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LINEのWAVEは最高のバカだが素晴らしい

2017年10月06日 11時00分更新

文● 四本淑三

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 主に英語圏で流行しているらしいスマートスピーカーだが、日本語対応の製品は今まで一つもなかった。そこに登場したのがLINEの「WAVE」である。

 原稿執筆時点で唯一、日本語で話を聞いてくれるスマートスピーカー。しかも韓国NAVERと共同開発した独自のクラウドAI「クローバ(Clova)」まで擁しての登場となれば、これはもう話題にならないほうがおかしい。

 しかし、これは聞いていた以上に難物だった。

WAVEは高さ約20cm、重さは約1kg。天面に音楽の再生や音量を操作するボタンがある

次世代プラットフォーム戦略の一環

 スマートスピーカーは、肉声で話かけると様々な応答を返してくるクラウドAIの音声インターフェースで、家電やカーエレクトロニクスのコマンダーとして、家庭におけるIoTの中核機器として期待されている。

 意地の悪い見方をすると、期待されながら成功を収めるに至らなかったリビングPCやスマートテレビの末裔とも言えるが、クラウドAIそのものは、将来的にネットワーク・IT機器の強力なプラットフォームになると見られている。

 ゆえにAmazonは「Alexa」、Appleは「Siri」、Googleは「Googleアシスタント」、Microsoftは「Cortana」と、各プラットフォーム企業はクラウドAIを育ててきたのだし、LINEの舛田取締役に至ってはClovaに「社運を賭ける」とまで言っている。

 クラウドAIの展開は、スマートフォンやPCのOSを持つ企業とそれ以外では違いが見られる。SiriはiOS端末に標準搭載されているし、Googleアシスタントはスマートフォン用アプリとして提供されている。どちらも一般のBluetoothスピーカーやヘッドセットから呼び出せるので、使うにあたって必ずしも専用ハードはいらない。

 一方、スマートフォンのOSを持たないAmazonは「Echo」のような専用ハードのみの展開だ。スマートフォンのような他社の現行プラットフォーム上で展開しても、将来的に囲い込まれてしまうだけで意味がない。だからLINEもプラットフォーマーになるつもりなら、Amazonに近い戦略を採るしかないし、実際にそうしている。本気なのだ。

最初はバカで当たり前

 それにしてもスマートスピーカーはなぜ国内での展開がないのか。確かに一億そこそこの利用者しかいないマイナー言語かも知れないが、GoogleアシスタントもSiriも日本語に対応している。

 今年発売されたGoogleアシスタント対応のスマートスピーカー「Google Home」は、もうじき日本でも……というウワサはあるが時期は不明(Google Homeは10月6日に国内販売を開始するとアナウンスがあった)。AppleのSiri対応「HomePod」も今年末に発売を予定しているが、日本は販売地域に含まれていない。

 オンキヨーの製品(VC-FLX1)も、東芝の製品も(TH-GW10)も、AmazonのAlexa対応でアメリカ向け。ソニーもGoogleアシスタント対応「LF-S50G」の発売を予定しているが、販売予定地域はアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスのみで、日本で売る気はないようだ。このたわけ者が!

 しかし、ここまで国内で競合がないのであれば、やったもん勝ちとも言える。WAVEは今年7月半ばに先行体験版の受け付けを始め、8月末にデリバリー済み。この先行体験版の受け付けは終了したが、もうすぐ正式版のWAVEが販売される予定(10月5日に発売がスタート)。価格は1万2800円。

 早くやるほど有利とはいえ、クラウドAIはデータの積み重ねがモノを言う世界だ。積み重ねがない初期はかなり厳しい。Siriだって最初はバカだった。

 以下は、先行体験版を試してみたレポートだが、まずなにより、このWAVEを製品化したLINEのみなさんの勇気を褒め称えたい。これ以降、どんなにひどい言葉を並べ立てたとしても、私はLINEのみなさんの決断をリスペクトするものである。AmazonやGoogleの配下に収まることなく、未来を見据え、独自のプラットフォームを一から育て上げようという意気込みは本当に素晴らしいと思っている。それだけは最初に明言しておきたい。

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