7月20日に開催されたソフトバンクの法人向けイベント「SoftBank World 2017」では、今年も孫正義社長が基調講演に登壇しました。
AIやIoT、ソフトバンクの投資実績や新たな出資先など、その内容は多岐に渡ったものの、特に盛り上がったのがロボットの話題です。
ロボットを馬鹿にしていた人は追い抜かれる時代に
「これまでのロボットは単純労働に使われてきた。”ロボット人間”という言葉は、人より劣っている、人を馬鹿にした言い方だった」と孫氏は指摘します。
しかし、やがてロボットが賢くなれば、「これまで馬鹿にしていたロボットに、一気に追い抜かれる時代が来る」というのです。
ここで筆者が連想したのは、「オタクには親切にしたほうがいい。彼らの下で働く可能性が高いからだ」という、これから社会に出る学生に向けた名言です。
これを当てはめると、「Pepperには親切にしたほうがいい。彼らの下で働く可能性が高いからだ」となります。
(オタクには〜の名言はビル・ゲイツ氏のスピーチとして広く語られているが、実際にはそのようなスピーチはなく、オリジナルはCharles J. Sykes氏の著作とのこと)
「ロボカフェ」に見る、人間とロボットの役割
とはいえ、現在のPepperはあまりにも頼りない存在です。海の日の連休に地方を旅していた筆者も、空港やショッピングモールで活躍するPepperを見かけましたが、現場の足を引っ張っていないか心配になります。
その最新事例では、ソフトバンクの銀座店など都内3店舗にPepperを利用した「ロボカフェ」が試験導入されました。ただ、Pepperは紙コップをつかんだり、熱々のコーヒーを手渡してくれたりするほど器用ではありません。
Pepperの仕事は、まず来店客に話しかけ、タッチパネルでコーヒーの濃さや量の注文を受けた後、ネスレのBluetooth対応コーヒーメーカーに指示を飛ばすだけ。紙コップのセットや取り出しは、客によるセルフサービスなのです。
Pepperならではの機能としては、「顔認識」を利用したコミュニケーションがあります。来店客の同意の上で、顔の特徴量を保存。再び訪れたときに顔を覚えていてくれるのはもちろん、クラウド経由で共有されるので、別の店のPepperからもちゃんと認識されるのです。
ここで注目したいのは、紙コップを補充したり、コーヒーメーカーを掃除したりするのは人間の店員の仕事という点です。一方、来店客を覚えてコミュニケーションするのはPepperの仕事です。ここでは人間が肉体労働、Pepperが頭脳労働を担うことで、人間とロボットの役割が「逆転」しているのは興味深いところです。
そのロボットの「頭脳」を作っているのは人間であり、本当の意味で主従関係が逆転したわけではないものの、やがて大多数の人間はロボットが気持ち良く働くためのお手伝いをする存在になる、という未来もあながち空想とは言えなくなります。
あの四足歩行ロボットの実用化にも期待
もうひとつ基調講演で注目を浴びたのが、2017年6月にソフトバンクが買収したボストン・ダイナミクス社による、あの四足歩行ロボットです。小型モデルとはいえ、ステージ上を自律的に歩き回ってパトロールし、段差を軽々と乗り越えていました。
ちょっとした段差も超えられず、倒れたら起き上がれないPepperとは異なり、重量物を軽々と運び、ジャンプで障害物を飛び越える運動能力の高さがポイント。足を車輪にしたモデル、二足歩行モデルなどが続々と開発されており、便利を通り越して「敵に回すと恐ろしい」不安感すら覚えます。
Pepperのようなコミュニケーション主体のロボットに加え、こうした高い運動能力のあるロボットの実用化も現実味を帯びてきたといえるでしょう。
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