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ARM、エントリー64bitコア「Cortex-A35」発表、スマホからウェアラブルまで

2015年11月12日 20時00分更新

文● 塩田紳二 編集● ASCII.jp

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 英ARM社は、米国サンタクララ市で11月10日(現地時間)から、恒例のイベントであるTechConを開催している。初日の基調講演では、低消費電力の64bitプロセッサ「Cortex-A35」を発表、また、組み込み向けプロセッサであるCortex-Mシリーズ向けの新しいアーキテクチャであるARMv8-Mも発表した。初日の基調講演に登壇したのは、ARM社CTOのMike Muller氏だ。

Cortex-A35は、Cortex-A7と比較して10%の低消費電力化が可能で、6~40%の性能向上が見込めるという

多様な構成が可能なローエンド64bitコア「Cortex-A35」発表
次期ハイエンドの「Artemis」は名前だけチラリと登場

 Cortex-A35は、Cortex-A7と同じく、エネルギー効率を重視した64bit(ARMv8-Aアーキテクチャ)のプロセッサである。ARM社は現在Cortex-A7を利用している低価格のスマートフォン向けSoCでも、64bit OSが利用できるようになるという。Cortex-A7と比較して10%消費電力を下げ、6~40%の性能向上が見込めるという。ARMv8は、ソフトウェア的には、従来のARMv7の32bitソフトウェアがそのまま利用可能で、さらに64bit OSが実行できる。

ARM TechConで初日の基調講演を行なった英ARM社CTOのMike Muller氏

 また、Cortex-A35は、さまざまな構成でSoCを作ることができるように配慮されている。たとえば4コアのL2キャッシュ付きならスマートフォンで標準的な構成だが、ウェアラブルデバイスなどではシングルコアでL2なしといった構成も可能なわけだ。この最小構成では、28nmプロセスにおいては0.4平方mm程度にでき、4コア構成の1/10以下という。Cortex-A35を利用したSoCは、2016年の遅い時期に登場予定とのことで、Cortex-A35を利用したスマートフォンなどの製品は2017年頃からとなると予想される。

A35は、性能重視でも消費電力重視でも構成することが可能で、最も消費電力を減らした構成では、最大性能構成の1/15になる
構成を変えることで、スマートフォンからウェアラブルデバイスまで利用できる

 また、Mike Muller氏は、Cortex-A35の位置付けを示すためにチャートを見せたが、それには、A35と同世代となるハイエンドプロセッサのArtemis(アルテミス、コードネーム)が含まれていた。実際には、ハイエンドコアのCortex-A72が登場したばかりなので、Artemisの発表は2016年以降になると考えられる。すでにさらに性能が上回るハイエンドプロセッサが予定されているわけだ。ただし、基調講演後の質疑応答では、Artemisに関する質問については、何も回答されなかった。

Cortex-Aシリーズのこれまでの流れとARM社のGPU(紫)、システムIP、対応製造プロセス(緑)をチャートにしたもの。これによればArtemisは10nm製造プロセスをターゲットにしている

1ドル以下のコントローラーにセキュアな機能を

 Muller氏は、IoTデバイスなどの組み込み系デバイスに対して行なわれる攻撃などについてふれ、低価格の組み込み向けプロセッサがIoTとしてインターネットに接続されるときには、セキュリティが必須だとした。その上で、ARM社は、「1ドル以下のセキュアなマイクロコントローラーデザインを有効にする必要がある」として、セキュリティ機能を強化したARMv8-Mアーキテクチャを紹介した。

完全なセキュリティ経験のある人々によって行なわれたデザインを1ドル以下のマイクロコントローラで利用できるようにする必要がある、とMuller氏は訴える

 ARMプロセッサのアーキテクチャは、バージョン番号が付けられており、たとえば、現在の32bitプロセッサ(Cortex-A7など)は、ARMv7-Aとなる。Cortex-A72などの64bitプロセッサのアーキテクチャはARMv8-Aだ。最後の文字Aはアプリケーションプロセッサのカテゴリを表す。組み込み系のプロセッサはCortex-Mシリーズで、これまでの32bitアーキテクチャは、ARMv7-Mだった。

 今回発表されたARMv8-Mは、Cortex-Mシリーズの新しいアーキテクチャだが、拡張されたのは、セキュリティ関連の機能で、アプリケーションプロセッサのような64bit化は行なわれていない。追加されたセキュリティ関連の機能は、TrustZoneと呼ばれているが、Cortex-A系列で採用されていたTrust Zone技術とは違ったものだ。

ARMv8-Mは、TrustZoneを持つ組み込み向けプロセッサのアーキテクチャ

 A系列のTrust Zoneは、セキュリティ関連の機能を実行するための専用実行モードを使う。このとき、CPUのレジスタなども、切り替わる。これに対して、Cortex-MのTrust Zoneは、専用命令により、セキュアな実行状態となる。

 このような実装になったのは、従来型のセキュアな実行モードでは、切り替えのためのオーバヘッドが存在し、それほど速度が速くない組み込み系のプロセッサでは、割り込みの応答性が悪くなるなどのデメリットがあるからだ。また、こうした実行モードの切り替えには、大規模な回路が必要となり、コストにも影響する。ARMv8-MのTrust Zone機能では、単にCPUの実行状態を切り替えるだけで、レジスタや演算パイプラインなどもそのまま利用できる。なお、今回はアーキテクチャの発表のみで、具体的なプロセッサは発表されていない。

 CPUだけのセキュアな実行状態では不十分で、ARM社はセキュアなストレージやメモリアクセスを実現する内部接続技術であるAMBA 5 AHB5を同時に発表している。また、セキュリティを高めるための暗号化や電子署名などに利用するための「CryptoCell」も用意された。これは、乱数発生機能などを含むハードウェアと専用のソフトウェアの組み合わせで実現されている。なお、CryptoCellは、TrustZoneに含まれる技術の1つで、Cortex-Mシリーズ向けのCryptoCell-300とAシリーズ向けのCryptoCell-700がある。

CryptoCellは、TrustZoneで対称、非対称の暗号化などを支援する機能

 ARMv8-Mの実装は、ハードウェア側の規模がそれほど拡大することなく、セキュアな実行環境を得るもので、組み込み系のコントローラー向けだ。しかし、ネットワーク接続を前提とするIoTでは、必須の機能となると予想される。

 実際すでにCrypt Cell同等の機能を実装したマイクロコントローラーが存在する。IoTデバイスが扱う情報は小さく、それぞれでは取るに足らないものであっても、中間者攻撃や盗聴などにより、プライベートに関する問題が発生する可能性がある。あるいは、IoTと接続するさまざまなサービス側への攻撃を許す可能性もある。セキュリティ機能の強化は「急務」だといえるだろう。そういう意味では、今回のARMv8-Mの発表には大きな意味がある。


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