてください(もちろんCDを買ってもいいですね)。
ECMオススメ20選
1.レーベルの看板アーティスト
〜誰もが認める名アルバム
2.ECMらしい音色の名盤
〜レーベルの世界観が伝わる音楽たち
3.“フリー”だけど、それでもECM
〜ちょっと妖しい独自のサウンド
4.通好み? ちょっと変わった作品たち
〜ECMでしか聴けない不思議な空気
5.ECMの“クラシック音楽”
〜バッハから現代音楽まで
レーベルの看板アーティストたち
まずはECMに所属する(あるいは、していた)人たちの中から、レーベルを代表する有名なアーティストを5人ピックアップ。ECMというレーベルを世に知らしめた代表作から挙げていきましょう。
Keith Jarrett「The Melody At Night, With You」(1999年)
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メロディ・アット・ナイト、ウィズ・ユー |
ECMで一番有名なアーティストといえば、ピアニストのキース・ジャレットということになるでしょうか。即興演奏なら「Facing You」(1971年)「Keln Concert」(1975年)、他にもピアノ・トリオあり、カルテット編成ありと、名盤には事欠きません。
ただ、これからECMを聴きたいという人なら、これが一番入りやすい作品ではないかと思います。難病の慢性疲労症候群によってリタイアしていた彼が、復帰後、妻に捧げたソロ・ピアノ。よく知られているジャズ・スタンダードを、丁寧に、愛おしく弾いていくさまは、シンプルに聴くものの心を打ちます。
Chick Corea「Return To Forever」(1972年)
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リターン・トゥ・フォーエヴァー |
ピアニストのチック・コリアは、1968年からマイルス・デイヴィスのグループに加入していました。この頃はマイルス・デイヴィスの音が「電化」していた時期でもあり、その流れでコリアもエレクトリック・ピアノを操るようになります。
マイルスのグループで得た成果を昇華し、全体的にすっきりとした(マイルスの作品と比べれば、というニュアンスですが)音で作り上げた、フュージョンの先駆け的な作品。エレクトリックピアノの透明感ある音色、難解すぎない曲展開やフレーズが聴きやすさに繋がっています。プログレッシブ・ロックが好きな人などにも受け入れられそうな音です(個人的にはカンタベリー系の音に似ていると感じています)。
Pat Metheny「Bright Size Life」(1976年)
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ブライト・サイズ・ライフ |
世界的に有名なギタリストであるパット・メセニー。彼自身がリーダーを務めるグループ「パット・メセニー・グループ」の作品も有名ですが、彼自身の独特なギター(擬音で表すと「ポーン」「ヒューン」みたいな……)を堪能したいなら、初リーダー作のこれではないかと。
シンプルな編成(ギター、ベース、ドラム)ということもあり、楽器の音がストレートに伝わってくる内容。エレキ・ベースを弾いているのは、伝説的なベーシストのジャコ・パストリアス。「ブヨッ」とした音色が、メセニーのギターと絡み合う様は圧巻です。
Jan Garbarek / The Hilliard Ensemble「Officium」(1994年)
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Officium |
ヤン・ガルバレクはノルウェーのサックス奏者。初期はジョン・コルトレーンに影響を受けたフリーキーな演奏が持ち味でしたが(Freedomレーベルに残した「Esoteric Circle」などが代表でしょうか)、徐々に音の数を減らし、透明感のある音色を聴かせるスタイルになっていきました。
古楽を中心としたレパートリーを持つ合唱カルテット、ヒリヤード・アンサンブルとコラボレーションした、異色の作品。グレゴリオ聖歌とジャズ・サックスという変わった組み合わせですが、その神々しいまでのサウンドが評判を呼び、ECM最大のヒット作となりました。
Ralph Towner「Anthem」(2001年)
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Anthem |
12弦ギター、クラシックギターなどをたくみにあやつるラルフ・タウナーは、オレゴンとしての活動もよく知られるところ。ECMにも多数の作品を残しており、レーベルを代表するギタリストといえるでしょう。多作ゆえ、どれか1枚となると、なかなか悩ましいところです。
ギターソロの世界を堪能したいなら、本作がオススメでしょうか。ラルフ・タウナーのギターは、音の一粒一粒が明快で、聴いていて心地よいのですね。演奏技術の高さもさることながら、曲自体の美しさもすばらしい。ECM作品の中のみならず、世に数多あるギター・ソロアルバムの中でも、屈指の内容になっています。