ECMの“クラシック音楽”
「ECM New Series」はクラシック音楽にカテゴライズされる作品を発表するシリーズ。ベートーヴェンなどの定番あり、現代音楽あり、古楽ありと、クラシック音楽においてもECMらしさを追求しています。その中から聴きやすい5枚をセレクトしました。
Steve Reich「Music For 18 Musicians」(1978年)
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Music for 18 Musicians |
ミニマル・ミュージックを代表するアメリカの作曲家、スティーブ・ライヒ。彼が初めて大人数のアンサンブルのために書いた曲が「18人の音楽家のための音楽」。11の和音のパルスを基本に、それぞれのコードに短いセクションがそれぞれ割り当てられ、曲の終わりには元のパルスへと戻っていきます。
フレーズ自体はやさしいメロディーなので、ミニマル作品の中では聴きやすい部類でしょう。一定のパルスやリズムの繰り返しと変化によって生まれる世界の中には、トランス的な快感もあれば、不思議とリラックス効果もあるように感じます。
Alexei Lubimov「Debussy: Préludes」(2012年)
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Preludes |
印象派の作曲家としておなじみのクロード・ドビュッシーの「前奏曲」を、アレクセイ・リュビモフが弾いたもの。第1巻は作曲家の存命当時に作られたベヒシュタインで、第2巻はスタインウェイでと、違ったピアノで弾き分けています。表題的な音楽が並んでいる第1巻では独特な音色でロマンティックに、現代音楽の香り漂う第2巻はスマートで細かい音符をきっちり弾く。驚きの使い分けです。
ベヒシュタインとスタインウェイの2台を使い、弟子のアレクセイ・ズーエフと、ドビュッシーの有名な管弦楽曲「牧神の午後の前奏曲」「夜想曲」4手演奏版を弾いているのもうれしいポイント。印象派が好きなら見逃せない1枚です(2枚組ですが)。
Arvo Pärt「Fur Alina」(1999年)
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Alina - Arvo Part |
現代音楽はとっつきにくい、そんな印象もあるかもしれません。では、これならどうでしょう。1935年にエストニアに生まれたアルヴォ・ペルトは、「ティンティナブリ様式(鈴声の様式)」と名付けた作曲技法を提唱。シンプルな和音を鈴のように響かせるという、非常に音の数が少ない静かな楽曲で知られています。
数あるペルトの作品の中でも、そのシンプルさと静謐さで際立っているのが、「Spiegel im Spiegel(鏡の中の鏡)」と「Fur Alina(アリーナのために)」。このミニマルな2曲を交互に演奏するという、ECMらしい落ち着いて聴ける企画盤です。
Valentin Silvestrov「Bagatellen und Serenaden」(2007年)
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Bagatellen Und Serenaden (Ocrd) |
聴きやすい現代音楽として、1937年にウクライナに生まれた作曲家、ヴァレンティン・シルヴェストロフも挙げましょう。このアルバムは全部で14曲のピアノ曲「バガテル」の作曲家による自作自演と、ピアノと弦楽合奏のための作品で構成されています。作曲家を知るのにはうってつけといえますね。
とても美しいメロディーで紡がれるピアノ曲、甘い雰囲気が心に残る弦楽のための作品。しかしモノクロームのジャケットに象徴されるような、寂しげな空気もたたえています。静謐でありながら、どこかで聴いた記憶もあるような郷愁的な雰囲気を、残響の多いECMの録音が盛り立てています。
Gidon Kremer「Bach: The Sonatas and Partitas for Violin Solo」(2005年)
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Bach: The Sonatas and Partitas for Violin Solo |
古今東西のヴァイオリン独奏曲の中でも、筆頭に挙げられるといっても過言ではない、バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」。名ヴァイオリニスト、ギドン・クレーメル2回目の録音です。
バッハの楽曲が持つ厳格な構築美と、そこから微かににじみ出るクレーメルのロマンティシズムが、ぴんと張りつめた空気の中にリリカルさを与えています。やや速めのテンポで、ヴィブラートを抑えストレートに弾くスタイルの中には、真摯さと艶めかしさが同居しているように感じられるはず。
“静寂の次に美しい音”を堪能しよう
思いつくままに25枚も選んでしまいましたが、それでも「あれを入れるべきだったのでは」と思うアルバムが何枚もあります。Jan Garbarek - Bobo Stenson Quartet「Witchi-Tai-To」が入ってないなあとか、Jimmy Giuffre 3「1961」は入れるべきだったかもとか……。
それはさておき、ECMという半世紀近くも愛されているレーベルでも、今では入手困難になっている作品も少なくない。それらも含めて、全作品が配信で聴けるようになったわけで、よい時代だなあと思わずにはいられません。
今回のECMレーベルのストリーミング・サービス解禁について、同社の広報は「ECMとして今でも一番の音楽の楽しみ方はCDやLPなどのパッケージであるという考え方は変わりません。ただ、一番大切なのは音楽を聴くことができること。ここ数年違法な形でECMの音源がネットにアップされていましたが、著作権が保護される枠組みの中で、ECMの作品を聴く事ができるようになります」と声明を発表しています。
筆者は古い考え(?)の人間なので、やはり気に入った音源はパッケージでほしくなります。そうはいっても、これだけストリーミング・サービスの環境が充実した今日において、名作が聴いてみたいときにいつでも聴けるようになったのは、やはりすばらしいことでしょう。
今回の記事から、ECMに触れてみたり、知らない作品があったので聴いてみたり……といったようなことがあれば、筆者としてはとても光栄です。
モーダル小嶋
1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。ショートコラム「MCコジマのカルチャー編集後記」ASCII倶楽部で好評連載中!
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