このページの本文へ

Adobe Symposium 2017で披露された「ドキュメント制作の目からウロコ術」

マーケターが知らないと損をするAcrobat DCの活用術とは?

2017年09月19日 08時00分更新

文● 大河原克行

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

アドビシステムズは、2017年9月14・15日の2日間、東京・高輪のグランドプリンスホテル新高輪 国際館パミールにおいて、「Adobe Symposium 2017」を開催した。Adobe Symposium 2017は、「顧客体験をビジネスの中心に」をテーマに、ビジネス/マーケティング担当者やIT担当者などを対象に開催。2017年3月に、米ラスベガスで開催した「Adobe Summit」で発表された「Adobe Experience Cloud」の紹介や、国内外の先進企業の事例、パートナー企業などの各種セッションを通して、企業が実現すべき「顧客体験」について紹介するものとなった。

マーケターは5日間のうち1日半が文書管理に費やされている

 初日の基調講演には、米アドビシステムズの会長兼社長兼CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏や、アドビシステムズ日本法人の佐分利ユージン社長が登壇。ユーザーの事例を交えながら、最新の取り組みについて説明した。また、会期中には、40以上のブレイクアウトセッションが用意され、顧客体験を軸にしたビジネス推進の具体策などについて紹介した。

 初日は、ビジネス/マーケティング担当者向けプログラムが用意されており、午後2時からは、「マーケターが知っておくべき、ドキュメント制作の目からウロコ術」をテーマにしたブレイクアウトセッションが行なわれ、アドビシステムズ マーケティング本部 Document Cloudマーケティングの江口美菜子氏とともに、ザ・ナイン アートディレクターの丸山香代子氏が登壇。実際にマーケターのコンテンツ制作現場の生の声を、事例を交えて解説。Adobe Document CloudとAdobe Creative Cloudを活用して、文書の制作から配布、保存までを通じて、顧客に最適なコミュニケーションを提供する手法を紹介した。

アドビシステムズ マーケティング本部 Document Cloudマーケティング担当の江口美菜子氏

 冒頭、江口氏は「マーケティングといってもさまざまな業務があるが、どんな種類のマーケティング業務にもおいても大切なのはドキュメントであり、人は文書によってアイデアの交換、情報の共有、理解の記録を行なっている。マーケティング活動においては、稟議書やブリーフィング資料、ドラフトやレビューのための資料、制作物を作り、それを配布し、保存するといったワークフローがあり、そのためにはさまざまなファイルが使用されている」と前置きする。

マーケティング活動ではさまざまなデータファイルが用いられる

 一方で、マーケターの文書管理は非常に煩雑であり、業務の28%が文書の管理に使われている。「1週間に当てはめると、5日間のうち、1日半が文書管理に費やされている計算になる」と江口氏は指摘。また、文書プロセスの問題によって、顧客の満足度に影響するといったことも多い。「ドキュメントワークフローを改善することで、業務効率化とともに、顧客満足度の向上につなげることができる」とアピールした。

文書管理に費やされる時間は28%にのぼる

カタログ制作を例にAcrobatの活用術を披露

 セッションでは、2年前に制作したカタログを改訂し、新たにカタログを制作するといった過程を、アドビシステムズが、ザ・ナインに発注するという想定で、ドキュメントを制作するワークフローを簡素化する方法を紹介した。

 カタログ制作の依頼では、紙の資料を使って伝達したり、旧カタログやウェブサイトのスクリーンショットを使って、伝達したりといったことが行なわれていることが多い。江口氏は、「これでは、手間と時間の浪費につながり、確認ミスが発生する原因が山積しているのが実態」と指摘する。

製作依頼の際に発生している手間と時間の浪費

 これに対しては、「Acrobatを利用することで、1つのPDFファイルのなかに、過去に作ったカタログやスクリーンショットなどのPDFファイル、各種動画ファイル、Wordファイルなど、さまざまな関連ファイルをすべて格納して、送信することができる。また、このファイルが7MBといった大容量になり、メールに添付するのが遠慮されるという場合にも、Adobe Send & Trackを利用し、クラウドにアップロードすることができる」などとした。ザ・ナイン アートディレクターの丸山香代子氏は、「依頼を受ける制作会社側では、1つのファイルで管理され、修正指示の箇所を1つ1つを確認しながら改訂作業が行なえるため、煩雑性が減ることになる」とした。

