1兆個のIoTデバイスというが、それって作れるの?
電池用のリチウムもウェハーも全然足らない
これに対して、Rob Aitken氏の講演「How to Build & Connect a Trillion Things」は、初日からの基調講演でも度々触れられた「1兆個のデバイス」という問題に関してだ。
TechConの基調講演では、セキュリティを重視すべき理由として、2035年あたりでプロセッサデバイスが最大1兆個に到達する可能性があるという話があった。同氏の講演では、たとえば、1兆個のデバイスについてさまざまな考察を進める。
たとえば、各デバイスがボタン型電池であるCR2032相当のバッテリーを搭載すると、その中には109mgのリチウムが含まれているため、109万トンのリチウムが必要となる。ところが現時点で年間のリチウム精製量は32.5万トンしかない。つまり電源については何か別の手法を考える必要が出てくる。
また、1つのチップが2平方mmとして、300mmのウェハーから3万5000個取れるとしても2800万枚のウェハーが必要だが、TSMCですら2015年に製造したウェハーは900万枚でしかない。つまり1兆個のデバイスを作るには、現在のデバイス製造能力の成長率である30%をさらに倍にする必要が出てくる。
もっと足らないのはハードウェアエンジニア
ソフトウェアエンジニアと比べてもまったくの不足
さらに1兆個のデバイスでは2億種類の無線機能が必要になってくるが、現在の無線技術の設計者は5000人以下だと想定されている。同様に1兆個のデバイスの設計は5000万種類ほどになるが、IC設計チームは世界中で大きく見積もっても2万チームほどしかない。一方でソフトウェアに関しては5万本程度で済み、現在世界中でコードを書くことのできる人は2000万人と推定される。一兆個のデバイスを達成するためにはハードウェアのエンジニアが全然足りないのである。
同氏は1兆個のデバイスには、4つの性質が必要だと語る。それは「独立性」「共同性」「自動的」「回復性」を持って動作できるということだという。電源などに接続することなく単体で動作でき、さまざまな役目をもつ他のデバイスと連携が取れること、そしてそれぞれを人間がいちいち設定しなくても動作し、何かあったときには自動的に回復ができる。こうした性質がなければ、1兆個のデバイスを動かすのは困難になるとした。