インターネットバブルの崩壊
携帯電話機能を付加するも業績を立て直せず
好調なPalm Inc.だったが、この後インターネットバブルが弾け、2001年6月に同社の株価は6.5ドルまで下がっている。このあたりから次第に売上が落ち始めたというのも、これまた良くある話である。
そこで同社はソフトウェアを開発するPalmSouceと、ハードウェアを開発するPalm Solutions Groupに分割。PalmSourceはさまざまなOEM向けに公平な立場でPalm OSを提供する一方、Palm Solutions Groupは自社のハードウェアの開発に専念するという形だ。
まずPalmSourceは新規株式公開を行なってPalmから離脱。残ったPalm Solutions Groupは2003年にHandspringを買収し、これにあわせてHawkins/Dubinsky氏が再び経営に復帰することになった。もっとも復帰したのは2004年9月までで、10月からはHandspringでCOO兼VP, Marketingを勤めていたEd Colligan氏がCEOに昇格する。そして社名もpalmOneに変更される(pが小文字なのに注意)。
この買収前あたりから、Handspringは製品の方向を、従来のPalm互換機からInternet Connected Deviceの方向にシフトしていく。背景としては、Blackberryの躍進があった。まだiPhoneの出現前夜ではあったが、ネットワークに常時接続して利用できるデバイスにシフトしていくという見通しがHawkins氏にあったのかどうかは定かではない。
ただHandspiringは2002年頃から携帯電話一体型のTreoシリーズを発売しており、これはPalmの買収後もPalm Treoとして継続されている。
画像の出典は、“Wikipedia”
2005年、HandspiringはPalmSourceに3000万ドルを支払い、Palmの商標を取得。社名も再びPalm Inc.に変更し、Palm Z22/Palm TXといった製品を発売するが、ある意味これは従来型Palmの最終に近い製品であった。
2006年にはPalm Treoを大幅に拡充するが、これはPalm OS版とあわせてWindows Mobile版も提供されており、PDAベンダーから携帯電話ベンダーへのシフトを明確に示すことになった。2007年にはスマートフォンであるPalm Centroも発売され、ますますPDAのベンダーらしさは姿を消していく。
画像の出典は、“Wikipedia”
余談になるがPalmSourceはその後、日本のACCESSに3億2400万ドルで買収される。Palm, IncはACCESSに4400万ドルを支払い、Palm OSの利用や改変を可能にするライセンスを取得。これにあわせてACCESSは同社が提供していたPalm OSをGarnet OSに変更している。
話を戻すと2008年12月、Colligan氏はPalmがこれ以上PDAを開発しないことを公に宣言。そして2009年のCESではスマートフォンであるPalm Preと、Palm OSをベースにしたWebOSが展示された。この発表は好意的に受け取られ、3ドル近辺まで低迷していた株価は18ドルまで上がるが、業績を立て直すには至らなかった。
最終的に2010年4月、Palm Inc.はHPに買収される。買収金額は12億ドルで、現金での買収だった。買収の主な目的はWebOSで、HP傘下でPalmはWebOSベースにしたスマートフォンやタブレットの開発に勤しむことになるが、2011年8月にHPはいったんWebOS関連機器の開発から撤退することを表明する。
ただこの決断を行なったHPのLeo Apotheker CEOは翌月退任し、代わりに就任したMeg Whitman氏が開発の継続を表明したことで首がつながる。ところが2011年末にHPはwebOSのオープンソース化を表明。こうした動きを受け、旧Palmのメンバーは大挙、HPを辞する。
残ったメンバーによりGramという名称で開発されていたWebOSのチームは、結局2013年2月にLG Electronicsに売却される。LGはWebOSをSmart TVなどに応用して、現在も商品を出荷中なのがせめてもの救いである。そしてPalmの商標は2014年に中国TCL Corporationに売却されてしまった。
TCL CorporationはPalmの商標を現在も保有しているが、なにに利用するつもりなのかは未だに不明なままである。
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