『Piano Circle Songs』
Francesco Tristano
バロック、古典、現代音楽、テクノ、ハウスの電子音楽……とマルチジャンルなピアニスト、フランチェスコ・トリスターノがソニー・クラシカルに移籍した第一弾の自作集だ。不協和音を多用し、ピアノを打楽器的に使う実験的な作品が集められている。音の粒が大きく、倍音領域まで、キラキラと輝き、切れ味が鋭い。編成は小さいのだか、スケール感は大きい。ピアニスト・シンガーソングライターのチリー・ゴンザレスとのピアノデュオでは、これほどの雄大な低域から、鋭く伸びる高域まで、周波数スケールが広く、深いのかと驚かされた。
FLAC:96kHz/24bit
Sony Classical、e-onkyo music
『DISCOVER JAPAN IIII ~the voice with manners~』
鈴木雅之
J-POP名曲ののカバー集だが、歌謡曲的な、押し出し感とパワー感と、ハイファイ的な情報量の多さの両面を持つ音だ。バックバンドとコーラスのゴージャスなサウンドに乗って、セクシーな歌唱が耳に心地よい。あまりブルース的な脂っこい歌い回しでなく、意外にフラットな表現が楽しめる。スタジオ録音作品は明瞭度が高いのだが、大オーケストラをバックに歌うライブ収録の「少年時代」は。極端にリバーブが多く、大きな会場で遠くに位置したPAスピーカーから聴こえてくるような臨場感も。
FLAC:96kHz/24bit
Sony Music Label、e-onkyo music
ミジンコで著名なサックス奏者、坂田明を父に持つ、ドラマー・ シンガーソングライターの坂田学。本アルバムは後者の資質が発揮されている。1曲目「モノクローム」はスティーブ・ライヒ的なミニマル。2曲目「ウーレイロー」はギターとドラムス、ベースの小編成とヴォーカル。井上陽水的なフォークポップだ。3曲目「ウィクティムとピポクリット」はギター一発の反戦的なフォークバラード。7曲「静寂」は、環境音楽的なヴォーカル。このように多彩な切り口と、表現の多様さが坂田学の魅力だ。音は、ハイレゾ的な細部の高解像感が色濃いものでなく、多彩な音が集まる塊感を、あえてほぐさずに、核の強さを強調しているよう。
WAV:88.2kHz/24bit、FLAC:88.2kHz/24bit
Lifework Records、e-onkyo music
『モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第3番・第5番』
アンネ=ゾフィー・ムター
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ヘルベルト・フォン・カラヤン
今やヴァイオリンの女王として世界を睥睨するアンナ・ゾフィー・ムターが、14歳の時に録音した記念すべきデビュー盤。カラヤンが見出した才能は多いが、ムターはその中でも最高に花開いたケースだ。この瑞々しく、すがすがしく、そして若さに溢れる若き日のモーツァルトを聴くと、なにか精神が浄化されるような清らかさを感じるのである。今は、人間的にも音楽的にも熟したムターに、これほどピュアで、ういういしい時代があったのかということに感動。カラヤンのバックはたいへん立派だ。録音もアナログのフレーバーが濃い。1978年2月、ベルリン・フィルハーモニーで録音。
FLAC:96kHz/24bit
Deutsche Grammophon、e-onkyo music
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