単一プラットフォームでデータセンターにまつわるIoTデータを集約、活用可能に
シュナイダーがクラウドDCIM「EcoStruxure IT」発表、狙いは
2017年09月28日 07時00分更新
仏シュナイダーエレクトリックは9月25日、香港で開催したプライベートカンファレンス「Innovation Summit 2017」において、「EcoStruxure(エコストラクチャー)」ソリューションファミリーのひとつとなるクラウド型DCIM(データセンターインフラ管理)製品「EcoStruxure IT」を発表した。
EcoStruxureの共通プラットフォームを採用したEcoStruxure ITには、単にDCIMをクラウドサービス化したというだけではない、より大きな狙いがあるようだ。今回のイベントにおける同社 会長兼CEOであるジャン-パスカル・トリコワ氏の発言などから、その狙いを探ってみた。
DCIMをクラウドサービスとして提供、包括的な可視化と分析を可能に
まずは今回発表されたEcoStruxure ITの概要を説明しよう。
EcoStruxure ITは、同社では初めてのサービス型(SaaS)で提供されるDCIMだ。顧客データセンター内の電源関連装置(UPSやPDU)や空調装置、ラック、環境センサーなどから、データセンターの稼働状態やエネルギー消費に関するデータを収集し、クラウド上で蓄積/可視化することで、一元的な監視と管理を可能にする。加えて、高度なデータアナリティクス(分析)によって、よりエネルギー効率やコスト効率の高いデータセンター運用をアドバイスできる。
顧客データセンターには、ソフトウェアゲートウェイの「IT Expert Gateway」を配置する。このゲートウェイが、上述したデバイスやセンサーからのデータを集約し、クラウドへの転送処理を仲介する。シュナイダー製品に限らず、サードパーティ製のデバイスやセンサーでも標準プロトコル(SNMPやModbux TCP)対応であればテレメトリデータを収集可能だ。また、自社データセンターが多拠点に分散している場合は、それぞれの拠点にゲートウェイを配置することで、クラウド上のEcoStruxure ITを通じてその全体を一元的に監視/管理することができる。オンプレミスでの複雑な導入作業が生じないため、EcoStruxure ITは最短「30分程度」で導入できるという。
IT管理者向けには、Webインタフェースだけでなくスマートデバイス用のモバイルアプリも提供される。いずれもチャット機能を備える。これにより、ITインフラ管理者がどこにいてもリアルタイムに状況を把握し、ほかの管理者と協調してインシデント対応に当たることができる。
今回の発表では、EcoStruxure ITの主要な機能として2つが紹介されている。データセンターの稼働状況データを収集し、包括的にモニタリングできる「EcoStruxure IT Expert」と、収集したデータに基づくインサイト(洞察)を提供する「EcoStruxure IT Advisor」の2つだ。
EcoStruxure IT Expertでは、ダッシュボードを通じて複数データセンターおよびハイブリッド環境の全体にわたるグローバルビューやヘルススコアリング、特定の機器にドリルダウンした詳細状態の可視化、インシデント管理、レポーティングなどの機能が提供される。これにより、データセンター管理者やITマネージャーがデータセンターの現状や動向を詳しく理解し、保守や故障予測、効率比較、性能評価などにつなげることができるとしている。
一方、EcoStruxure IT Advisorでは、エンタープライズやコロケーションのユーザー向けにインサイトを提供し、システムの最適化やインベントリ管理を実現するサービスとなる。こちらも複数サイト全体にわたってリソースプランニングや将来予測を可能にするほか、シュナイダーのサービスビューローからリモート監視を行い、管理やメンテナンスの作業をサポートする「EcoStruxure IT Advisor Remote Service」も提供される。
EcoStruxure IT ExpertおよびAdvisorは、来年第1四半期(2018年Q1)から、グローバルの一部地域限定で提供開始される(日本での提供は追ってアナウンスされる模様)。料金体系は年間サブスクリプションモデルで、管理対象のデバイス数に応じて価格が変動すると説明された。ゲートウェイソフトウェアやモバイルアプリなどは、無償で提供されるという。
なお発表によると、これまで提供してきたオンプレミス導入型のDCIM「StruxureWare」も、EcoStruxure ITの一部として提供を継続する。また、StruxureWareの既存顧客がEcoStruxure ITへの移行を要望する場合には、移行支援ツールなどが提供される。