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コンピューティングの「現場」が分散する中で必要な取り組み、両社日本代表に聞く

シュナイダーAPCのUPSが「Nutanix Ready」認定、その意義とは

2017年06月12日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 APCブランドのUPS(無停電電源装置)やデータセンター設備製品を提供するシュナイダーエレクトリックは今年4月、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)のニュータニックスから「Nutanix Ready」認証を受けたことを発表した。さらに日本独自の取り組みとして、オフィス設置向け“Nutanixスモールスタート”のリファレンスアーキテクチャ(推奨構成)も提供開始している。

 シュナイダーエレクトリック 代表取締役の松崎耕介氏によると、今回のNutanix認証の背景には日本法人からの強い要請があったという。さらにこの取り組みは、単なる「製品間の動作保証」という意味合いだけにはとどまらないものだと、松崎氏は強調する。

 今回は、シュナイダーエレクトリック松崎氏とニュータニックス・ジャパン 社長の町田栄作氏に、両社の協業に至ったいきさつ、そして今後の狙いについて聞いた。

(左から)ニュータニックス・ジャパン コーポレート マネージング ディレクター 兼 社長の町田栄作氏、シュナイダーエレクトリック 代表取締役 IT事業部門バイスプレジデントの松崎耕介氏

「PowerChute」のNutanix Ready認定、国内顧客の強い要望もあり急がせた

 シュナイダーの4月26日付プレスリリースではまず、電源管理ソフトウェアである「APC PowerChute Network Shutdown v4.2」が「Nutanix Ready Integrated」認証を受けたことが発表されている。

 PowerChuteは、停電などの電力異常が発生した際に、UPSからの信号を受けて自動的にサーバーなどのシャットダウン操作を行うソフトウェアだ。UPSの内蔵バッテリによる電力供給で運用を続けつつ、安全にサーバーをシャットダウンさせることで、データ損失やアプリケーション障害の発生を防ぐ。

 今回認証を受けたPowerChuteは、仮想マシン(VMware ESXi、Hyper-V)としてNutanix上で稼働し、UPSから電源異常の通知を受けると、NutanixのPrism管理コンソールが提供するAPI経由でシャットダウン処理を行う。これにより、Nutanix上で稼働している仮想マシン群、さらにNutanixクラスタによるストレージ(Software-Defined Storage)を安全にシャットダウンできる。

APC PowerChute Network Shutdownの管理画面

 つまり、APCのUPSとPowerChuteによって、停電などの電源異常が発生してもNuatnix上のアプリケーションやデータを保護できるわけだ。ニュータニックスによる認定を受けたことで、販売パートナーやSIベンダーが事前検証を行う必要もなく、安心して導入できる。

 Nutanix Readyプログラムは、グローバルで展開するテクノロジーパートナーのエコシステムだと、ニュータニックス町田氏は説明した。Nutanixには現在100社以上のテクノロジーパートナーがいるが、UPSのパートナーはシュナイダーが初めてだという。

 シュナイダーの松崎氏によると、今回の認証に関しては、日本法人から本社に対して強く要請してきたものだという。

 「昨年(2016年)の夏前ごろから、顧客や販売パートナーとの会話でHCIの話題がよく出るようになった。そこでは、HCIと言えばほぼNutanixのことを指しており、何社からかは『PowerChuteはNutanixには対応していないのか』と聞かれた。本社に確認すると検証には時間がかかるとのことだったが、日本から早くするようせっついて、検証完了を急がせた」(松崎氏)

 両社協業によるもうひとつの発表は、シュナイダー製のオフィス内設置向け静音ラックにNutanixのHCIアプライアンス、UPS、ジュニパー製スイッチなどを格納した、Nutanixによるプライベートクラウド環境を「スモールスタート」するためのリファレンスアーキテクチャの提供だ。

 こちらは最小構成で18Uラックから提供することができ、オフィス内に設置しても空調/温度/物理セキュリティ管理を実現することができる。もちろん必要に応じてスケールアウトしていくことが可能だ。

両社によるNutanix環境の「スモールスタート」リファレンスアーキテクチャ(画像はシュナイダーWebサイトより)

「分散型コンピューティング環境の増加」という未来に向け協業

 冒頭でも触れたとおり、松崎氏は、今回の協業の狙いについて「単なる製品間の動作保証」にとどまるものではないことを強調する。端的に言えば、コンピュートリソースが必要とされる「場所」あるいは「利用シーン」が変化しつつあり、UPSメーカーとしてその変化に対応していくための取り組みだ。

 たとえばIoTの普及だ。企業のIoT環境では、膨大なセンサーデータを中央のデータセンターに送る前に、分散した拠点側で処理する「エッジコンピューティング」が必要になる。松崎氏は、「2018年までにIoTデータの40%はエッジ側で処理される」というIDCの予測を挙げる。

 「つまり、これからはデータセンターだけではなく、ブランチオフィスや工場などのエッジ側でも(コンピュートリソースが)必要になる。ただし、そうした場所はデータセンターほど電源環境が整っているわけではない。そこで、こうした新しい場所にわれわれのUPSが必要になってくる」(松崎氏)

 大規模データセンターはもともと大型UPSや自家発電装置などを設置し、電源異常に備えているが、一般のオフィスはそうではない。オフィス内にHCIを設置するならば、UPSを設置して停電や落雷、あるいは不注意でケーブルが抜かれるような事態にも備えなければならない。

 また、ニュータニックスが考える未来像とも合致すると、町田氏は説明する。ニュータニックスでは、企業のプライベートクラウド環境においてもパブリッククラウドと同等の容易な運用管理性、スモールスタートからのスケーラビリティを実現し、一方でプライベートクラウドの優位点も享受できるような、シームレスで効率的な分散コンピューティング環境を可能にする「エンタープライズクラウドプラットフォーム」のビジョンを掲げている。

パブリッククラウドとプライベートクラウド双方のメリットを最大限享受できるよう、シームレスな環境を目指す「エンタープライズクラウドプラットフォーム」ビジョン

 「将来のクラウドが分散環境になると想定すれば、一カ所の大規模データセンターを構築するのではなく、(複数のオフィスやサーバールームなどで)オンプレミスでスモールスタートし、必要に応じてスケールアウトしていくことも必要になる」(町田氏)

 そのために、前述したような電源環境、あるいはオフィス内に設置できる静音ラックソリューションを共同で展開する意味があるわけだ。

 「たとえば地方の支社や工場といった現場でスモールスタートしていくとなると、IT部門が1人か2人、あるいはいないということもあるだろう。そうした現場にもすそ野を広げていくために、ターンキー的に使えるソリューションが必要だった。(今回の協業を通じて)一昨年や昨年と比較して、そうした製品環境が明らかに整ったと考えている」(町田氏)

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