ザ・ナイン アートディレクターの丸山香代子氏

 続いて、文書の制作物のレビューでは、複数人でレビューを行ない、情報を共有し、管理するための効率的な手法を紹介。「Acrobatでは、PDFで表示された画像への注釈、文字の修正指示のほか、確認印を用いた承認ワークフローも実現できる。手書きでの指示では文字が読みにくいことが起こったり、画像や資料は別送したり、人によって色分けした形で指示をしたりといった使い方により、作業が煩雑になっている。また、メールで修正箇所を指示するために改めてテキストを打ったり、『左上』といったように曖昧な表現しかできないという課題が発生する。

製作物をレビューする際の問題点

 これに対してAcrobatの共有レビュー機能では、複数のレビュー担当者の修正指示が一覧で表示され、それに従って、修正や確認を行なえる」(江口氏)とした。実際、修正指示がタイムラインとして表示されているため、それを確認するだけで、デザイナーは、どんな修正を行なえばいいのかがわかる。また、AcrobatではPDFに挿入している動画にもコメントを入れることができる。指示した場所を示すタイムラインも表示されていることから、どこに修正指示が行なわれているかを可視化することも可能だ。「Acrobatだけを使用していれば、テキストやイラスト、写真だけでなく、アニメのような多種多様な要素もひとつで管理できる。作業が簡素化し、納品までのリードタイムの短縮につながる」(丸山氏)とした。

Acrobatを活用すれば、伝えたいことが正確に伝えられる

 カタログの完成後には、配布および管理の作業となるが、PDFは編集ができる機能が特徴だ。しかし、セキュリティをかけないまま、編集可能な状態で配布したり、表示したりすると、悪意のある第三者に改ざんされる恐れがある。江口氏は、「15%OFFキャンペーンが、50%OFFキャンペーンに改ざんされると、企業のブランドを毀損することにもつながりかねない。ぜひセキュリティをかけてから配布してほしい」と訴えた。また、「ウェブサイトもPDF化して保存することも可能。その際には、スキャン補正機能を活用することで、あとで編集作業が行える状態で保存できる。文字認識機能を使えば、フォルダのなかからの検索することも容易だ。保存にも検索にも適している」と述べた。

 実際、セッションの前半には「某タバコ会社への訴訟事件で、原告側の弁護士にトレーラー一杯の文書が送られてきたが、裁判までに時間がなく、すべての書類に目を通すことかできない。だが、原告側は勝訴できた。原告側の弁護士はどうやって大量の文書のなかから決定的な証拠をみつけだすことができたか」という質問が用意されたが、その回答は、「Acrobatの文字認識機能と検索機能を活用して、大量の文書のなかから決定的な証拠を見つけ出した」というものだった。こうした訴訟の場でもAcrobatは活用されているという。

訴訟の資料を検索する上でもAcrobatが利用されているという

 総括として江口氏は、「Adobe Document Cloudは、PDFフォーマットの機能や特徴を包括したクラウドサービスであり、デバイス、OSを問わずに利用できる。多種多様なデバイス、OSを持つユーザーが多い場合にも利用が適している。体験版も用意しているので、ぜひ活用してほしい」とコメント。丸山氏は、「Acrobatを活用することで、伝えたいことが正確に伝わり、正確な制作物を、効率的に作ることができる。これを多くの企業で活用してもらうことで、広く効率化を図ることができる」などとアピールした。

 最終的な制作物をPDFにするといった利用は多いが、制作過程でもPDFを活用することで、生産性向上や正確な制作、そして、適切な配布や効率的な保存環境の実現も可能になることが示された。

カテゴリートップへ

目からウロコのPDF使いこなし術【アクロバット連載100回記念放送】